親子(ちかこ)内親王。仁孝(にんこう)天皇の第八皇女、14代将軍徳川家茂(いえもち)夫人。弘化(こうか)3年閏(うるう)5月10日生まれ。母は議奏(ぎそう)権大納言(ごんだいなごん)橋本実久(さねひさ)の女(むすめ)経子(観行院(かんぎょういん))で、誕生後、橋本邸で養育された。1851年(嘉永4)7月、6歳で、有栖川宮熾仁(ありすがわのみやたるひと)親王と婚約した。しかし、58年(安政5)以降、公武関係融和を目ざして、大老井伊直弼(いいなおすけ)らを中心に江戸降嫁が画策され始めた。その結果、老中安藤信正(のぶまさ)の尽力によって、62年(文久2)2月11日には江戸で将軍家茂との婚儀が行われた。2人は同年齢である。しかし、将軍家茂は、第二次長州攻撃のため三度目の上洛(じょうらく)をしたとき66年(慶応2)7月20日、大坂城で病死した。21歳の和宮は江戸城にとどまり、12月に薙髪(ちはつ)して静寛院宮(せいかんいんのみや)と名のった。一橋慶喜(ひとつばしよしのぶ)の将軍襲職にあたって、和宮は、4歳の田安亀之助(たやすかめのすけ)(のち将軍家16代家達(いえさと))の擁立派を抑え、彼を慶喜の継嗣(けいし)とすることで収めるように尽力した。68年(明治1)戊辰(ぼしん)の役では、東征大総督有栖川宮熾仁親王の進発にあたって、徳川慶喜の懇願を受けて、侍女の土御門(つちみかど)藤子を上京させ、徳川家の「朝敵」の立場を弁明し、家名存続を嘆願した。江戸城開城後、城外の清水邸に移り、69年正月に京都に戻って74年6月まで滞在、ふたたび東京に帰った。77年(明治10)8月から、持病の脚気(かっけ)治療のため、箱根塔ノ沢温泉に滞在、9月2日そこで病死した。墓所は、家茂と同じ、東京・芝の増上寺境内。
[河内八郎]
『武部敏夫著『和宮』(1965・吉川弘文館)』
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仁孝天皇の皇女,孝明天皇の皇妹。第14代将軍徳川家茂夫人。名は親子,和宮のち静寛院宮と称す。1851年(嘉永4)有栖川宮熾仁(たるひと)親王と婚約したが,日米修好通商条約の勅許問題や,将軍継嗣問題によって悪化した朝幕関係を融和するために,60年(万延1)徳川家茂へ降嫁するように幕府より求められた。孝明天皇は有栖川宮との婚約,幼少などを理由に拒絶したが,この問題を朝権の回復の足がかりとしようとする岩倉具視(ともみ)の献策をいれて,攘夷鎖国の実行を条件に降嫁を勅許した。和宮は強く固辞したが,周囲の説得に抗しきれず,これを受けいれ,61年(文久1)江戸城に入り,翌年婚儀がおこなわれ,御台所と称した。66年(慶応2)第2次幕長戦争(長州征伐)の渦中,家茂は大坂城で死去したため,薙髪(ちはつ)し静寛院と称した。戊辰戦争に際しては,徳川家救済や,征東軍の江戸進撃の猶予を政府に嘆願した。《静寛院宮御日記》がある。
執筆者:羽賀 祥二
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1846.閏5.10~77.9.2
仁孝天皇の第8皇女,14代将軍徳川家茂(いえもち)の正室。名は親子(ちかこ)。母は橋本実久の女典侍経子。1851年(嘉永4)有栖川宮熾仁(たるひと)親王と婚約。60年(万延元)公武合体をはかる幕府の皇女降嫁奏請を孝明天皇が勅許し,61年(文久元)内親王宣下をへて,62年江戸城で将軍家茂と結婚。66年(慶応2)家茂に死別,薙髪して静寛院と称した。68年(明治元)朝敵となった婚家徳川家の存続を朝廷に嘆願。のち京都,東京に隠棲。83年七回忌に贈一品。
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…またそれを説く者の打算がからむことは避けがたかった。1862年(文久2)に成った皇妹和宮と将軍徳川家茂との婚儀は,朝廷と幕府の双方が公武合体論によって歩み寄ったことを示している。だが,朝廷はそこに攘夷の実行を期待し,幕府は対外問題を棚上げにして朝廷の権威を自己の政治支配の安定に利用しようとしていた。…
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