税法上,納税者が納付すべき租税をその納期限をすぎても納付しない場合に,滞納処分の前提として,期限を指定してその納付を催告する行為のこと(国税通則法37条,地方税法66条,72条の66,73条の34。地方税の場合,納期限後20日以内である)。督促は要式行為であり,督促状(通常の場合。なお,その様式については,国税通則法施行規則別紙第三号書式参照),または納付催告書(第二次納税義務者に対する場合。国税徴収法32条2項,地方税法11条の2)という書面でこれを行わなければならない。口頭でなされた督促は無効である。督促は原則として納期限から50日以内になされなければならない(国税通則法37条2項)。しかし,50日以後になされた督促も,その効力には影響がないと解されている。督促状が納税者に送達されると,督促にかかわる国税の時効が中断される(73条1項4号)。また,督促は滞納処分の前提要件であり,督促状を発した日から一定期日(通常10日)以内に納税者が当該租税を完納しない場合には財産の差押えがなされる(国税徴収法47条1項,地方税法68条1項)。地方税等については,督促をなした場合に,督促手数料が課されることがある(地方税法67条等)。なお,督促は,行政上の強制徴収が認められている租税以外の公法上の金銭債権の場合にも,強制徴収の前提として一般に行われる(土地収用法128条4項,健康保険法11条,地方自治法231条の3,等)。
執筆者:中里 実
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税法上、納税者が納付すべき租税を納期限までに完納しない場合に、滞納処分の前提として、期限を指定してその納付を催告する行為をいう(国税通則法37条、地方税法66条)。申告納税方式の租税の場合には、申告・更正または決定によって確定した税額が納期限までに納付されないときに督促がなされる。また、賦課課税方式による租税および普通徴収の地方税の場合には、国または地方公共団体は賦課決定により税額を確定するとともに、納税の告知とよばれる行為によって納税義務者にその納付を請求するが、それに対して納税者から任意の納税が行われないときに督促がなされる。督促は、督促状による要式行為であって、口頭による督促は無効とされる。督促は、原則として納期限から20日以内になされなければならない。なお、督促状を発した日から一定期日(通常は10日)以内に納税者が当該租税を完納しない場合には、滞納処分がなされる。
[林 正寿]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…同法上の滞納処分は,本来,関税・とん税・特別とん税を除く国税債権の強制徴収手続として定められたが,関税等および地方税ならびにその他の公法上の金銭債権についてもこの手続によるべきであると規定されている例が多く(関税法11条,地方税法68条6項,72条の68-6項),今では公法上の金銭債権一般に関する強制徴収手段となっている。滞納処分の手続では,まず,租税の滞納者(公法上の債務不履行者)に対して督促(履行の催告)を行う。それでも納税(債務の履行)がなされないときには,国または地方公共団体は,みずから(租税)滞納者(公法上の債務不履行者)の財産を差し押さえ,公売等の手続でこれを換価し,換価代金を租税(公法上の債権)に充当して租税等の公法上の債権の満足をはかることができる。…
…租税手続は,課税標準および税額の確定に関する租税確定手続と,租税の納付および徴収に関する租税徴収手続とに分けられる。このうち,租税徴収手続は,通常,租税の納付によって終了するが,納期限までに納付がなされない場合は,原則として督促がなされ,それでも租税が完納されない場合には,国または地方公共団体は,租税債権の強制的実現を図ることができる。これを,滞納処分(ないし,強制徴収)という。…
※「督促」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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