キジ

  • pheasant
  • きじ / 雉

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

(1) Phasianus colchicus; common pheasant キジ目キジ科。雄の全長は 70~80cmだが,尾羽が 35~40cmを占める。カフカスからトルキスタンモンゴル中国朝鮮半島,ウスリー,アムール地方にかけてのユーラシア大陸の中部から東部の温帯域と,タイワン(台湾),日本に広く分布する。ヨーロッパや北アメリカなどには移入されている。原産地では雄の羽色の相違によって約 30の亜種に分類される。日本では国鳥とされ,キタキジ P. c. robustipes本州北部と佐渡島に分布),トウカイキジ P. c. tohkaidi(本州中・西部,四国地方に分布),キュウシュウキジ P. c. versicolor山口県瀬戸内海沿岸,九州地方五島列島に分布),シマキジ P. c. tanensis伊豆半島三浦半島伊豆七島天草諸島屋久島種子島に分布)の 4亜種がいるが,亜種の分布は検討を要している。なお,ユーラシア大陸に分布するものと日本に分布するものを独立した別の種とみなし,日本の種をニホンキジ P. versicolor,大陸に分布する種をコウライキジとする意見もある。
(2) Pheasants キジ目キジ科に属する大型の鳥の総称。キジ科にはシチメンチョウ類,ライチョウ類,旧世界に分布するウズラ類とシャコ類,ヤマウズラ類などが含まれる。キジと呼ばれるは,これらとクジャク類を除いた鳥のグループで,キジのほかにヤマドリ類やニジキジ類,ジュケイ類,セイラン類などが含まれ,すべてアジアに分布している。ニワトリの原種であるヤケイ類もキジ科だが,和名の呼称ではヤケイとなる。いずれも草原や森林に生息する地上性の鳥である。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

広義には鳥綱キジ目キジ科キジ亜科キジ族に含まれる鳥で尾の長いもののうち、クジャク類とセイラン類以外の総称。狭義にはそのうちの1種。

 キジ科には5亜科があり、そのうちのキジ亜科は、ウズラ、コジュケイなど比較的小形で尾の短い種を含むヤマウズラ族と、大形で一般に尾の長いキジ族とに分けられる。キジ族には、ジュケイ属Tragopan、ニジキジ属Lophophorus、キジ属Phasianus、ヤケイ属Gallus、コクジャク属Polyplectron、クジャク属Pavoなど、16属約50種が属し、アフリカ産のコンゴクジャクを除いてすべてアジアに分布している。雌雄は異色異型で、雄は足に大きなけづめをもち、羽色と飾り羽の美しいものが多い。雌はじみな褐色のものがほとんどである。

[竹下信雄]

種類

種としてのキジPhasianus colchicusは、日本では古来キギスの名で親しまれ、1947年(昭和22)には国鳥に指定されている。本州から屋久島(やくしま)、種子島(たねがしま)まで生息し、アジア大陸では西はカスピ海から東は中国東北部、ウスリー地方まで、南は中国南部まで分布している。また猟鳥として、ヨーロッパ、北アメリカ、ハワイ、オーストラリア、ニュージーランドに放鳥されている。雄は尾が長く、全長80~120センチメートル、雌は50~60センチメートル。雄の目の周りには大きな赤い肉垂れがあり、頭の両側には耳のような形の羽毛が突き出ている。地方的な変異が多く、三十数亜種が認められ、日本には4亜種が自然分布しているが、猟鳥として亜種の違いを考えずに各地で人工増殖されたものが放鳥された結果、亜種間の違いははっきりしなくなったといわれている。北海道、対馬(つしま)、伊豆諸島の八丈島などには、キジは生息していなかったが、アジア東部に分布しているコウライキジP. c. karpowiが放鳥され、繁殖している。このコウライキジも含めて大陸産の亜種の雄は羽色が黄褐色で、羽色が緑黒色の日本産のものとはかなり違っている。このため後者は別種であるとする考えもある。その場合、大陸産をコウライキジP. colchicus、日本産をキジP. versicolorとよぶ。雌はいずれもじみな褐色の羽色をもつ。

 広義のキジ類には、日本特産のヤマドリ、中国のオナガキジとカラヤマドリ、台湾特産で20世紀になってから発見されたミカドキジを含むオナガキジ属5種、中国西北部とチベットにすむミミキジ(カケイ)属3種、中国西部の山岳地帯にすみ、クジャク類にも劣らぬ美しさのキンケイとギンケイ、ヒマラヤ山地のカンムリキジ、ヒマラヤからボルネオ島まで分布し10種に分類されるハッカン(コシアカキジ)属などがある。また、ベニキジ、ジュケイ、ミノキジ、ニジキジなどは、キジの仲間としては尾が比較的短い種類である。これらもヒマラヤから中国の山地にかけて分布している。

[竹下信雄]

生態

キジ類は、いずれも雑食性で、草の種子、木の果実、芽、葉など多様な植物質のほか、昆虫、クモ、ムカデ、トビムシ、カタツムリ、小形のヘビやトカゲなど多くの動物質を、おもに地上でとる。足指についている頑丈なつめで地面をひっかき、地中の根、球根、塊茎などを食べることもできる。雄の求愛行動は華やかで、特徴ある肉垂れや大きな飾り羽を誇示する。歩くこと、走ることが巧みで、短めの翼をすばやく羽ばたいてかなりのスピードで飛ぶが、長い距離ではない。定着性が強く、渡りはしない。一夫多妻の繁殖様式をもつ種がほとんどで、日本のキジの場合、晩秋から初春までは、雄だけ、雌だけの十数羽の群れをつくって暮らし、3月になるとまず雄の群れが分裂して、1羽が数百メートル四方の縄張りをもち、ケーンケーンと鳴いて雌をよぶ。体が大きく色彩が鮮やかでよく鳴く雄ほど優位にたち、数羽の雌を集め、次々に交尾する。雌は、地上の物陰に巣をつくり、8~20個の卵を産む。抱卵、育雛(いくすう)も雌だけが行う。抱卵日数は22~27日。雛(ひな)は早成性で、綿毛に包まれて生まれ、数時間後には歩くことができる。キジ類の生息環境は、草原、森林、高山に及ぶが、湿地帯は好まず、種のキジと同様に、深い茂みが散在する草原や、明るい林にすむものが多い。

[竹下信雄]

人間生活との関係

キジ類は、肉が豊富で美味であることと、地上性で比較的つかまえやすいことから、先史時代から狩られてきた。日本でも縄文時代の遺跡からキジの骨がみつかっている。また、雑食性で飼いやすいうえに、容姿の美しい種が多いので飼養の歴史も古い。一方、遊猟の対象として、自然分布していなかった地域に移入したり、人工的に増殖したものを放すことが世界各地で行われ、日本でもキジを毎年約10万羽放鳥している。キジは狩猟鳥に指定されており、おもに銃猟によって年に数十万羽が捕獲されている。ただし、増殖のために雌は捕獲を禁止されることが多い。

[竹下信雄]

民俗

記紀の天若日子(あめのわかひこ)の話をはじめ、「長柄(ながら)の人柱(ひとばしら)」の話や「桃太郎」その他の昔話に登場するキジは、広く庶民にも親しまれてきた鳥である。その肉は美味で、しかも遠く飛べない鳥であるため、冬季には大ぜいで追い回し、雪の上で動けなくなったところを捕まえるという「雉(きじ)追い」の猟法があった。そのようすは「雉の草隠れ」ともいわれ、頭隠して尾を隠さず、また捕まえられるのは雪中に限らず、月の12日には山の神に羽を結ばれていて捕まえやすいとか、太子講(たいしこう)(職人が集まって聖徳太子を祀(まつ)る講)で使った箸(はし)を懐(ふところ)にして追うとかならずとれるという所もあった。静岡県引佐(いなさ)郡井伊谷(いいのや)村(現、浜松市北区引佐町)では、古くから宗良(むねなが)親王(1311―?)の愛鳥として、キジを食べることを禁じていた。このほかキジの鳴き方いかんによって地震や天候の予知ができると信じていた所も少なくない。

[最上孝敬]

料理

キジを食用としたのは相当古く、日本では王朝時代より鳥肉中の最高のものとされていた。また、平安時代もっとも盛んであった貴族の鷹狩(たかがり)も、キジをとることが主であったようである。

 キジは、まず内臓と血を除き、4~5日置いてから調理する。とらえてすぐは一種の肉臭があり、肉質も堅いからである。一般には、暖地産のものは臭気が強く、寒地産にはほとんど臭気がないとされている。一般に流通しているのは飼育されたものが多い。調理法はニワトリと同じで、すき焼き、吸い物、きじ鍋(なべ)、ロースト、網焼き、焼き鳥によい。煮るときは臭み抜きに土ショウガを用いる。焼き鳥には、しょうが汁かたまねぎ汁を加えたしょうゆにつけておいてから焼くと、においがとれる。

 きじ飯は、まず、きじ肉をたたいて団子にし、これに、ささがきごぼう、セリなどを加えて煮込み、さらに、みりんとみそで味をつけ、すこししょうゆを加えて煮つめる。飯が炊きあがったら、きじ団子の煮物を飯に移し、よく混ぜて仕上げる。きじの丸蒸しは、糯米(もちごめ)をギンナン、クリ、ゴボウ、ニンジンなどといっしょにキジの腹に詰め、長時間ゆっくりと蒸す。中まで火が通ったら大皿にのせ、上から別につくった鶏のスープをかける。

[河野友美・大滝 緑]


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