(読み)エン

デジタル大辞泉 「園」の意味・読み・例文・類語

えん【園】[漢字項目]

[音]エン(ヱン)(漢) オン(ヲン)(呉) [訓]その
学習漢字]2年
〈エン〉
野菜や果樹を植える畑。「園芸茶園菜園田園農園薬園
一定の目的でこしらえた庭や区域。「園地園庭開園学園公園造園庭園梅園閉園名園楽園霊園動物園
子供が学んだり遊んだりする施設。「園児園長卒園保育園幼稚園
〈その(ぞの)〉「園生そのう花園
[難読]祇園ぎおん

その【園/×苑】

果樹・花・野菜などを植えた一区画の土地。庭園。「梅の―」
ある物事が行われる場所。また、ある特定の場所。「学びの―」「女の―」
[類語]庭園ガーデン名園林泉庭先外庭内庭中庭坪庭前庭まえにわ前庭ぜんてい裏庭石庭箱庭御苑神苑内苑外苑花園梅園花壇前栽築山

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精選版 日本国語大辞典 「園」の意味・読み・例文・類語

その【園・苑】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 草花・果樹・野菜などを栽培するための一区画の土地。
    1. [初出の実例]「梅の花今咲ける如(ごと)散り過ぎずわが家(へ)の曾能(ソノ)にありこせぬかも」(出典:万葉集(8C後)五・八一六)
    2. 「園(ソノ)の桑をも取らざれば絹帛の類も無かりけり」(出典:屋代本平家(13C前)二)
  3. 鳥や獣などを飼うために囲った一区画の土地。〔十巻本和名抄(934頃)〕
  4. ある物事の行なわれる場所。また、ある特定の世界。
    1. [初出の実例]「歴く文の囿(ソノ)を観泛く辞の林を覧るに」(出典:猿投本文選正安四年点(1302))
  5. 穴をいう、斎宮の忌詞(いみことば)。〔俚言集覧(1797頃)〕

えんヱン【園】

  1. 〘 名詞 〙 一定の区域を限って作った庭。庭園、公園など。
    1. [初出の実例]「始め此園を起すに当りて、府中の園匠をして、仮山泉石の設けを打点(もくろま)せしめしに」(出典:米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉一)

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普及版 字通 「園」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 13画

[字音] エン(ヱン)
[字訓] その

[説文解字]

[字形] 形声
声符は袁(えん)。〔説文〕六下に「果を樹(う)うる以なり」とする。園・園陵・園塋など墓域に関する語が多く、もと墓地に植樹する意の字であろう。

[訓義]
1. その。
2. はたけ。
3. はか。

[古辞書の訓]
名義抄〕園 ソノ・ソノフ

[語系]
園・袁・(遠)hiuanは同声。袁は死者の衣襟に玉を加えてその遠行を送る意。園はその声義を承ける字とみてよい。もと霊園の意であろう。(苑)iuanはそのなだらかな地勢をいい、また園と声義の近い字である。

[熟語]
園院・園塋・園苑・園家・園官園監・園葵・園径・園芸・園戸・園・園菜園子園舎・園・園主・園樹園妾・園場・園寝・園人・園・園宅・園池・園地園疇・園亭・園庭・園丁園廛園田・園・園夫園圃・園木・園民・園門・園邑・園囿・園吏・園裏・園柳・園陵・園林・園令・園廬・園鹿
[下接語]
苑園・花園・果園・家園・学園・官園・寒園・閑園・園・淇園・園・丘園・旧園・御園・杏園・郷園・禁園・空園・故園・公園・後園・郊園・菜園・山園・梓園・詞園・春園・小園・荘園・桑園・池園・茶園・中園・庭園・田園・桃園・内園・廃園・美園・文園・圃園・芳園・名園・園・薬園・幽園・遊園・楊園・瑶園・楽園・李園・梨園・梁園・林園・霊園

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改訂新版 世界大百科事典 「園」の意味・わかりやすい解説

園 (その)

薗とも書く。日本の古代・中世における畠地の一種。本来〈園地(えんち)〉〈園〉〈園圃〉は,水稲以外のものを栽培する土地に与えられた律令用語であった。宅地と一括して園宅地として理解する説もあるが,園地と宅地は同質ではない。田令の園地条によれば,〈凡そ園地を給ふは,地の多少に随ひて均しく給へ。若し戸絶えなば,公に還せ〉とある。すなわち班給規定があり,かつ絶戸となった場合のみであるが還公規定が存在するのであって,宅地と異なり,律令国家からは公地としてとらえられていた。しかし宅地と同様に,所定の手続を経れば売買は自由であり,また所有面積にも制限がなかったから,やはり宅地とともに律令体制下における私的土地所有展開の起点ないし基盤となったと考えられる。田令の桑漆条では〈園地〉のことについてはまったく触れていないが,律令国家は主として園地に桑とウルシの栽培を指定した。それらの栽培作物は調庸収奪の不可欠な原料であったが,当時の農民にとって生活必需物ではなかったから,政府が桑漆帳を進上させるなどの実状把握に努めたにもかかわらず,その栽培状況は必ずしも十分ではなかった。むしろ実際には,果樹,蔬菜雑穀などが園地でつくられていたのである。また園地以外の古代の畠地としては,令外の制である陸田があったが,それとは輸地子地(ゆじしち)でない点と栽培物の種類とが異なっていた。

 以上のような園地も,律令体制の崩壊にともなって,特定地方を除いては史料上から消えていった。そして,中世的な園としては,以下の二つのタイプの園がみられるに至った。(1)は,主として九州南部にみられる在家(ざいけ)の一要素としての薗である。それは居屋敷家屋)に接した畠地であり,通常その周囲には私的占有の標(しるし)としてのがめぐらされていた。中世前期の南九州では,薗畠を核とした畠作原理の卓越した農業であったが,14世紀以降になると薗内部の畠の用水路灌漑をともなった水田化が進行し,しだいに水田農業を軸とする農業構造へと発展していった。中世前期の在家体制から後期の(かど)体制への移行がそれである。なお尾張の場合であるが,《海道記》に〈園ノ中ニ桑アリ,桑ノ下ニ宅アリ。宅ニハ蓬頭ナル女,蚕簀ニ向テ蚕養ヲイトナミ,園ニハ潦倒タル翁,鋤ヲ柱テ農業ヲツトムル〉とあるのは,鎌倉時代の園の有様を如実に示してくれるものである。(2)は〈御薗(みその)〉である。古代には内膳司の園や典薬寮の薬園などがあり,政府直営のかなり集約的な経営が行われていたが,中世でもその系統の黄瓜御薗(きうりのみその),精進御薗,橘御薗,菓子御薗,地黄御薗などがみられる。中世のそれらは古代のような直営ではなく,供御人(くごにん)の給免田畠を中心とするものとなっており,そこを基盤とする彼らの活発な交易活動が行われていた。また神領の御薗は伊勢神宮領に多くみられる。
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百科事典マイペディア 「園」の意味・わかりやすい解説

園【その】

古代・中世における畠地の一形態。薗とも記される。律令では園地(えんち)として,土地の多少に従って均分に与える耕地,すなわち公地とされ,桑・漆の栽培が奨励されていた。ただし所有面積の制限がなく,所定の手続きを経れば売買は自由な,私的所有権の強い地であった。律令国家の衰退に伴って園地の用語は消失した。中世には主に南九州で在家(ざいけ)の一種としての薗がみられる。薗は住民・居屋敷・その周囲の畠地が一体となって領主に把握され,その支配の単位を構成した。実際に耕作者がいる薗は〈居薗(いぞの)〉とよばれた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「園」の意味・わかりやすい解説


その

古代の菜園地。宅地に付属した畠地で野菜のほかに桑,漆を植えることが定められていたが,免租地であった。令制下,宮中では園池司 (そのいけのつかさ) をおいた。中世荘園では (くろ) とも称せられた。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「園」の解説

その

?-? 江戸時代中期-後期の俳人。
須田一漁の娘。下村一漁の妻。江戸の人。3代深川湖十にまなんだ。号は寛連舎,提窓,蓬莱軒,推敲庵,台天,花十など。編著に「俳諧百千鳥(はいかいももちどり)」。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【庭園】より

…広く美観,慰楽,実用の目的で,ある敷地内で建造物以外に計画された区域をさし,通常,泉水や水路,池を設け,植栽などが施される。
【日本】
 庭園という言葉は新しいもので,もともと庭と園は別の意味をもっていた。〈(にわ)〉は仕事や行事をするための場所をいい,平坦な土地を指した。…

【御薗】より

…古代,中世の皇室や伊勢神宮などの大神社に付属する,食料品調達にかかわる所領。古代の律令制のもとでは,宮内省所属の園池司と典薬寮にと薬園が付属していた。前者は蔬菜樹菓を植え,品部(しなべ)の園戸が採取などにあたった。…

※「園」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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