潜る(読み)モグル

デジタル大辞泉 「潜る」の意味・読み・例文・類語

もぐ・る【潜る】

[動ラ五(四)]
水の中にくぐって入る。「海に―・る」
物の中や下に入り込む。「こたつに―・る」
人に知られないように身を隠す。特に、官憲の目を逃れて隠れひそむ。潜伏する。「地下に―・る」
[可能]もぐれる
[類語](1潜水潜行ダイビング/(3隠れる潜む忍ぶまぎれる紛れ込む逃げ込む潜伏せんぷくする隠伏する韜晦とうかいする身を隠す・身をひそめる・人目を盗む人目を忍ぶ人目を憚る人目を避ける逃げ隠れ鳴りを潜める雲隠れ

くぐ・る【潜る】

[動ラ五(四)]《古くは「くくる」とも》
物の下や狭い間・中を、姿勢を低くして通って向こう側へ出る。また、門やトンネルなどを通り抜ける。「暖簾のれんを―・って店に入る」「障害物競走ではしごを―・る」「校門を―・る」
水の中にもぐる。「海に―・って魚貝をとる」
簡単に通り抜けることができない所を巧みにごまかして通る。厳しい監視や規律などのすきをねらって事を行う。「法の網を―・る」
困難や危険の中を何とか切り抜けていく。「火炎を―・って脱出する」「砲煙弾雨の下を―・る」
[可能]くぐれる

むぐ・る【潜る】

[動ラ五(四)]もぐる」に同じ。
「つみたる藁の中に―・りて」〈魯文西洋道中膝栗毛

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「潜る」の意味・読み・例文・類語

くぐ・る【潜】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙 ( 古くは「くくる」 )
  2. 物の下やすき間など、狭い空間を通り抜ける。
    1. (イ) 漏れて出る。漏れ出るように狭い空間を流れる。
      1. [初出の実例]「しきたへの枕ゆ久久流(ククル)涙にそうき寝をしける恋の繁きに」(出典万葉集(8C後)四・五〇七)
      2. 「ミヅ イワノ シタヲ cuguru(クグル)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    2. (ロ) 狭い空間を身をかがめて、また、身をかがめるようにして通る。
      1. [初出の実例]「傍のつぼねの壁のくづれよりくぐりて逃しやりて」(出典:金葉和歌集(1124‐27)雑上・五六三・詞書)
    3. (ハ) 多くの物事の間を、縫うように、また、すり抜けるように通る。
      1. [初出の実例]「寒暑を潜(クク)て物を化す」(出典:大慈恩寺三蔵法師伝永久四年点(1116)六)
      2. 「網の目をくぐってあるく娵(よめ)の礼」(出典:雑俳・柳多留‐一(1765))
  3. 水や土の表面に出ないようにして進む。
    1. [初出の実例]「水泳(くくる)珠に混じれる磯貝の片恋のみに年は経につつ」(出典:万葉集(8C後)一一・二七九六)
    2. 「地の中に潜(クク)り、穴ほて空に入りて」(出典:大慈恩寺三蔵法師伝永久四年点(1116)四)
  4. 門を通り抜ける。
    1. [初出の実例]「寺の山門をくぐったその日から」(出典:夜明け前(1932‐35)〈島崎藤村〉第一部)
  5. 他の気づかないところをねらって事をする。
    1. (イ) 弱点欠点油断などに乗じて、うまく事を運ぶ。
      1. [初出の実例]「よい工合に法律の下を潜(クグ)って居るのである」(出典:東京学(1909)〈石川天崖〉二四)
      2. 「その網の目をくぐって一寸一寸(ちょいちょい)寄合をつけた」(出典:大寺学校(1927)〈久保田万太郎〉四)
    2. (ロ) 先まわりして考える。心を読む。
      1. [初出の実例]「ゆがみゆく君の心をくぐり見てたえず恨はありどをし哉」(出典:狂歌・吾吟我集(1649)六)
  6. 困難な状態や危険にさらされながら過ごす。困難や危険の中を、切り抜けていく。
    1. [初出の実例]「明日をも知れぬ危険を潜ってゐるんだといふことを」(出典:故旧忘れ得べき(1935‐36)〈高見順〉六)

潜るの語誌

( 1 )上代文献では第二音節も清音で「くくる」の語形である。平安末頃には、「くくる」と「くぐる」の両形が存したらしい。
( 2 )平安朝の仮名散文では、(イ)意味は主に「漏る」(四段)によって表わされていたようである。
( 3 )「くぐ」については「くぐまる」「くぐもる」や「くぐせ」「たにぐく」などとの関係が考えられる。


もぐ・る【潜】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
  2. 水中にくぐり入る。くぐる。
    1. [初出の実例]「然れどもめだかは常に水面に浮び游ぎて、水中に深く潜り入ること莫し」(出典:幼学読本(1887)〈西邨貞〉六)
  3. 物の中や下に入り込む。中にはいってかくれひそむ。
    1. [初出の実例]「鳥は殆く墜やうとして、〈略〉もぐるやうにして、辛じて林の際まで漕付」(出典:めぐりあひ(1888‐89)〈二葉亭四迷訳〉一)
  4. 法を犯してひそかに物事を行なうために、社会の表面からかくれる。
    1. [初出の実例]「弾圧がはげしいから、機関に就いた労働者はどうしてももぐらなくてはならない事情もある」(出典:故旧忘れ得べき(1935‐36)〈高見順〉六)

こぐ・る【潜】

  1. 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙 ( 「くぐる」の変化した語 ) 低い所や狭い所を、からだをまげて通り抜ける。また、水の中や土の中などにはいる。
    1. [初出の実例]「そろそろと野ばなれへ出る猫の音 山がらこくるあし付の盆〈一伊〉」(出典:俳諧・鷹筑波(1638)四)

むぐ・る【潜】

  1. 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙もぐる(潜)
    1. [初出の実例]「灯籠の人を禿はむぐって出」(出典:雑俳・柳多留‐初(1765))

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