屋根に唐破風(からはふ)を持つ門のことで,唐破風を門の両側面に持つものを平(ひら)唐門,正面および背面に持つものを向(むかい)/(むこう)唐門と呼ぶ。遺構としては南北朝時代のものが最古である。平唐門には妙心寺玉鳳院四脚門(南北朝時代),法隆寺北室院表門(室町時代),醍醐寺三宝院唐門(桃山時代)などがあるが,室町時代以前のものはいずれも装飾的要素が少なく,全般的に簡素である。向唐門には室町時代以前の遺構がなく,桃山時代から江戸時代初期に集中し,優れた作品が遺存する。これらはいずれも彫刻や彩色を多用し,なかでも西本願寺唐門は黒漆塗を基調として,極彩色をほどこした組物や彫刻,鍍金製の飾金具を多用するなど,きわめて華麗である。唐破風が側面に置かれて目だたない平唐門に対し,正面にそれを置いて変化に富んだ屋根形式を強調する向唐門は,とくに桃山期の新興武士の好みに合致したのであろう。他に竹生島宝厳寺唐門(1603年豊国廟から移築)などが著名である。
執筆者:清水 拡
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日本建築における門の様式の一つ。上半が凸、下半が凹の反転する曲線になる破風(はふ)を唐破風といい、この唐破風のつけられた門を総称して唐門という。唐門には正面に唐破風をみせる向(むかい)唐門と、妻に唐破風をつける平(ひら)唐門とがある。門には柱が2本だけ立って屋根をのせる棟門(むなかど)、中央に2本の本柱を立て前後に2本ずつ控柱を立てる四脚(しきゃく)門、さらに正面を3間とし、前後に柱を立てる八脚(はっきゃく)門があるが、唐門でももっとも簡単なものは棟門に唐破風をつけただけの向唐門、平唐門である。向唐門は奥行が深くなるため、前後に2本ずつ柱を立てるものが多いが、平唐門はほとんど棟門である。唐破風には軒(のき)先の一部だけに設けられる軒唐破風があり、四脚門の向唐門には京都・大徳寺唐門のように中央だけ軒唐破風をつけたものや、京都・西本願寺唐門のように軒全面を唐破風とするものがある。また、四脚門の平唐門は各地の東照宮でみられる。なかでも日光東照宮の正面唐門は正面・側面とも四面に唐破風をつけて豪華である。八脚門で軒唐破風をつけたものとしては日光・輪王寺(りんのうじ)大猷院霊廟(だいゆういんれいびょう)の夜叉(やしゃ)門が著名である。軒唐破風をつけると、雨は両わきに流れて軒先から落ちない効果があり、軒唐破風は出入口に盛んに用いられた。
[工藤圭章]
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…寺院では塔頭(たつちゆう)の門などに多い。 唐(から)門は屋根全体を唐破風造にしたもので平安時代からあり,唐破風が側面に見える平(ひら)唐門と,唐破風を正面に見せた向(むかい)唐門(図7)とがある。軒先に唐破風をつけただけの門も唐門と普通呼ばれているが,建築術語としては,屋根を支える垂木(たるき)が全部唐破風のような反転曲線からなっているものだけをいう。…
※「唐門」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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