〘連語〙
[一] (代名詞「なに」に助詞「か」の付いたもの)
① (「か」は係助詞) 不特定のものを指示し、疑問・反語表現に用いる。どのようなものが(…するだろうか)。どんなことを(…することがあろうか)。
※
書紀(720)斉明四年五月・
歌謡「今城なる
小山が上に 雲だにも 著くし立たば 那爾柯
(ナニカ)嘆かむ」
※古今(905‐914)雑下・九三三「世の中はなにか常なるあすか川昨日の淵ぞ今日は瀬になる〈よみ人しらず〉」
② (「か」は副助詞) 明確には指定できないが、確かに存在する、または、存在し得る事物・事態を示す。指定することをさけていう場合もある。なにがしか。また、多く、「…やなにか」「…かなにか」の形で、それそのものではないが、それに類するもの、の意でも用いる。→助詞「
なんか」。
※宇治拾遺(1221頃)一一「いかにかくはあつまる。なにかあらん様のあるにこそ、あやしきことかな」
※
夜明け前(1932‐35)〈
島崎藤村〉第一部「諸大人のために何かの役に立ちに行くといふことは」
③ (「か」は副助詞) ある事物・事態を指定しえないまま、しかるべき
ことばを模索する気持を表わす。どう言えばいいか。どう形容したらよいか。
※虎寛本狂言・茫々頭(室町末‐近世初)「何か内裏女臈と見へまして、
芥子の花を餝た様に大勢参られまするによって」
※洒落本・
遊子方言(1770)
発端「あれは何かおかしなもので、御座りますぞへ」
[二] (副詞「なに」に助詞「か」の付いたもの)
① (「か」は係助詞) 原因・理由を問い、疑問・反語表現に用いる。どうして(…することがあろう)。なぜ(…するのか)。
※
万葉(8C後)八・一四八七「霍公鳥
(ほととぎす)思はずありき木の暗
(くれ)の斯くなるまでに
奈何(なにか)来鳴かぬ」
※太平記(14C後)一八「何か苦く候べき。御息所を忍で此へ入進(まゐら)せられ候へとて」
② (「か」は副助詞) 原因や動機が不明のままある事態が成り立った時、それ以上詮索せず不明の原因として指示するのに用いる。どういうわけか。どういう風の吹きまわしか。
※浮世草子・本朝桜陰比事(1689)四「おのづから町人形気になりて人皆心をゆるし、勝手までも出入するに、何か見かぎらるる事もなし」
[三] (代名詞「なに」に係助詞「か」の付いたもの。感動詞のように用いて)
① 相手の発言が、納得できなかったり、誤解を含んでいると思われたりする時に、相手の発言をさえぎる気持を表わす。どうしてどうして。とんでもない。
※竹取(9C末‐10C初)「なにか、心もなくて侍らんにふとみゆきして御覧ぜん御覧ぜられなんと奏すれば」
② 相手のことばや気持を、確認しようとする気持を表わす。つまり(…なのだな)。要するに(…のつもりなのか)。
※浄瑠璃・関取千両幟(1767)二「むむ、そんなら何か。踏まれても撲たれても、言分ないといふのか」