兵庫県南部にある市。瀬戸内海に浮かぶ淡路(あわじ)島の南部に位置する。2005年(平成17)、三原(みはら)郡緑町(みどりちょう)、西淡町(せいだんちょう)、三原町、南淡町(なんだん)が合併、市制施行して成立。なお、南あわじ市の誕生に伴い、三原郡は消滅した。紀伊(きい)水道、鳴門(なると)海峡、播磨灘(はりまなだ)に臨み、淡路島最大の三原平野、紀伊水道に浮かぶ沼島(ぬしま)を含む。瀬戸内海国立公園域。国道28号が通じ、神戸淡路鳴門自動車道の西淡三原・淡路島南インターチェンジがある。1985年(昭和60)四国との間に本州四国連絡道路の一部、大鳴門橋が完成し、徳島県鳴門市と陸路で結ばれた。古代には三原平野に淡路の国府が置かれ政治の中心であった。播磨灘に注ぐ三原川河口に立地する湊(みなと)は古代からの港。
主産業は農業、漁業、観光となっている。農業では、野菜栽培、酪農、畜産(肉用牛飼育、養豚)が盛ん。三原平野は酪農、近郊農業の中心地であり、畜産と水田多毛作を組合せた複合経営、三毛作が営まれる。明治時代からの酪農の伝統があり、乳牛の飼育は県下有数である。タマネギ、レタスの全国屈指の産地であり、ほかに温州(うんしゅう)ミカンやビワ、ハクサイ、キャベツなどの生産、カーネーション、キクなどの花卉(かき)栽培も多い。漁業では、鳴門海峡のタイ、沼島のハモのほか、イカナゴ、タコ、アジなど魚種が豊富である。またノリやワカメの養殖、福良(ふくら)湾のハマチ、トラフグなどの栽培漁業も行われる。地場産業として瓦(かわら)製造があり、淡路瓦は特産。
播磨灘に面する白砂青松の「慶野松原(けいのまつばら)」は、『万葉集』の柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)の歌にも詠まれた景勝地であり、国指定名勝となっている。国指定重要文化財として、隆泉寺(りゅうせんじ)の横帯文銅鐸(どうたく)、日光寺(にっこうじ)の袈裟襷(けさだすき)文銅鐸、成相寺(なりあいじ)の木造薬師如来立像(やくしにょらいりゅうぞう)、護国寺(ごこくじ)の木造大日(だいにち)如来坐像、国分寺の木造釈迦如来坐像(しゃかにょらいざぞう)がある。国分寺の淡路国分寺塔跡は国指定史跡。雨乞(あまご)い祈願の「阿万の風流大踊小踊(あまのふりゅうおおおどりこおどり)」は国指定重要無形民俗文化財・ユネスコ(国連教育科学文化機関)無形文化遺産。淡路人形協会による「淡路人形浄瑠璃」は国指定重要無形民俗文化財で、市(いち)地区は淡路人形浄瑠璃芝居の発祥地とされ、淡路人形浄瑠璃資料館がある。淳仁(じゅんにん)天皇陵(淡路陵(みささぎ))、賀集(かしゅう)八幡神社のほか、『古事記』の国生み伝説のある沼島には、自凝(おのころ)島神社があり、沼島を望む諭鶴羽(ゆづるは)山地南麓(ろく)の灘黒岩水仙郷(なだくろいわすいせんきょう)はニホンスイセンの群生地として知られる。福良港からは鳴門渦潮(うずしお)の観潮船が出航する。そのほか、南淡温泉、海水浴場、国立淡路青年交流の家、淡路ふれあい公園、潮崎に出力1500キロワットの風力発電所がある。面積229.01平方キロメートル、人口4万4137(2020)。
[編集部]
兵庫県淡路島南部にある市。2005年1月西淡(せいだん),南淡(なんだん),緑(みどり),三原(みはら)の4町が合体して成立した。人口4万9834(2010)。
南あわじ市北西部の旧町。旧三原郡所属。人口1万2519(2000)。播磨灘と鳴門海峡に面し,瀬戸内海国立公園の一部をなす。三原川,大日川が播磨灘へ注ぎ,沿岸の低地には水田が広がる。三原川河口の湊港は,西海岸の玄関口をなし,南部の丸山漁港や阿那賀港はワカメやノリの養殖,タイの漁業基地となっている。米作,タマネギ栽培と酪農の複合経営による農業が盛んで,淡路瓦(黒瓦,陶器瓦)の生産が重要な地場産業となっている。北部の慶野松原(名)は夏季に海水浴客でにぎわう。大鳴門橋の開通により,観光地としての整備も進んでいる。神戸淡路鳴門自動車道が通り,旧南淡町との境に淡路島南,旧三原町との境に西淡三原の2つのインターチェンジがある。
南あわじ市南部の旧町。旧三原郡所属。人口1万9704(2000)。町域は南東部の諭鶴羽(ゆづるは)山地から西部の福良湾にかけて広がり,南方の紀伊水道に浮かぶ沼島(ぬしま)を含む。福良湾奥に位置する福良が中心市街で,対岸の鳴門市との間にフェリーが通じ(大鳴門橋の開通により廃止),鳴門観潮の基地にもなっている。北阿万(きたあま)は淡路珉平(みんぺい)焼の本場で,賀集(かしゆう)とともにタイル生産が盛ん。主産業の農業は米,ハクサイ,レタス,タマネギの栽培が中心で,諭鶴羽山南斜面の灘地区などではミカン,スイセンが栽培される。漁業は機船底引網を主とするが,近年はノリやハマチの養殖も盛んである。大鳴門橋の開通により,記念館が建設されるなど観光開発も進められている。
南あわじ市北東部の旧町。旧三原郡所属。人口6154(2000)。中央部の丘陵を分水界に,北側の倭文(しとおり)地区は播磨灘に注ぐ三原川の,南側の広田地区は大阪湾に注ぐ洲本川の流域である。広田には大正初期に乳牛が導入され,以後,淡路の酪農の中心となった。現在は近代的な設備をもつ練乳工場がある。そのほか米作,タマネギ,ミカンの栽培も盛んで,かつて筋織(麻や木綿)で知られた倭文は淡路ミカンの特産地となっている。県立淡路ふれあい公園など,リゾート地としての整備も進められている。
南あわじ市中部の旧町。旧三原郡所属。人口1万6602(2000)。三原平野の大半を占め,東部の諭鶴羽山地の山麓付近を中心に溜池が多い。古代に淡路の国府が置かれ,国分寺・同尼寺跡がある。また鎌倉時代に島の政治の中心であった養宜館(やぎやかた)跡もある。主産業は農業で,稲作の後にハクサイ,レタス,キャベツなどの野菜を作付けて12~2月ころに収穫後,タマネギを栽培する三毛作が行われている。野菜の栽培面積,生産量は全国的にも高い水準にある。酪農も盛んで,良質の生乳を阪神方面へ出荷している。工業では色瓦の特産がある。淡路人形が伝えられ,国生み神話にちなむ〈おのころ島神社〉がある。国道28号線(四国街道)八木付近の松並木は天然記念物に指定されている。淡路ファームパークや淡路人形浄瑠璃資料館もある。
執筆者:松原 宏
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