デジタル大辞泉 「何」の意味・読み・例文・類語

か【何】[漢字項目]

[音](漢) [訓]なに なん いずれ なんぞ
学習漢字]2年
〈カ〉物事を問いただす疑問詞。「幾何誰何すいか無何有むかう
〈なに〉「何事何分何者何故
〈なん〉「何回何時なんじ何時なんどき何人なんにん何人なんぴと
[名のり]いず
難読如何いかが如何いかん如何どう奈何いかん幾何いくばく何処いずこ何処どこ何時いつ何所どこ何方どちら何方どっち何方どなた何故なぜ何某なにがし何卒なにとぞ何為なにをかなす何為者なんするものぞ

なに【何】

[代]不定称の指示代名詞。はっきりしない事物について問う語。また、事物・人などをぼかしてさす語。「おやつにはをあげようか」「おい、例のを持ってきてくれ」
「―は来ねえか。蜂の野郎は」〈滑・浮世床・初〉
[副]
(下に打消しの語を伴って)否定の気持ちを強める。何一つとして。少しも。「不自由なく暮らす」
なぜ。どうして。
「見渡せば山もと霞むみなせ川夕べは秋と―思ひけむ」〈新古今・春上〉
[感]
心外である、信じられないという気持ちで、強く問い返すときに発する語。「、彼が犯人だと」
意に介さない、懸念するに及ばないという気持ちを表すときに発する語。なんの。いや。「、ちょっとしたことさ」
相手に怒りを感じて発する語。「、もう一度言ってみろ」
[類語]なにかなにかしらなになにこれこれこうこうかようこんなこういうこのようかかるこう斯く斯くしかじか

なん【何】

[代]なに」の音変化。「それをにするつもりか」「とも言えない」
[接頭]名詞または名詞に準じる語に付いて、数量・程度などが疑問または不定であることを表す。「回」「キロ」

な【何】

[代]なに」の音変化。または「なん」の撥音の無表記。
「あなうたてや、こは―ぞ」〈・宿木〉

いず〔いづ〕【何】

[代]不定称の指示代名詞。どこ。上代東国方言という。
多由比潟たゆひがた潮満ち渡る―ゆかもかなしき背ろが我がり通はむ」〈・三五四九〉
[補説]接尾語などを伴って、「いずく」「いずち」「いずれ」などの不定称代名詞をつくる。

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精選版 日本国語大辞典 「何」の意味・読み・例文・類語

なに【何】

  1. [ 1 ] 〘 代名詞詞 〙
    1. 特定の事物を、実体や内容の不明な、または、未定なものとしてさす。疑問表現に用い、応答の場合は感動詞にも近づく。どういうもの。どういうこと。
      1. [初出の実例]「家に行きて奈爾(ナニ)を語らむあしひきの山霍公鳥(やまほととぎす)一声も鳴け」(出典:万葉集(8C後)一九・四二〇三)
      2. 「『里見さん』と云った。『なに』と答えた」(出典:三四郎(1908)〈夏目漱石〉一〇)
    2. 不特定の事柄を、観念的に指示する。あらゆるものの中の一つ。すべてのものの中のどれか。
      1. [初出の実例]「山峡に咲ける桜をただひと目君に見せてば奈爾(ナニ)をか思はむ」(出典:万葉集(8C後)一七・三九六七)
      2. 「何を見込みに此様に可愛ひぞと」(出典:浄瑠璃・夕霧阿波鳴渡(1712頃)中)
    3. 特定の事物・事態を、問題にするに価しないものと判断して、実質的価値の疑わしいものとして指示する。「何なり」の形で用いることが多い。どんなねうちのもの。
      1. [初出の実例]「さだめなくきえかへりつる露よりもそらだのめする我はなになり」(出典:蜻蛉日記(974頃)上)
    4. 特定のものの名称が思い出せない時、またはそれを指定する必要のない時に、とりあえず仮に指示する。しかじか。例のあれ。
      1. [初出の実例]「なにのみこくれの源氏などかぞへたまひて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)乙女)
      2. 「行て来べい、ヲヲほんに。何(ナニ)は来ねへか。蜂の野郎は」(出典:滑稽本・浮世床(1813‐23)初)
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙 非難すべき事。なんということ。「なに(を)いう」「なに(を)する」の形で用いる。
    1. [初出の実例]「アア何なんすぞいな。こそばいわいな」(出典:洒落本・陽台遺編(1757頃)秘戯篇)
  3. [ 3 ] 〘 副詞 〙
    1. 原因や動機が不明なときの、納得のゆかない気持を表わす。どうしてまた。どういうわけで。
      1. [初出の実例]「春霞なにかくす覧さくら花ちるまをだにも見るべき物を〈紀貫之〉」(出典:古今和歌集(905‐914)春下・七九)
    2. 自分の判断や意志に反するものを、拒否する気持を表わす。いや、まったく。何か。
      1. [初出の実例]「住みうかれたる古里の、松かぜ寒きよもすがら、ねられねば夢もみず。何おもひでの有べき」(出典:車屋本謡曲・鉢木(1545頃))
  4. [ 4 ] 〘 感動詞 〙
    1. 相手の言語・行動や、前の文脈の事柄を否定し、反発する気持を表わすことば。
      1. (イ) 軽く否定する。いや。
        1. [初出の実例]「『後といはず呑なせへナ』『ナニ、よさっしゃりまし』」(出典:洒落本・道中粋語録(1779‐80頃))
      2. (ロ) 強くとがめる。なんだと。
        1. [初出の実例]「なに、このぢぢむさあまめ」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二)
    2. 予想外の事態に気付いたり、驚いたりする気持を表わすことば。
      1. [初出の実例]「そなたへ年のころ廿ばかり成女は行ぬか。何、ゆかぬ」(出典:虎寛本狂言・法師が母(室町末‐近世初))
    3. 人に呼びかける時のことば。
      1. [初出の実例]「何、銀兵衛殿、今日伴れ参た大橋とやらは、御僉儀(ごせんぎ)遂げられたかな」(出典:歌舞伎・幼稚子敵討(1753)口明)

何の補助注記

漢字で「何」と書かれたものは、「なに」か「なん」かはっきりしないが、助詞助動詞などと複合した場合、口頭語としては「なん」の形が多い。→なん(何)


どれ【何】

  1. [ 1 ] 〘 代名詞詞 〙 不定称。限定できない場所、人、事柄などについていうことば。
    1. 場所をさす。どこ。
      1. [初出の実例]「比叡の山はどれより」(出典:義経記(室町中か)三)
    2. 人をさす。だれ。
      1. [初出の実例]「天人でもあれ仙人化人でもあれ、どれが説とも化教とは云べし」(出典:六物図抄(1508))
      2. 「とれぞこしもと衆の内をひとり馬にして」(出典:狂言記・人馬(1730))
    3. 限られた範囲の中からあるものを選択していう語。いずれ。
      1. [初出の実例]「熊野へ参るには、紀路と伊勢路のどれ近し、どれ遠し」(出典:梁塵秘抄(1179頃)二)
  2. [ 2 ] 〘 感動詞 〙
    1. 状況に応じて、改めて行動をおこすときなどに発する語。
      1. [初出の実例]「どれおこせひ」(出典:虎明本狂言・若市(室町末‐近世初))
      2. 「どれ、見せさっしゃれ」(出典:狂言記・末広がり(1660))
    2. どうれ
      1. [初出の実例]「『物もう』『どれ』」(出典:咄本・軽口御前男(1703)四)

なん【何】

  1. [ 1 ] 〘 代名詞詞 〙 「なに(何)」の変化した語。助詞、助動詞などと複合して用いられ、口頭語としては「なに…」の形より「なん…」の形の方が多い。「なんじゃ」「なんだ」「なんぞ」「なんと」「なんの」「なんて」「なんで」「なんらか」など。それぞれ副詞や感動詞としても用法が多いのでそれぞれ項目を分けて扱った。
  2. [ 2 ] 〘 感動詞 〙なに(何)[ 四 ]
    1. [初出の実例]「な、な、何(ナン)、大丈夫だ、大丈夫だ」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前)
  3. [ 3 ] 〘 接頭語 〙 名詞について、数・量・程度・時間などが疑問であること、または不定であることを表わす。比較的多くは、字音語について用い、「幾(いく)」と対応する。「何回」「何百」「何時(なんじ・なんどき)」など。
    1. [初出の実例]「毛詩にも一篇の詩のおくに此の詩はなん章と章の数をあげたぞ。その章になん句と句の数をもあげたぞ」(出典:玉塵抄(1563)一五)

など【何】

  1. 〘 副詞 〙 ( 「なにと」の変化したもの ) どうして。何故に。なぜ。
  2. (イ) 疑問表現に用いる場合。
    1. [初出の実例]「あめつつ 千鳥ま鵐(しとと) 那杼(ナド)(さ)ける利目(とめ)」(出典:古事記(712)中・歌謡)
    2. 「はるはる御出ましてなど我に言葉もかけたまはぬは」(出典:浮世草子・好色二代男(1684)七)
  3. (ロ) 結びの表現を省略して、感動詞的に用いる場合。
    1. [初出の実例]「かかる人をここかしこに落しおき給て、など寝殿の御まじらひは」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕霧)
  4. (ハ) 反語表現に用いる場合。
    1. [初出の実例]「かく、数ならぬ身を、見もはなたで、などかくしも思ふらん」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)

なじょうなでふ【何】

  1. [ 1 ] 〘 連体詞 〙なんじょう(何━)[ 一 ]
    1. [初出の実例]「こは、なでうことをの給ぞ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
  2. [ 2 ] 〘 副詞 〙なんじょう(何━)[ 二 ]
    1. [初出の実例]「みれば、せけん心ぼそく哀に侍る。なてう物をかなげき侍るべき」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))

いずいづ【何】

  1. [ 1 ] 〘 代名詞詞 〙 上代東国方言。不定称。場所を表わす。どこ。
    1. [初出の実例]「多由比潟(たゆひがた)潮満ちわたる伊豆(イヅ)ゆかも愛(かな)しき背ろが吾(わ)がり通はむ」(出典:万葉集(8C後)一四・三五四九)
  2. [ 2 ] 〘 造語要素 〙 接尾語または形式的な名詞と結合して、場所、方角に関する不定称代名詞をつくる。「いづく」「いづち」「いづれ」「いづこ」

あん【何】

  1. 〘 代名詞詞 〙 「なん(何)」の変化した語。→あんだあんたるあんでも
    1. [初出の実例]「うったまげたの何(アン)のじゃアねへ」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前)

な【何】

  1. 〘 代名詞詞 〙 「なに」の変化した形、または、「なん」の撥音の表記されない形。→なぞなど
    1. [初出の実例]「酬い対へむとするに暇あらず。何(ナ)の功あてか論を作らむ」(出典:大唐西域記長寛元年点(1163)三)

あに【何】

  1. 〘 代名詞詞 〙 「なに(何)」の変化した語。関東近辺でいう。
    1. [初出の実例]「あにをいわしゃる」(出典:洒落本・呼子鳥(1779)やました八景)

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普及版 字通 「何」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 7画

[字音]
[字訓] になう・なに・いずく

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 形声
声符は可(か)。〔説文〕八上に「(にな)ふなり」とあり、荷担する意。〔詩、商頌、玄鳥〕「百祿を是れ何(にな)ふ」、〔詩、商頌、長発〕「天の休(たまもの)を何(にな)ふ」とあり、古くは何をその義に用いた。卜文の字形は戈(ほこ)を荷(にな)うて呵する形に作り、呵・(荷)の初文。金文にに作る形があり、顧みて誰何(すいか)する形。のち、両字が混じてひとつとなったものであろう。

[訓義]
1. になう。のち荷に作る。
2. は顧みて問い、なじる形。なに、なんぞ、いかんぞ。
3. 疑問詞に用いる。いずれ、いずく、いくばく。
4. 上を承けて理由説明的にいう。なんとなれば。

[古辞書の訓]
名義抄〕何 ニナフ・オホセリ・ナニ・ナゾモ・ナゾヤ・ナゾ・イヅクソ・イカニ・イヅレ・コレ・ニハカ・ツクル・カス/云何 イカム・イカムシテカ・イカナルヲカ・ココニナゾ

[声系]
〔説文〕に何声としてを収める。何は戈を負う形。のち何の字にを用いる。

[語系]
何hai、曷・(害)hat、盍hap、胡haは声近く、みな疑問詞に用いる。何の金文のは顧みて神に責問すること、曷は(かい)(人の屍骨)に曰(祝詞)を加えて、祈る呪儀を示す字で、疑問詞としての原義をもつ字である。

[熟語]
何若・何如・何奈・何在・何許・何処・何与・何所・何時・何校・何誰・何有・何以・何為・何遽・何渠・何・何必・何不・何其・何居・何也・何則・何故・何人
[下接語]
伊何(いかん)・謂何(いかんなにとかいはん)・云何(いかん)・幾何(いくばく)・如何(いかん)・誰何(すいか)・那何(いかん)・奈何(いかん)・無何(いくばくもなく)

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