略称DNA.デオキシリボヌクレオシドの糖(デオキシリボース)の3′,5′位がリン酸のジエステル結合によって鎖状につながった重合体である.DNAを構成している塩基は,通常4種類で,プリンとしてはアデニン(A),グアニン(G),ピリミジンとしてはシトシン(C),チミン(T)であるが,高等生物ではそのほか微量塩基も含まれている場合もある.チミンの存在はDNAに典型的なものである(リボ核酸はそのかわりにウラシルを含んでいる).DNAに共通な化学組成の特徴として,E. Chargaffによって見いだされたように,AとT,GとCのモル比は1:1であるから,ピリミジンとプリン塩基はつねに等しく存在している.したがって,個々の生物のDNAの化学組成は,G+Cのモル百分率含量によって特徴づけられる.DNAの立体構造はワトソン-クリックのDNAモデルに示されるように,共通の中心軸のまわりに2本鎖が,らせん状によじれ合った二重らせん構造をとっている.2本の鎖は,A-T,G-Cの水素結合によって塩基対を形成している.したがって,DNAの1本は他方とは相補的塩基配列を形成している.通常,DNAは波長260 nm に吸収極大をもつ.DNAは遺伝情報の担い手で,染色体上に局在している.通常は2本鎖で,その半保存的複製により遺伝情報が子孫へ正しく伝えられるが,特殊なウイルスは1本鎖DNAをもつものもある.いずれの場合も,DNA遺伝情報はRNAへ転写されることによって発現される.そのほか,細胞核以外に存在するsatellite DNAがあり,これはオルガネラ,エピソーム中に含まれ,おそらく核のDNAとは別個に自己増殖していると思われている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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※「デオキシリボ核酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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