(読み)かん

精選版 日本国語大辞典 「勘」の意味・読み・例文・類語

かん【勘】

〘名〙
① 直感で物事を判断すること。また、その能力。第六感
慶長見聞集(1614)一「算をよくおくといへとも勘にうとき人有。勘有りて算に下手あり」
② よくしらべること。罪あるいは事の内容などをただすこと。
御湯殿上日記‐大永八年(1528)正月二九日「少なこんかきう申。御かんなる。昨日の事なり」 〔蘇舜欽‐送韓三子華還家詩〕
古文書で、書いてある文意を了承した意を表わす、文句の肩に加える点や線状の符号。

かん‐・ず【勘】

〘他サ変〙 罪を調べ考えて罰する。罪をただす。お叱りを受ける。こうず。
※宇津保(970‐999頃)蔵開下「親はらからをかむぜられんこそ、いとやさしかるべけれ」

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デジタル大辞泉 「勘」の意味・読み・例文・類語

かん【勘】

物事の意味やよしあしを直感的に感じとり、判断する能力。「が働く」
古文書で、内容の了解を示す符号や点。
[類語]ひらめきインスピレーション第六感目聡い鋭敏機敏俊敏明敏賢い鋭いさと賢しい過敏敏感炯眼けいがん利口利発聡明怜悧れいり慧敏穎悟えいご英明賢明犀利さいりシャープ耳聡い耳が早い早耳地獄耳目が早い先見の明予覚飛耳長目気が利く嗅ぐ嗅ぎ付ける嗅ぎ出す嗅ぎ当てる嗅ぎ取る嗅ぎ分ける虫の知らせ虫が知らせる予感直感察知ぴんとぴんと来る鼻が利く感じ取る気が付く

かん【勘】[漢字項目]

常用漢字] [音]カン(漢) [訓]かんがえる
考え合わせる。つき合わせて調べる。「勘案勘考勘合勘定校勘
罪を調べただす。「勘気勘当/推勘・勅勘
直感。第六感。「勘所かんどころ山勘やまかん
「勘定」の略。「割勘
[名のり]さだ・さだむ・のり
[難読]勘解由使かげゆし

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「勘」の意味・わかりやすい解説


かん

直観的に事柄を感知したり、判断したり、行動したりする心の働きをさす。通常の視覚・聴覚・触覚などの五感を超えた能力とみられるときには第六感ともいわれるが、既知感覚器官をまったく媒介としない超感覚extra sensory perceptionとは区別される。また、問題解決の場面で、自己の意志統制を超え、たまたま出現した着想としていうときには、外来語のインスピレーションinspirationと同義で、ひらめき、啓示などを意味する。この際には長い思考のあとに出現する働きをさすが、模索から解放された劇的な感動を自覚する。しかし、勘はかならずしも長期の経験を前提とするのではなく、勘がいい人・悪い人などといわれるように、生得的な個人差のある潜在的能力にも用いられる。

 勘は認知面についていわれるだけでなく、動作、作業の行動面についてもいわれる。日常いわれる運動神経がよいということにも通じ、巧みな運動、器用な動作の能力を意味することもある。

 勘は学習過程、心的活動遂行を促進するものとしての積極的な働きをさすが、これに対立する消極的な働きをさすものとして、固着fixation、硬さrigidityなどの抑制作用があげられる。ある事態効果をもった機能が固定化し、新しい事態(問題場面)に適切に効果をもつ機能を妨害するのが固着であり、また、つねに一つ態度に固執し、融通な態度をとりえないのは性格の硬さといわれる。

小川 隆]

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改訂新版 世界大百科事典 「勘」の意味・わかりやすい解説

勘 (かん)

勘がよいとか勘が働くといったかたちで日常よく使われる言葉であり,一方では事柄の直観的全体的な認識判断をさし,また他方では動作習熟上での〈こつ〉とほぼ同義に用いられる。心理学者黒田亮は通俗的に用いられる勘の語義として,次のようなものを挙げた。直覚,いわゆる〈第六感〉,虫の知らせ,無意識および下意識,練習による機械化や自動化,技神に入るの妙,神徠(しんらい),霊感,悟り,禅,三昧(ざんまい),以心伝心,手加減,こつ,呼吸,手心。黒田によれば心理学は自内証(体験)の事実を記述する学とされ,自内証の事実には識(ほぼ意識に相当する)と覚の2方面があるとされた。勘はこの覚に含まれる。黒田は覚の特色として図式性,含蓄性,深み,方向性,軽快味,その他を挙げ,勘を剣法や能などの技芸の極意,禅の悟り,荘子など東洋思想の本質にまで関連するものとした。現代の科学的・合理的社会では勘に基づく行動はしだいに排除される傾向にある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「勘」の意味・わかりやすい解説


かん

分析的な思考によらないで直観的に物事の真相をとらえる精神作用。ある盲人が通りすがりの人の足音を聞いてその人の性別,年齢,職業などを言いあてるとか,ある敏腕な刑事が些細な偶然的な出来事から何か「ピンとくる」ものを感じ取るというような場合である。このような働きはだれでもが一朝一夕にして身につけるようになるものではなく,長時日の経験の積重ねから生れるものである。黒田亮の『勘の研究』 (1933) が著名。 (→インスピレーション )

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