(読み)キ

デジタル大辞泉 「奇」の意味・読み・例文・類語

き【奇】[漢字項目]

常用漢字] [音](漢) [訓]あやしい くし くすし あやに
普通とは違っている。珍しい。「奇異奇行奇習奇人奇抜奇妙好奇新奇珍奇
普通の知識では割り切れない。不思議だ。あやしい。「奇怪奇術怪奇伝奇猟奇
普通の程度をはるかに超えてすぐれている。「奇観奇才奇勝奇特
予想から外れた。思いがけない。「奇禍奇遇奇襲
二で割り切れない数。はした。「奇数
(「」の代用字)形が正常でない。「奇形
(「」の代用字)飾り立てて美しい。「奇麗
[名のり]あや・くす・すく・より
[難読]数奇屋すきや

き【奇】

[名・形動]珍しいこと。不思議なこと。また、そのさま。「事実は小説よりなり」
[類語]不思議不可思議不可解不審奇妙面妖めんようみょうへんなぞかい奇異奇怪幻怪怪奇怪異神秘霊妙霊異玄妙あやかしミステリーミステリアス奇天烈摩訶不思議けったいおかしい

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精選版 日本国語大辞典 「奇」の意味・読み・例文・類語

き【奇】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 形動 ) めずらしいこと。思いがけないこと。ふしぎなさま。
    1. [初出の実例]「右大将云、御幸未刻之由奉之、而于今遅々如何、為奇」(出典:玉葉和歌集‐仁安元年(1166)一二月五日)
    2. 「何も角もさっぱりと呑込めない…それにしても余程奇な事だなア!」(出典:めぐりあひ(1888‐89)〈二葉亭四迷訳〉一)
    3. [その他の文献]〔戦国策‐秦策・孝文王〕
  3. ( 形動 ) 妙(たえ)で、すぐれていること。変わっていて興味深いさま。
    1. [初出の実例]「西湖の景は雨にも奇なり。晴にも好し」(出典:燈前夜話(15C後)下)
    2. [その他の文献]〔蘇軾‐飲湖上初晴後雨二首詩〕
  4. 奇数(きすう)。二で割りきれない整数。はんぱ。⇔
    1. [初出の実例]「陽の数は奇也。一三五七九以上并二十五、奇はもののかたかたあるを云也」(出典:四河入海(17C前)五)

くすし【奇】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙
  2. 超自然的な霊異をつつしみうやまう気持でいい表わす語。不可思議である。神秘的である。霊妙である。あやしい。くし。
    1. [初出の実例]「特に久須之(クスシク)(あや)しき事を思ひ議(はか)ること極まりて難し」(出典:続日本紀‐天平神護二年(766)一〇月二〇日・宣命)
    2. 「吉祥天女を思ひかけむとすれば、法気(ほふげ)づき、くすしからむこそ、又わびしかりぬべけれ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)
  3. 宗教的な霊異や禁忌などを、まじめに信仰し固く従っている。態度が神妙である。奇特である。また、一風変わった、かたくるしくまじめな態度についてもいう。
    1. [初出の実例]「物忌くすしう、〈略〉などするものの名を姓(さう)にて持たる人のあるが」(出典:枕草子(10C終)二九二)

奇の派生語

くすし‐が・る
  1. 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙

し【奇】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙
  2. 奇異である。霊妙である。不思議である。→奇御魂(くしみたま)
    1. [初出の実例]「天地の明けき奇(くしキ)(しるし)の授け賜ふ人は」(出典:続日本紀‐天平神護元年(765)三月五日・宣命)
    2. 「見よ環(たまき)の眼光(まなざし)は一種常と異(かは)れる奇(ク)しき色をもて輝やけるなり」(出典:己が罪(1899‐1900)〈菊池幽芳〉前)
  3. たぐいまれである。珍しい。→奇(く)しき奇(く)しくも

あや【奇・怪】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙 ( 「目もあや」の形で ) 見て不思議に思うさま。驚くばかりだ。
    1. [初出の実例]「いと、目もあやにこそ、清らに物し給ひしか」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
    2. 「急持ちて行きたるに律師目もあやに悦て」(出典:御伽草子・秋の夜の長物語(南北朝))

奇の語誌

上代の副詞「あやに」から転じたものか。「目も」を受ける用法に限られ、見て驚くさまを表わすのは同形語「あや(文=彩)」への類推があったか。多く、賛美する表現で用いられる。


くすばし【奇】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙 不思議である。珍しい。くすし。
    1. [初出の実例]「古に ありけるわざの 久須婆之伎(クスバシキ) 事と言ひ継ぐ 血沼壮士(ちぬをとこ) 菟原壮士(うなひをとこ)の」(出典:万葉集(8C後)一九・四二一一)

くしき【奇】

  1. 〘 連体詞 〙 ( 形容詞「くし」の連体形から ) 不思議な。神秘な。
    1. [初出の実例]「思へば奇(ク)しき成行であった」(出典:逆徒(1913)〈平出修〉)

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普及版 字通 「奇」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 8画

[字音] キ・ギ
[字訓] かたがわ・あやしい・すぐれる

[説文解字]

[字形] 会意
(き)+口。口は祝詞を収める器の(さい)。は把手のある大きな曲刀。この曲刀を以て呵して祝の成就を求める意。字の立意は可と近く、可は柯枝を以て祝を呵してその成就を求める意。神の承認を求めることを可といい、奇はその系列の語である。〔説文〕五上に「異なり」と奇異の意とし、また「一に曰く、(偶)あらざるなり。大に從ひ、可に從ふ」とするが、大とは関係がない。奇は剞(きけつ)(彫刻刀)の形に従う。曲刀で不安定な形であるから奇邪の意となり、それよりして奇異・奇偉の意となる。

[訓義]
1. かたがわ、かたよる、まがる。
2. ことなる、あやしい。
3. すぐれる、ぬきんでる。
4. 偶あらざるもの、正常でないもの、かける、あまり。
5. いつわり、ひそか。

[古辞書の訓]
名義抄〕奇 アヤシフ・ミジカシ・メヅラシ・イツハル・マレナリ・アハレブ・タガフ・ナゲク・ヨル・オモテアラフ/數奇 サチナシ

[声系]
〔説文〕に奇声として・剞・・椅・寄・倚・騎・猗・掎・綺・畸・など二十字を収める。おおむね偏倚・奇異の意をもつ字である。奇は剞の象に従い、その曲刀が平衡を失した形であるから、その意を得たものであろう。畸は残田、はさきの鋭いすきである。

[語系]
奇・畸kiaiは同声。一定面積に配分したあとの半端な田地を畸という。畸人のようにも用いる。奇には偏る、傾く意があり、(危)ngiuai、俄ngaiや伎・妓gieなどと関係があろう。

[熟語]
奇異・奇意・奇・奇偉・奇逸・奇雲・奇穎・奇・奇縁・奇奥・奇果・奇貨・奇禍・奇瑰・奇懐・奇怪・奇観・奇巌・奇玩・奇気・奇奇・奇・奇鬼・奇・奇技・奇戯・奇伎・奇矯・奇曲・奇嶷・奇禽・奇句・奇遇・奇奇崛・奇形・奇計奇警奇譎・奇見奇険・奇言・奇古・奇・奇語・奇功・奇巧・奇好・奇行・奇狡・奇香・奇倖・奇・奇骨・奇才・奇材・奇策・奇士・奇思・奇姿・奇字・奇事・奇辞・奇識・奇疾・奇邪・奇・奇趣・奇樹・奇秀・奇羞・奇習・奇醜・奇術・奇儁・奇書・奇勝・奇峭・奇状・奇人・奇瑞・奇正・奇声・奇石・奇跡・奇節・奇説・奇絶・奇饌・奇羨・奇膳・奇相・奇想・奇態・奇談・奇・奇致・奇智・奇徴・奇珍・奇童・奇道・奇特・奇能・奇拝・奇薄・奇抜・奇秘・奇筆・奇表・奇品・奇服・奇伏・奇物・奇聞・奇文・奇兵・奇辟・奇僻・奇変・奇・奇峯・奇方・奇謀・奇鋒・奇木・奇味・奇妙・奇夢・奇薬・奇利・奇零奇嶺奇齢・奇麗奇弄・奇論
[下接語]
愛奇・偉奇・一奇・奇・英奇・雅奇・怪奇・奇・傀奇・瑰奇・魁奇・究奇・屈奇・見奇・好奇・高奇・残奇・辞奇・出奇・神奇・新奇・数奇・正奇・清奇・絶奇・擅奇・超奇・珍奇・伝奇・抜奇・秘奇・標奇・偏奇・幽奇・雄奇・用奇・離奇・猟奇

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