(読み)くすし

精選版 日本国語大辞典 「奇」の意味・読み・例文・類語

くすし【奇】

〘形シク〙
① 超自然的な霊異をつつしみうやまう気持でいい表わす語。不可思議である。神秘的である。霊妙である。あやしい。くし
続日本紀‐天平神護二年(766)一〇月二〇日・宣命「特に久須之(クスシク)(あや)しき事を思ひ議(はか)ること極まりて難し」
源氏(1001‐14頃)帚木吉祥天女を思ひかけむとすれば、法気(ほふげ)づき、くすしからむこそ、又わびしかりぬべけれ」
② 宗教的な霊異や禁忌などを、まじめに信仰し固く従っている。態度が神妙である。奇特である。また、一風変わった、かたくるしくまじめな態度についてもいう。
※枕(10C終)二九二「物忌くすしう、〈略〉などするものの名を姓(さう)にて持たる人のあるが」
くすし‐が・る
〘自ラ四〙

き【奇】

〘名〙
① (形動) めずらしいこと。思いがけないこと。ふしぎなさま。
※玉葉‐仁安元年(1166)一二月五日「右大将云、御幸未刻之由奉之、而于今遅々如何、為奇」
※めぐりあひ(1888‐89)〈二葉亭四迷訳〉一「何も角もさっぱりと呑込めない…それにしても余程奇な事だなア!」 〔戦国策‐秦策・孝文王〕
② (形動) 妙(たえ)で、すぐれていること。変わっていて興味深いさま。
※燈前夜話(15C後)下「西湖の景は雨にも奇なり。晴にも好し」 〔蘇軾‐飲湖上初晴後雨二首詩〕
③ 奇数(きすう)。二で割りきれない整数。はんぱ。⇔
四河入海(17C前)五「陽の数は奇也。一三五七九以上并二十五、奇はもののかたかたあるを云也」

し【奇】

〘形シク〙
① 奇異である。霊妙である。不思議である。→奇御魂(くしみたま)
※続日本紀‐天平神護元年(765)三月五日・宣命「天地の明けき奇(くしキ)(しるし)の授け賜ふ人は」
※己が罪(1899‐1900)〈菊池幽芳〉前「見よ環(たまき)眼光(まなざし)は一種常と異(かは)れる奇(ク)しき色をもて輝やけるなり」
② たぐいまれである。珍しい。→奇(く)しき奇(く)しくも

くすばし【奇】

〘形シク〙 不思議である。珍しい。くすし。
万葉(8C後)一九・四二一一「古に ありけるわざの 久須婆之伎(クスバシキ) 事と言ひ継ぐ 血沼壮士(ちぬをとこ) 菟原壮士(うなひをとこ)の」

くしき【奇】

連体〙 (形容詞「くし」の連体形から) 不思議な。神秘な。
逆徒(1913)〈平出修〉「思へば奇(ク)しき成行であった」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「奇」の意味・読み・例文・類語

き【奇】[漢字項目]

常用漢字] [音](漢) [訓]あやしい くし くすし あやに
普通とは違っている。珍しい。「奇異奇行奇習奇人奇抜奇妙好奇新奇珍奇
普通の知識では割り切れない。不思議だ。あやしい。「奇怪奇術怪奇伝奇猟奇
普通の程度をはるかに超えてすぐれている。「奇観奇才奇勝奇特
予想から外れた。思いがけない。「奇禍奇遇奇襲
二で割り切れない数。はした。「奇数
(「」の代用字)形が正常でない。「奇形
(「」の代用字)飾り立てて美しい。「奇麗
[名のり]あや・くす・すく・より
難読数奇屋すきや

き【奇】

[名・形動]珍しいこと。不思議なこと。また、そのさま。「事実は小説よりなり」
[類語]不思議不可思議不可解不審奇妙面妖めんようみょうへんなぞかい奇異奇怪幻怪怪奇怪異神秘霊妙霊異玄妙あやかしミステリーミステリアス奇天烈摩訶不思議けったいおかしい

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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