瓦斯(読み)ガス

精選版 日本国語大辞典 「瓦斯」の意味・読み・例文・類語

ガス【瓦斯】

〘名〙 (gas 「瓦斯」はその音訳字)
① (広く)気体状の物質。特に、爆発の危険性や毒性のあるものについていう場合が多い。
植学啓原(1833)三「又有瓦斯(ガス)、貯植液於玻瓈壜、密塞其口、瓦斯強欲散逸、壜往々破裂」
舎密開宗(1837‐47)内「諳模尼亜(アムモニア)の本相は瓦斯なり」
石炭ガス天然ガス、プロパンガス等の燃料用ガス。特に、ガス会社からガス管によって各戸に供給される都市ガスをいう。
※雪後(1926)〈梶井基次郎〉二「水道や瓦斯(ガス)のない不便さに」
③ 「どくガス(毒━)」の略。「ガスマスク」「ガス室」
④ 霧。
(イ) (北海道の海岸地方で)海の方からやってくる濃い霧。《季・夏》
※断橋(1911)〈岩野泡鳴〉一一「その間に、ガス深い釧路まで行って見たくなった」
(ロ) 海にかかる霧。海霧(かいむ)
※或る女(1919)〈有島武郎〉前「重い冷たい潮霧(ガス)が野火(のび)の煙のやうに濛々と南に走って」
(ハ) 山にかかる霧。おもに登山者がいう語。
※山峡風物誌(1948)〈井伏鱒二〉「富士山を見に来なすったんだらうが、このガスでは、今日はもう見えないよ」
⑤ 消化器内にたまった気体。おなら。屁(へ)
※満韓ところどころ(1909)〈夏目漱石〉一「そのうち胃の処が瓦斯か何かで一杯になった」
⑥ 「ガスとう(━灯)」の略。
※頭書大全世界国尽(1869)〈福沢諭吉〉三「夜は三十六万の瓦斯(ガス)の燈火燿きて」
⑦ 「ガスいと(━糸)」の略。
破垣(1901)〈内田魯庵〉一「なにしろ瓦斯だって糸が交(はい)ってるから柄も好いし二両は出るだらう」
※桑の実(1913)〈鈴木三重吉〉二四「お茶を入れるためのお湯を瓦斯にかけた」
⑨ (爆発するところから) 怒りのことば。しかることば。こごと。
※落語・蛇の目の傘(1900)〈初代三遊亭金馬〉「叱言(ガス)の出ないうちに、早く逃亡(かけおち)すリャア宜かった」
ガソリンをいう。「ガス欠(けつ)
※黒い環(1967)〈石原慎太郎戸倉「車に乗っていず、ガスを買いそうにもない俺に向って」
[語誌](1)ベルギーの科学者ファン=ヘルモント一五七九‐一六四四)の造語で、ギリシア語のカオス(khaos 混沌の意)を基にしたといわれている。
(2)日本への紹介は、江戸時代末期の蘭学者による。最も早い時期の例としては挙例の「植学啓原」「舎密開宗」があり、大気とは区別される気体としてとらえられている。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「瓦斯」の意味・読み・例文・類語

ガス【瓦斯】

気体。「ガス状星雲」
燃料用の気体。特に、都市ガスのこと。「ガスを引く」「ガス管」
毒ガス」の略。「ガスマスク」
濃い霧。「山頂付近にガスがかかる」
ガソリンのこと。「ガス欠」
ガス焜炉こんろ」の略。「鍋をガスにかける」
ガス糸」の略。
おなら。
[類語](1気体液体固体固形かたまり剛体弾性体溶液水溶液粘液廃液乳液原液薬液流動物流動体流体液汁汁液しるつゆリキッド3スモッグ光化学スモッグ朝靄夕靄夕煙雲霞朝霞夕霞春霞煙霞

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