隠れる(読み)カクレル

デジタル大辞泉 「隠れる」の意味・読み・例文・類語

かく・れる【隠れる】

[動ラ下一][文]かく・る[ラ下二]
物の陰になったり、さえぎられたりして見えなくなる。「月が雲間に―・れる」
身を人目につかないようにする。「物陰に―・れる」「親に―・れてたばこを吸う」
表面外部から見えないところに存在する。ひそむ。「事件の裏に―・れた謎がある」
(ふつう、「隠れた」の形で)世間に名前や力が知られないでいる。また、官職につかないで民間にいる。「―・れた人材を発掘する」「―・れた功績
世をのがれて、ひそむ。隠遁いんとんする。「山に―・れる」
高貴な人が死ぬ。現代ではふつう「お隠れになる」の形を使う。→おかくれ
「後二条関白殿…御年三十八にて遂に―・れさせ給ひぬ」〈平家・一〉
[類語](1まぎれる没する/(2ひそしのもぐまぎれる紛れ込む逃げ込む潜伏せんぷくする隠伏する韜晦とうかいする身を隠す・身をひそめる・人目を盗む人目を忍ぶ人目を憚る人目を避ける鳴りを潜める雲隠れ/(3ひそ伏在する潜在する潜在的水面下隠然秘める/(4知る人ぞ知る無名名も無い

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「隠れる」の意味・読み・例文・類語

かく・れる【隠】

  1. 〘 自動詞 ラ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]かく・る 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙
  2. 物の陰にはいったり、おおわれたりして、しぜんに見えなくなる。かくる。
    1. [初出の実例]「妹が門(かど)いや遠そきぬ筑波山可久礼(カクレ)ぬ程に袖は振りてな」(出典:万葉集(8C後)一四・三三八九)
    2. 「汐風真砂を吹上、雨朦朧として鳥海の山かくる」(出典:俳諧・奥の細道(1693‐94頃)象潟)
  3. 人目につかないような所にひそむ。また、逃げて姿を消す。
    1. [初出の実例]「伏(カクレたる)(つはもの)、多(さは)に起り」(出典:日本書紀(720)仁徳即位前(前田本訓))
    2. 「人の妻(め)のすずろなる物怨(ゑん)じしてかくれたるを」(出典:枕草子(10C終)一二五)
  4. 世間から離れて山里などに住む。隠遁(いんとん)する。隠居する。また、官職につかないで民間にいる。
    1. [初出の実例]「是(ここ)を以て、官(おほむつかさ)(すたるる)事無く、下(しも)に逸(カクルル)民無し」(出典:日本書紀(720)崇神一二年三月(北野本訓))
  5. 周囲の状況や他の物の影響などで、ある物事の存在が感じられなくなる。
    1. [初出の実例]「春の夜のやみはあやなし梅の花色こそ見えね香やはかくるる〈凡河内躬恒〉」(出典:古今和歌集(905‐914)春上・四一)
  6. 比喩的に、大きな力などに守られる。
    1. [初出の実例]「かうぶりなど得しまで、この御徳にかくれたりしを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)関屋)
  7. 死ぬ。多く高貴の人についていう。
    1. [初出の実例]「矢に中(あた)りて立(たちどころ)に死(カクレぬ)」(出典:日本書紀(720)神代下(水戸本訓))
    2. 「同廿七日、御年卅八にて遂にかくれさせ給ひぬ」(出典:平家物語(13C前)一)

隠れるの語誌

( 1 )もと四段活用で、奈良時代以前に下二段に転じたものと見られる。同様の変化を見たものに「忘る」「触る」がある。奈良時代におけるこれらの語の四段、下二段の並立に意味的対立を見ようとする説もあるが不明。
( 2 )意味、用法は現代語との隔たりを見いだすことができず、この語が日本語の中でも、きわめて基礎的な語であることを示している。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

ドクターイエロー

《〈和〉doctor+yellow》新幹線の区間を走行しながら線路状態などを点検する車両。監視カメラやレーザー式センサーを備え、時速250キロ以上で走行することができる。名称は、車体が黄色(イエロー)...

ドクターイエローの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android