(読み)セン

デジタル大辞泉 「専」の意味・読み・例文・類語

せん【専〔專〕】[漢字項目]

[音]セン(呉)(漢) [訓]もっぱら もはら
学習漢字]6年
他の事はおいてそれだけに集中する。それひとすじ。「専一専攻専属専任専念専門
ひとり占めにする。自分かってに物事をする。「専横専制専断専売専有専用独断専行
「専門学校」の略。「高専
[名のり]あつし・あつむ・たか・もろ

せん【専】

第一であること。何よりも大切なこと。
「体を丈夫にするのが―だよ」〈紅葉金色夜叉
自分の思うままにすること。
藤原氏、権を―にし」〈福沢文明論之概略

とうめ〔たうめ〕【専】

[副]《「たくめ(専)」の音変化》もっぱら。専一に。
いまし―東の国ををさめよ」〈景行紀〉

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精選版 日本国語大辞典 「専」の意味・読み・例文・類語

もはら【専】

  1. [ 1 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙もっぱら(専)[ 一 ]
    1. [初出の実例]「このごろ庭もはらに花ふりしきて」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
  2. [ 2 ] 〘 副詞 〙
    1. もっぱら(専)[ 二 ]
      1. [初出の実例]「普光寺の僧、栖玄、徳行を淳(モハラ)修め」(出典:天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃))
    2. ( 否定表現を伴って ) 行為事態が絶対に成立しがたいことを表わす語。全く。決して。全然。
      1. [初出の実例]「もはら、さやうの宮仕へ仕うまつらじと思ふを」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))

もっぱら【専】

  1. ( 「もはら」の変化した語。「純」「一」とも書いた )
  2. [ 1 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙 他のことをさしおいて、それに集中するさま。また、そのことを主たること、肝要なこととするさま。
    1. [初出の実例]「松風村雨の後段、はん女、みそきかは、是等はみなれんぼのもっぱら也」(出典:五音曲条々(1429‐41頃))
  3. [ 2 ] 〘 副詞 〙 他の事態や行為をさしおいて、ひたすら、その事態であるさま、ひたすらその行為を行なうさまを表わす語。ただひたすら。一途に。むはら。
    1. [初出の実例]「もっぱらたすけける人ぞとまらぬをや、と思ひしかば」(出典:撰集抄(1250頃)七)

たくめ【専】

  1. 〘 副詞 〙 ( 語源未詳 ) もっぱら。専一に。とうめ。
    1. [初出の実例]「豈専(タクメ)に蘇我の臣の仏の法を興し行ふに由れるに非ずや」(出典:日本書紀(720)敏達一四年三月(前田本訓))

専の補助注記

音便形と思われる「たうめ(とうめ)」という語形もみられ、老女を意味する「たうめ(とうめ)」との関連があるともいう。→とうめ(専)とうめ(専女)


せん【専】

  1. 〘 名詞 〙 何をおいても第一とすること。専一のこと。もっぱら。
    1. [初出の実例]「心の専(セン)不専を不論して南無あみだ仏ととなふる声こそ詮要と」(出典:一言芳談(1297‐1350頃)下)
    2. 「俳諧は新敷趣を専とすといへども、物本性をたがふ」(出典:俳諧・去来抄(1702‐04)修行)
    3. [その他の文献]〔易経‐繋辞上〕

とうめたうめ【専】

  1. 〘 副詞 〙 ( 「たくめ(専)」の変化した語 ) もっぱら。専一に。
    1. [初出の実例]「故(かれ)に汝(いまし)東国(あつまのくに)を専(タウメ)(おさ)めよ」(出典:日本書紀(720)景行五六年八月(北野本南北朝期訓))

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普及版 字通 「専」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 9画

(旧字)專
人名用漢字 11画

[字音] セン・タン
[字訓] まるめる・うつ・もっぱら

[説文解字]
[甲骨文]

[字形] 会意
旧字は專に作り、(せん)+寸。(ふくろ)の上部を括(くく)った形。寸は手。專はの中にものを入れ、これを手で摶(う)ってうち固める意。その丸くうち固めたものを團(団)という。〔説文〕三下に「六寸のなり」とメモ用の手版の意とし、また「一に曰く、專は紡專なり」という。いわゆる紡で、糸をつむぐのに用いる。ものをうち固めることを摶(たん)といい、丸めたものを團、土をやき固めたものを(せん)という。

[訓義]
1. まるめる、うつ、うちまるめる。
2. 土をまるめて作った紡摶、つむぐ、いとまき。
3. うちかためる、一つとする。
4. もっぱら、ひとしい、みちる、まかせる。
5. ほしいまま、ほしいままにする、かつて、ひとり、わたくし、わがまま。
6. まじらぬ、ひたすら、あつい、ひとえに。
7. まるい、まわる。
8. 六寸の簿。

[古辞書の訓]
和名抄〕專 日本紀私記に云ふ、專領、多宇女乎佐女(たうめをさめ)、今按ずるに、俗に老女を呼んで專と爲す 〔名義抄〕專 モハラ・ホシイママニ・ヒトリ・タウメ・タカシ/專領 タウメヲサメヨ

[声系]
〔説文〕に專声として團・傳(伝)・摶・轉(転)など十二字を収め、(せん)は未収。古くは專を用い、紡を專といった。

[語系]
專・團・摶・duanは同声。もと土などをうち固めるときの擬声語であろう。屯dunは縁飾りの糸を固く結んだ形で、丸くて固い状態のものをいう。頓tunもその系統の語。土を丸めるを專、糸を結ぶを屯(とん)、語として両者は親縁の関係にある。

[熟語]
専愛・専為・専意・専一・専壱・専員・専科・専家専愨・専学・専気・専居・専業専愚・専経専決専権専固・専攻・専差・専殺専恣・専司専此・専志・専思専祠・専車専修専習・専城・専場専心・専制専征・専政・専勢専誠・専精専擅・専属・専対・専断・専・専直・専独・専任・専念・専柄・専弁・専房・専務・専門・専有・専欲・専利専戮専弄
[下接語]
気専・騎専・自専・静専・貞専

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【塼】より

…焼成した煉瓦のことを,中国では塼(専,磚,甎とも書く)といい,また甓(へき)などともよぶ。古代から現代まで土木建築の基本材料として多方面に使われている。…

※「専」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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