梓川(読み)アズサガワ

デジタル大辞泉 「梓川」の意味・読み・例文・類語

あずさ‐がわ〔あづさがは〕【梓川】

長野県中西部を流れる川。槍ヶ岳に源を発し、上高地を経て松本盆地奈良井川と合流して犀川さいがわとなる。長さ77キロ。

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精選版 日本国語大辞典 「梓川」の意味・読み・例文・類語

あずさ‐がわあづさがは【梓川】

  1. 長野県中西部を流れる犀(さい)川の上流部。槍ケ岳に源を発し、上高地をへて松本市奈良井川と合流するまでをいう。

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日本歴史地名大系 「梓川」の解説

梓川
あずさがわ

やりヶ岳・大天井おおてんじよう岳・東天井ひがしてんじよう岳・穂高ほたか岳・大滝おおたき山などに源を発し、槍沢・また谷・一ノ俣谷・横尾よこお谷・徳沢とくさわを合わせて上高地かみこうちに下り、乗鞍のりくら岳・霞沢かすみざわ岳・野麦のむぎ峠・鉢盛はちもり山・徳本とくごう峠・大滝山などから発する川・まえ川・霞沢・川・大白おおしら川・水殿みどの川・くろ川・島々しましま谷を合わせて松本平に出て、梓川扇状地を形成し、奈良井ならい川との合流点までを梓川と称する。全長約六五キロ。

「延喜式」に大野おおの牧があり、仁和寺の貞観九年(八六七)の田地目録によると、筑摩郡に大野庄があり、南安曇みなみあずみ郡の安曇村に大野田・大野川の地名のあることから原初的には大野を流れる川、すなわち大野川といっていたのではないかと思われる。梓川の呼称の初見は、「三代実録」貞観九年の梓水あずさがわ神であり、川としての梓川の初見は、慶長一六年(一六一一)成立した「二木家記」である。「晴信公の先手馬場美濃・飯富兵部両人さみその瀬梓川を越、西牧ひとつに成て長時公へ掛るよし申来る」と記されている。

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改訂新版 世界大百科事典 「梓川」の意味・わかりやすい解説

梓川 (あずさがわ)

長野県西部の川。信濃川の最大の支流である犀(さい)川の主要支流。槍ヶ岳に源を発し,北アルプスの奥山と前山の間を南流して,松本盆地に出る。ここからは北流して,松本盆地の中央部で,木曾地方から流れてくる奈良井川と合流して犀川となる。北アルプスを刻んで流れる梓川の渓谷美は日本でも一流で,上高地大正池をはじめ,多くの景勝地に恵まれて,中部山岳国立公園を代表する地域になっている。

 槍ヶ岳に発した梓川は,穂高連峰の東麓を流れ,徳沢付近で谷の幅がやや広くなり,明神岳南麓には穂高神社の奥宮がある明神池がある。さらに小梨平や上高地にまで下ると,梓川の河谷は広くなり,多くの宿泊施設がある。1915年(大正4)6月焼岳が大爆発して,大量の泥流を押し出して,梓川をせき止めたため,霞沢岳と焼岳との間に40km2の大正池が出現した。その後焼岳の噴出した火山物質が池を埋没して,現在その面積は半減している。梓川水系の電源開発は,20年代から進められて,有効落差450mをもつ霞沢発電所をはじめ多くの発電所が建設された。第2次世界大戦後堤高155mの奈川渡ダムをはじめ水殿(みどの),稲核(いねこき)の大ダムが設けられて,梓川の中流以下の景観は一変した。揚水式発電によって梓川水系では最大出力96万kW(1997)を発電,京浜地方に送電している。なお稲核ダムで引水した中信平農業用水事業によって,松本盆地南部1万haの灌漑がなされている。梓川水系には,上高地,中房,坂巻,白骨(しらほね)などの温泉も多い。松本盆地に出た梓川は,半径9kmにもおよぶ扇状地をなすが,盆地を構成する扇状地群の中では最大で,堆積した古生層の土壌は肥沃なため耕地化が進んでいる。
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梓川(旧村) (あずさがわ)

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百科事典マイペディア 「梓川」の意味・わかりやすい解説

梓川【あずさがわ】

長野県西部,飛騨山脈の槍ヶ岳東方に発し,松本盆地に扇状地をつくり,奈良井川と合し犀(さい)川となる。長さ77km。古代には梓水神が祀られ,江戸時代には洪水の記録が少なくない。清澄な流れの上流には上高地大正池がある。川沿いに国道158号が通じ,奈川渡(ながわど)ダム,登山基地の島々がある。
→関連項目明科[町]犀川常念岳徳本峠波田[町]焼岳

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「梓川」の意味・わかりやすい解説

梓川(旧村名)
あずさがわ

長野県中西部、南安曇郡(みなみあずみぐん)にあった旧村名(梓川村(むら))。現在は松本(まつもと)市の中央部を占める。2005年(平成17)松本市に編入。旧村域は松本盆地西部に位置する。梓川と黒沢川の扇状地上にあり、乏水地のため大正時代まではアカマツ林が多かった。その後、桑畑が増え、現在はリンゴ、モモが多くなり、水稲果樹の産地になった。梓川が松本盆地へ流出する出口にある八景山(やけやま)地区は梓川谷からの牛による駄賃かせぎで知られていた。運搬荷物は材木、ワラビ粉が主であった。国指定重要文化財の阿弥陀如来(あみだにょらい)を有する真光寺(しんこうじ)や、本殿が国指定重要文化財の大宮熱田神社、若宮八幡宮(はちまんぐう)がある。

[小林寛義]


梓川(川)
あずさがわ

長野県中西部を流れる川。犀川(さいがわ)の支流。槍ヶ岳(やりがたけ)南東側斜面の槍沢雪渓などを源頭として流出し、上高地(かみこうち)を経て、島々(しましま)地区で松本盆地に出、松本市北方で奈良井川(ならいがわ)と合流し犀川となる。延長77キロメートル。島々までは上高地の小盆地を除き、深い侵食谷を形成し、この谷が松本から高山や上高地への唯一の通路になっている。勾配(こうばい)が急で峡谷のため水力発電に利用され、中流には1970年(昭和45)完成の奈川渡ダム(ながわどだむ)(梓湖)、下流には水殿(みどの)、稲核(いねこき)ダムが続く。松本盆地では広い扇状地を形成し、水田地をなす。

[小林寛義]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「梓川」の意味・わかりやすい解説

梓川
あずさがわ

長野県西部を流れる川。全長 77km。飛騨山脈の槍ヶ岳に源を発し,上高地を貫流,松本盆地に出て,北流する奈良井川と合流して犀川となる。上流の上高地では明神池,大正池などの景勝地が多い。その下流では壮年期の深い渓谷をなし,1925年以来多くの発電所が建設されたが,なかでも奈川渡ダムをはじめ,水殿 (みどの) ,稲核 (いねこき) の3ダムは,日本最初の連結式ダムとして知られる。島々から下流では,松本盆地に広い扇状地を形成。上流部は中部山岳国立公園に属する。川に沿って国道 158号線 (野麦街道) が通る。

梓川
あずさがわ

長野県中西部,松本市中央に位置する旧村域。松本盆地の西部,梓川の左岸にある。 1955年梓村と倭村が合体して梓川村が成立。 2005年松本市に編入。西半は山地であるが,東半は梓川の扇状地で,おもに果樹・野菜栽培が行なわれる。各所に道祖神がある。

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