デジタル大辞泉 「園」の意味・読み・例文・類語
えん【園】[漢字項目]
[学習漢字]2年
〈エン〉
1 野菜や果樹を植える畑。「園芸/茶園・菜園・田園・農園・薬園」
2 一定の目的でこしらえた庭や区域。「園地・園庭/開園・学園・公園・造園・庭園・梅園・閉園・名園・楽園・霊園・動物園」
3 子供が学んだり遊んだりする施設。「園児・園長/卒園・保育園・幼稚園」
〈その(ぞの)〉「
[難読]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
薗とも書く。日本の古代・中世における畠地の一種。本来〈園地(えんち)〉〈園〉〈園圃〉は,水稲以外のものを栽培する土地に与えられた律令用語であった。宅地と一括して園宅地として理解する説もあるが,園地と宅地は同質ではない。田令の園地条によれば,〈凡そ園地を給ふは,地の多少に随ひて均しく給へ。若し戸絶えなば,公に還せ〉とある。すなわち班給規定があり,かつ絶戸となった場合のみであるが還公規定が存在するのであって,宅地と異なり,律令国家からは公地としてとらえられていた。しかし宅地と同様に,所定の手続を経れば売買は自由であり,また所有面積にも制限がなかったから,やはり宅地とともに律令体制下における私的土地所有展開の起点ないし基盤となったと考えられる。田令の桑漆条では〈園地〉のことについてはまったく触れていないが,律令国家は主として園地に桑とウルシの栽培を指定した。それらの栽培作物は調庸収奪の不可欠な原料であったが,当時の農民にとって生活必需物ではなかったから,政府が桑漆帳を進上させるなどの実状把握に努めたにもかかわらず,その栽培状況は必ずしも十分ではなかった。むしろ実際には,果樹,蔬菜,雑穀などが園地でつくられていたのである。また園地以外の古代の畠地としては,令外の制である陸田があったが,それとは輸地子地(ゆじしち)でない点と栽培物の種類とが異なっていた。
以上のような園地も,律令体制の崩壊にともなって,特定地方を除いては史料上から消えていった。そして,中世的な園としては,以下の二つのタイプの園がみられるに至った。(1)は,主として九州南部にみられる在家(ざいけ)の一要素としての薗である。それは居屋敷(家屋)に接した畠地であり,通常その周囲には私的占有の標(しるし)としての垣がめぐらされていた。中世前期の南九州では,薗畠を核とした畠作原理の卓越した農業であったが,14世紀以降になると薗内部の畠の用水路灌漑をともなった水田化が進行し,しだいに水田農業を軸とする農業構造へと発展していった。中世前期の在家体制から後期の門(かど)体制への移行がそれである。なお尾張の場合であるが,《海道記》に〈園ノ中ニ桑アリ,桑ノ下ニ宅アリ。宅ニハ蓬頭ナル女,蚕簀ニ向テ蚕養ヲイトナミ,園ニハ潦倒タル翁,鋤ヲ柱テ農業ヲツトムル〉とあるのは,鎌倉時代の園の有様を如実に示してくれるものである。(2)は〈御薗(みその)〉である。古代には内膳司の園や典薬寮の薬園などがあり,政府直営のかなり集約的な経営が行われていたが,中世でもその系統の黄瓜御薗(きうりのみその),精進御薗,橘御薗,菓子御薗,地黄御薗などがみられる。中世のそれらは古代のような直営ではなく,供御人(くごにん)の給免田畠を中心とするものとなっており,そこを基盤とする彼らの活発な交易活動が行われていた。また神領の御薗は伊勢神宮領に多くみられる。
執筆者:黒田 日出男
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…広く美観,慰楽,実用の目的で,ある敷地内で建造物以外に計画された区域をさし,通常,泉水や水路,池を設け,植栽などが施される。
【日本】
庭園という言葉は新しいもので,もともと庭と園は別の意味をもっていた。〈庭(にわ)〉は仕事や行事をするための場所をいい,平坦な土地を指した。…
…古代,中世の皇室や伊勢神宮などの大神社に付属する,食料品調達にかかわる所領。古代の律令制のもとでは,宮内省所属の園池司と典薬寮に園と薬園が付属していた。前者は蔬菜樹菓を植え,品部(しなべ)の園戸が採取などにあたった。…
※「園」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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