デジタル大辞泉 「綺」の意味・読み・例文・類語
き【綺】[漢字項目]
1 美しい模様を織りなした絹。あや絹。「綺羅」
2 飾り立てて美しい。「綺語・綺麗」
3 巧みに織りなすこと。「綺譚・綺談」
[補説]「奇」を代用字とすることがある。
[名のり]あや
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
綾の古名で,単色の紋織物をさす。中国では古く戦国時代にすでに〈綺〉の名称があり,《戦国策》鮑彪の注には〈綺は文様のある繒(かとり,上質の平絹)〉とある。また《漢書》地理志の顔師古の注に〈綺は今日いう細かい綾〉とあり,元の《六書故》に,綺は彩糸で文様を織りだした錦に対し,単色で文様をあらわした織物であることが記されている。現存する作例,例えば馬王堆1号漢墓その他の出土例から古代の綺の特色を見ると,ほとんどが平地の経の浮紋織,あるいは平地の経綾の紋織になっている。したがって綾のなかでも最も素朴な平地のものを特に〈綺〉とする考え方もある。一方,日本では《和名抄》に〈一におりもの,一にかむはたと訓み,錦に似た薄い織物〉とあることから,上代裂のなかでも比較的簡単な錦類,例えば法隆寺献納物宝物のうちの〈平地浮文錦〉や正倉院にある織幅の狭い〈段文錦〉(緯縞裂)など織紐状の裂を〈かんばた〉とみなしている。特に綺を紐状の織物と解釈するのは《東大寺献物帳》において巻子の緒に〈綺帯〉と記されたもののあることや,《日本書紀》持統4年4月の条の朝服に関する記載のうちにも同じく〈綺帯〉の名称があることによっている。
執筆者:小笠原 小枝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
これを「き」とも読むことがあるが、現在の中国で呼称されている「綺」とは、織技のうえでその定義を異にしている。中国では、『説文解字(せつもんかいじ)』などの解釈から、漢代の出土織物に「綺」あるいは「漢綺」組織として当てはめているものは、平織の一部を文様部分のみ浮かせたもので、わが国の近世にみられる「紗綾(さや)」に相当するものである。「かむはた、かんはた(神機)」からの転訛(てんか)ともいわれ、日本古代の織物の一つとして文献に散見しているものは、細長い織紐(おりひも)の形をしたもので、緯糸(よこいと)に色糸を用いて織縞(おりしま)を表していることが特徴である。『日本書紀』持統(じとう)紀の朝服(ちょうふく)の帯をはじめとして、奈良時代の『正倉院文書』には、写経した「経巻(きょうかん)」の巻緒(まきお)に使われているため、その売買取引の状況が明らかになるし、正倉院蔵の紐類にもそれと断定される織紐が蔵されている。また古代の倭文布(しずり)が、すじおりとすることから、横縞の織物としては同様のものであったとみられる。また広義に解釈するならば、細幅のものに対して広幅のものも存在したことになる。奈良・平安時代の文献に綺(かんはた)という名称の織物がみられるが、緯に色糸をつかって文様を織り出した、いわゆる緯錦(よこにしき)の系統の織物をさしているとの説があるが、文献と一致するものかどうかについては疑問である。
[角山幸洋]
干渉すること,口出しや手出しをすること。同じ意味の語に口入(くにゅう)があるが,言論による介入を価値中立的に意味する口入に対し,綺は実力による干渉を非難の意をこめてよぶ。所領所職に対する他人の介入を非難する文脈で用いられることが多い。現在でも方言として残る。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…山西省南東部の夏県西陰村の彩陶遺跡から出土した半個の繭殻と紡錘車や,江蘇省呉江県梅椻鎮北東の袁家埭遺址から出土した黒陶にみられる蚕の文様などから,今日では新石器時代における絹の生産が推定されている。紀元前1300年ころの殷代の甲骨文には〈桑・蚕・糸・帛〉などをあらわす文字が認められ,また当代の青銅製鉞(えつ)に付着した絹片によって,平絹や平織地に浮糸で文様をあらわした紋綺の存在が知られる。戦国時代の絹織物は,湖南省長沙,湖北省江陵,アルタイ東部のパジリクなどから平絹,綺,帛画(描絵),錦,刺繡などが発見されている。…
※「綺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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