奇(読み)キ

デジタル大辞泉 「奇」の意味・読み・例文・類語

き【奇】[漢字項目]

[常用漢字] [音]キ(漢) [訓]あやしい くし くすし あやに
1 普通とは違っている。珍しい。「奇異・奇行・奇習・奇人・奇抜・奇妙/好奇・新奇・珍奇」
2 普通の知識では割り切れない。不思議だ。あやしい。「奇怪・奇術/怪奇・伝奇・猟奇」
3 普通の程度をはるかに超えてすぐれている。「奇観・奇才・奇勝・奇特」
4 予想から外れた。思いがけない。「奇禍・奇遇・奇襲」
5 二で割り切れない数。はした。「奇数」
6 (「畸き」の代用字)形が正常でない。「奇形」
7 (「綺き」の代用字)飾り立てて美しい。「奇麗」
[名のり]あや・くす・すく・より
[難読]数奇屋すきや

き【奇】

[名・形動]珍しいこと。不思議なこと。また、そのさま。「事実は小説より奇なり」
[類語]不思議・不可思議・不可解・不審・奇妙・面妖めんよう・妙みょう・変へん・異い・謎なぞ・怪かい・奇異・奇怪・幻怪・怪奇・怪異・神秘・霊妙・霊異・玄妙・あやかし・ミステリー・ミステリアス・奇天烈・摩訶不思議・けったい・おかしい

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精選版 日本国語大辞典 「奇」の意味・読み・例文・類語

き【奇】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ① ( 形動 ) めずらしいこと。思いがけないこと。ふしぎなさま。
    1. [初出の実例]「右大将云、御幸未刻之由奉レ之、而于レ今遅々如何、為レ奇」(出典:玉葉‐仁安元年(1166)一二月五日)
    2. 「何も角もさっぱりと呑込めない…それにしても余程奇な事だなア!」(出典:めぐりあひ(1888‐89)〈二葉亭四迷訳〉一)
    3. [その他の文献]〔戦国策‐秦策・孝文王〕
  3. ② ( 形動 ) 妙(たえ)で、すぐれていること。変わっていて興味深いさま。
    1. [初出の実例]「西湖の景は雨にも奇なり。晴にも好し」(出典:燈前夜話(15C後)下)
    2. [その他の文献]〔蘇軾‐飲湖上初晴後雨二首詩〕
  4. ③ 奇数(きすう)。二で割りきれない整数。はんぱ。⇔偶。
    1. [初出の実例]「陽の数は奇也。一三五七九以上并二十五、奇はもののかたかたあるを云也」(出典:四河入海(17C前)五)

くすし【奇】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙
  2. ① 超自然的な霊異をつつしみうやまう気持でいい表わす語。不可思議である。神秘的である。霊妙である。あやしい。くし。
    1. [初出の実例]「特に久須之久(クスシク)奇(あや)しき事を思ひ議(はか)ること極まりて難し」(出典:続日本紀‐天平神護二年(766)一〇月二〇日・宣命)
    2. 「吉祥天女を思ひかけむとすれば、法気(ほふげ)づき、くすしからむこそ、又わびしかりぬべけれ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)
  3. ② 宗教的な霊異や禁忌などを、まじめに信仰し固く従っている。態度が神妙である。奇特である。また、一風変わった、かたくるしくまじめな態度についてもいう。
    1. [初出の実例]「物忌くすしう、〈略〉などするものの名を姓(さう)にて持たる人のあるが」(出典:枕草子(10C終)二九二)

奇の派生語

くすし‐が・る
  1. 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙

くし【奇】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙
  2. ① 奇異である。霊妙である。不思議である。→奇御魂(くしみたま)。
    1. [初出の実例]「天地の明けき奇伎(くしキ)徴(しるし)の授け賜ふ人は」(出典:続日本紀‐天平神護元年(765)三月五日・宣命)
    2. 「見よ環(たまき)の眼光(まなざし)は一種常と異(かは)れる奇(ク)しき色をもて輝やけるなり」(出典:己が罪(1899‐1900)〈菊池幽芳〉前)
  3. ② たぐいまれである。珍しい。→奇(く)しき・奇(く)しくも

あや【奇・怪】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙 ( 「目もあや」の形で ) 見て不思議に思うさま。驚くばかりだ。
    1. [初出の実例]「いと、目もあやにこそ、清らに物し給ひしか」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
    2. 「急持ちて行きたるに律師目もあやに悦て」(出典:御伽草子・秋の夜の長物語(南北朝))

奇の語誌

上代の副詞「あやに」から転じたものか。「目も」を受ける用法に限られ、見て驚くさまを表わすのは同形語「あや(文=彩)」への類推があったか。多く、賛美する表現で用いられる。


くすばし【奇】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙 不思議である。珍しい。くすし。
    1. [初出の実例]「古に ありけるわざの 久須婆之伎(クスバシキ) 事と言ひ継ぐ 血沼壮士(ちぬをとこ) 菟原壮士(うなひをとこ)の」(出典:万葉集(8C後)一九・四二一一)

くしき【奇】

  1. 〘 連体詞 〙 ( 形容詞「くし」の連体形から ) 不思議な。神秘な。
    1. [初出の実例]「思へば奇(ク)しき成行であった」(出典:逆徒(1913)〈平出修〉)

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普及版 字通 「奇」の読み・字形・画数・意味

奇
常用漢字 8画

[字音] キ・ギ
[字訓] かたがわ・あやしい・すぐれる

[説文解字]

[字形] 会意
(き)+口。口は祝詞を収める器の(さい)。は把手のある大きな曲刀。この曲刀を以て呵して祝の成就を求める意。字の立意は可と近く、可は柯枝を以て祝を呵してその成就を求める意。神の承認を求めることを可といい、奇はその系列の語である。〔説文〕五上に「異なり」と奇異の意とし、また「一に曰く、(偶)あらざるなり。大に從ひ、可に從ふ」とするが、大とは関係がない。奇は剞(きけつ)(彫刻刀)の形に従う。曲刀で不安定な形であるから奇邪の意となり、それよりして奇異・奇偉の意となる。

[訓義]
1. かたがわ、かたよる、まがる。
2. ことなる、あやしい。
3. すぐれる、ぬきんでる。
4. 偶あらざるもの、正常でないもの、かける、あまり。
5. いつわり、ひそか。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕奇 アヤシフ・ミジカシ・メヅラシ・イツハル・マレナリ・アハレブ・タガフ・ナゲク・ヨル・オモテアラフ/數奇 サチナシ

[声系]
〔説文〕に奇声として・・・剞・・椅・寄・倚・騎・猗・掎・綺・畸・など二十字を収める。おおむね偏倚・奇異の意をもつ字である。奇は剞の象に従い、その曲刀が平衡を失した形であるから、その意を得たものであろう。畸は残田、はさきの鋭いすきである。

[語系]
奇・畸kiaiは同声。一定面積に配分したあとの半端な田地を畸という。畸人のようにも用いる。奇には偏る、傾く意があり、(危)ngiuai、俄ngaiや伎・妓gieなどと関係があろう。

[熟語]
奇異▶・奇意▶・奇▶・奇偉▶・奇逸▶・奇雲▶・奇穎▶・奇▶・奇縁▶・奇奥▶・奇果▶・奇貨▶・奇禍▶・奇瑰▶・奇懐▶・奇怪▶・奇観▶・奇巌▶・奇玩▶・奇気▶・奇奇▶・奇▶・奇鬼▶・奇▶・奇技▶・奇戯▶・奇伎▶・奇矯▶・奇曲▶・奇嶷▶・奇禽▶・奇句▶・奇遇▶・奇▶・奇崛▶・奇形▶・奇計▶・奇警▶・奇譎▶・奇見▶・奇険▶・奇言▶・奇古▶・奇▶・奇語▶・奇功▶・奇巧▶・奇好▶・奇行▶・奇狡▶・奇香▶・奇倖▶・奇▶・奇骨▶・奇才▶・奇材▶・奇策▶・奇士▶・奇思▶・奇姿▶・奇字▶・奇事▶・奇辞▶・奇識▶・奇疾▶・奇邪▶・奇▶・奇趣▶・奇樹▶・奇秀▶・奇羞▶・奇習▶・奇醜▶・奇術▶・奇儁▶・奇書▶・奇勝▶・奇峭▶・奇状▶・奇人▶・奇瑞▶・奇正▶・奇声▶・奇石▶・奇跡▶・奇節▶・奇説▶・奇絶▶・奇饌▶・奇羨▶・奇膳▶・奇相▶・奇想▶・奇態▶・奇談▶・奇▶・奇致▶・奇智▶・奇徴▶・奇珍▶・奇童▶・奇道▶・奇特▶・奇能▶・奇拝▶・奇薄▶・奇抜▶・奇秘▶・奇筆▶・奇表▶・奇品▶・奇服▶・奇伏▶・奇物▶・奇聞▶・奇文▶・奇兵▶・奇辟▶・奇僻▶・奇変▶・奇▶・奇峯▶・奇方▶・奇謀▶・奇鋒▶・奇木▶・奇味▶・奇妙▶・奇夢▶・奇薬▶・奇利▶・奇零▶・奇嶺▶・奇齢▶・奇麗▶・奇弄▶・奇論▶
[下接語]
愛奇・偉奇・一奇・奇・英奇・雅奇・怪奇・奇・傀奇・瑰奇・魁奇・究奇・屈奇・見奇・好奇・高奇・残奇・辞奇・出奇・神奇・新奇・数奇・正奇・清奇・絶奇・擅奇・超奇・珍奇・伝奇・抜奇・秘奇・標奇・偏奇・幽奇・雄奇・用奇・離奇・猟奇

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