(読み)チマタ

デジタル大辞泉 「巷」の意味・読み・例文・類語

ち‐また【×巷/岐/×衢】

《「また」の意》

㋐道の分かれる所。分かれ道。岐路
物事の分かれ目。「生死の―をさまよう」
「命を寵辱ちょうじょくの―に懸け」〈露伴・二日物語〉

㋐人が大ぜい集まっている、にぎやかな通り。また、町中まちなか。「紅灯の―」
㋑大ぜいの人々が生活している所。世の中。世間。「―の声に耳を傾ける」「―のうわさ
ある物事が盛んに行われている所。「修羅の―」「弦歌の―」「戦火の―と化す」
[類語](2世間世の中天下江湖こうこ社会実社会世上世俗俗世人世じんせい人間じんかん俗間民間巷間こうかん市井しせい浮き世娑婆しゃば塵界じんかい世界人中浮き世一般

こう【巷】[漢字項目]

人名用漢字] [音]コウカウ)(漢) [訓]ちまた
町や村の小道町中。「巷間巷説陋巷ろうこう

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「巷」の意味・読み・例文・類語

ち‐また【巷・岐・衢】

  1. 〘 名詞 〙 ( 道股の意 )
  2. 道がいくつかに分かれるところ。また、その道。分かれ道。分岐点。辻。岐路。
    1. [初出の実例]「麗美しき嬢子、其の道衢(ちまた)に遇ひき」(出典古事記(712)中)
    2. 「道ちまたにて、くらき夜にはまよふ事既にありき」(出典:読本・春雨物語(1808)樊噲下)
  3. 町の中の道路。また、にぎやかな所。まちなか。転じて、世の中。世間。〔十巻本和名抄(934頃)〕
    1. [初出の実例]「前途三千里の思ひ胸にふさがりて、幻のちまたに離別の泪をそそぐ」(出典:俳諧・奥の細道(1693‐94頃)旅立)
  4. ある物事の行なわれているところ。その場所。
    1. [初出の実例]「仏日早く没して、生死流転の衢(チマタ)冥々たり」(出典:高野本平家(13C前)五)
    2. 「鬨声矢さけびの音のみやん事なく、修羅のちまたとなれり」(出典:北条五代記(1641)七)
  5. ( の比喩的な用法 ) 物事の分かれ目。
    1. [初出の実例]「一期の大事死生の岐路(チマタ)と」(出典:五重塔(1891‐92)〈幸田露伴三四)

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