定まった開花期以外に花が咲くことをさし、狂い咲きともいう。返り咲きは主として落葉樹に多いが、常緑樹でも花芽分化が早いものや、花芽分化の不安定な宿根草類にもよくみられる。
返り咲きは、葉腋(ようえき)に花芽が完成したあと、日照量が多くて気温が高く植物の養分や水分の吸収が盛んな時期に、物理的障害や生理的充足を受けることにより生ずる。こうした開花現象は、温度だけで生育する熱帯性・亜熱帯性の植物には少なく、普通は休眠期を要するものに多くみられる。落葉樹では物理的な作用でおこることが多い。とくに気温が高く日照の豊富な9月ごろに、台風や潮風などで葉が傷ついたり落ちたりして葉の役目をなさなくなると、生育途中のため、急激に新葉が伸びると同時に花芽も作動して開花する。常緑樹では、生理的作用で返り咲きを生じることが多い。常緑樹の多くは花芽分化が6、7月ごろに行われ、花芽の生育促進や生理的な条件が整う。したがって、灌水(かんすい)不足のため枝葉が萎縮(いしゅく)したときに水を十分与えられるなどの生理的条件を満たされることがあると、新葉と花芽が伸びて開花する。
秋に多くおこる返り咲きは、春のように満開になることがない。これは、炭酸同化作用によってつくられたデンプンが十分に糖化していないためであり、春に満開となる植物は、低温が長く続く冬の休眠期間を経過するためである。
返り咲きのよくみられるものは、ナシ、リンゴ、ウメ、サクラなどバラ科の落葉植物や、フジ、ツツジに多く、花芽分化の不安定なハマユウやウケザキクンシランなどにもよく生ずる。返り咲きの原理を利用して、花芽のできたユキヤナギ、ツツジなどは温度と湿度、日照を組み合わせて促成栽培が行われている。
[堀 保男]
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