(読み)バツ

デジタル大辞泉 「抜」の意味・読み・例文・類語

ばつ【抜〔拔〕】[漢字項目]

常用漢字] [音]バツ(呉) [訓]ぬく ぬける ぬかす ぬかる
引きぬく。「抜歯抜刀抜本不抜
多くのものの中からそのものだけを選び取る。「抜粋抜擢ばってき簡抜
他のものより特にぬけ出ている。「抜群奇抜警抜秀抜卓抜

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精選版 日本国語大辞典 「抜」の意味・読み・例文・類語

ぬき【抜】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「ぬく(抜)」の連用形名詞化 )
  2. 除き去ること。省くこと。
    1. [初出の実例]「串談(じょうだん)はぬきにして」(出典:にごりえ(1895)〈樋口一葉〉三)
    2. 「昼飯を抜きにする事があるが」(出典:まじょりか皿(1909)〈寺田寅彦〉)
  3. 泥鰌(どじょう)などの骨を取り去ること。また、その骨を取った泥鰌やその料理。
    1. [初出の実例]「やあ骨抜鰌鍋(ヌキ)だな、こいつあごうぎだ」(出典:歌舞伎勧善懲悪覗機関(村井長庵)(1862)三幕)
  4. 他人の小刀、こうがいなどを抜き取る盗人。
    1. [初出の実例]「其比はぬすびとの刀かうがい小刀抔を抜取ことをしたり、是故に盗人をぬきと云し、今のすりと云が如し」(出典:随筆・老人雑話(1713)乾)
  5. 食べ物で普通入れてあるものを除いたもの。餠を入れない汁粉、わさびを付けないにぎり鮨の類。また、天ぷらそばなどで、そばを入れないものもいう。
    1. [初出の実例]「『入谷ぢゃあ、喰物見世は蕎麦屋ばかり』『天か玉子のぬきで呑むのもしみったれなはなしだから』」(出典:歌舞伎・天衣紛上野初花(河内山)(1881)六幕)
  6. かきぬき(書抜)
    1. [初出の実例]「此あいだ、あのべらぼう判者めが、かなちげへの句をぬきにしたとよ」(出典:洒落本・猫謝羅子(1799))
  7. ごまかすこと。からくり。
    1. [初出の実例]「女どもぬかるな。指にぬきがあるぞ」(出典:咄本・昨日は今日の物語(1614‐24頃)下)
  8. ( 「せんぬき(栓抜)」の略 ) びんなどの栓を取りはずす道具。
    1. [初出の実例]「『馬鹿ねえ、お勝ねえさんのぬきよ』『ぬき?』『ビールの栓抜きの鈴よ』」(出典:童謡(1935)〈川端康成〉)
  9. 一対一で行なう試合で、対戦相手を続けて負かすこと。「五人抜き」
    1. [初出の実例]「三番抜き、五番抜きの賞には大枚の金子や米が賭けられるという」(出典:おあんさま(1965)〈大原富枝〉)
  10. 多くかけ持ちしたり、何度も興行したりする場合に、一か所、または一回休演することをいう、寄席芸人仲間の語。

ぬけ【抜】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「ぬける(抜)」の連用形の名詞化 )
  2. あるべきであるのに、もれているもの。「書類に一部抜けがある」
  3. 知恵のたりないこと。また、その人。
  4. ( 「ずぬける」意から ) やたらに多いこと。「ぬけに」の形で用いる。
    1. [初出の実例]「行平へうらみつらみをぬけに言い」(出典:雑俳・川柳評万句合‐宝暦一三(1763)義四)
  5. ( 「あるものを抜いている」の意から ) それより勝っていること。以上。
    1. [初出の実例]「どう見ても菊五郎をぬけといふ男で」(出典:歌舞伎・玉藻前御園公服(1821)三立)
  6. ぬけく(抜句)
    1. [初出の実例]「観音の化身のこぞりかしこしとぬけをいふべき顔つきよ喝」(出典:狂歌・雅筵酔狂集(1731)雑)
  7. 俳諧で、主題を句の表面にあらわさないで、なぞめいた余意によってそれと暗示させる手法。談林俳諧で流行したもの。たとえば「鹿を追ふ猟師か今朝の八重霞〈舟中〉」では「鹿を追ふ猟師山を見ず」の諺から「山を見ず」という詞が「ぬけ」になっている。ぬけがら
    1. [初出の実例]「一、当時なぞなぞの躰、ぬけの句躰とて、はやりのやうにおもへども」(出典:俳諧・近来俳諧風躰抄(1679))
  8. 江戸時代、大坂堂島の米相場で使われた語。持合(もちあい)値段より上に出ることをいう。
    1. [初出の実例]「相場弐匁五分て持合て居る時、三匁以上に成るを三匁抜けと云、弐匁以下に成たを割れると云、上をぬけと言、下をわれと言」(出典:稲の穂(1842‐幕末頃))
  9. 花札で、手役点数の少ない者が勝負中に、標準点(八八点)以上の得点をすること。
  10. 落ち度欠点
    1. [初出の実例]「しかし、此方先方之ぬけをとがめず」(出典:黒住教教書(1909‐20)文集)
  11. 数の八をいう、荒物商、畳商、履物商などの符牒

ぬかり【抜】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「ぬかる(抜)」の連用形の名詞化 ) すべきことをうっかりしてしないでいること。また、そのため失敗すること。手落ち。手ぬかり。油断。
    1. [初出の実例]「是は何事ぞ。ぬかりはせまひぞ」(出典:虎明本狂言・文山立(室町末‐近世初))

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普及版 字通 「抜」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 7画

(旧字)拔
人名用漢字 8画

[字音] バツ・ハツ
[字訓] ぬく・とる・ひく

[説文解字]

[字形] 形声
声符は(はつ)。に髪の意がある。〔説文〕十二上に「(ぬ)くなり」、〔広雅、釈詁一〕に「出だすなり」とあり、抜・抜除の意がある。草を抜くことを拝といい、〔詩、召南、甘棠〕「翦(き)る勿(なか)れ拜(ぬ)く勿れ」とあり、拜(拝)はいて華(はな)を抜く形、その姿勢を拝という。拔と声義の関係がある。

[訓義]
1. ぬく、ぬきだす、ひきぬく。
2. ひく、ひきあげる、うつす。
3. とる、せめとる、せめおとす。
4. はやい、すみやか。
5. (ばつ)と通じ、やどる。
6. 抜剌、ゆがむ、もとる。

[語系]
拔buat、拜peat、buatは声が近い。拔は髮(髪)piuatのように細いものを抜きとる意。拜は草花いて摘む形。また草屋に旅宿りすることをという。

[熟語]
抜意・抜河・抜幹抜簡・抜起・抜去・抜挙抜距・抜群・抜剣・抜・抜貢・抜興・抜山抜識・抜舎・抜出・抜除・抜渉・抜進・抜親・抜・抜俗・抜地・抜・抜白・抜本・抜用・抜剌抜倫・抜頭
[下接語]
引抜・英抜・海抜・簡抜・鑒抜・奇抜・警抜・抜・孤抜・攻抜・識抜・舎抜・秀抜・抜・峻抜・峭抜・聳抜・振抜・進抜・清抜・選抜・薦抜・聡抜・卓抜・抽抜・超抜・挺抜・堤抜・倒抜・不抜・奮抜・亮抜・朗抜

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