噛む(読み)カム

デジタル大辞泉 「噛む」の意味・読み・例文・類語

か・む【×噛む/×咬む/×嚼む】

[動マ五(四)]
上下の歯で物を挟んだり、砕いたりする。「悔しさで唇を―・む」「よく―・んで食べなさい」
歯を立てて傷つける。「舌を―・む」「蛇に―・まれる」
歯車の歯などがぴったりと合わさる。「ギアが―・む」
水の流れが激しくぶつかる。「岩を―・む激流
くわだて・事件などに関係を持つ。「計画には彼が一枚―・んでいる」
放送演劇で)言葉を言い間違えたり、なめらかに話せなかったりする。「台詞せりふを―・む」
強く説きふせる。また、しかりつける。
義経といひ秩父といひ、大抵では―・まれぬ相手」〈浄・盛衰記
[可能]かめる
[下接句]飼い犬に手を噛まれる噛む馬はしまいまで噛むきばを噛む窮鼠きゅうそ猫を噛む唇を噛む砂を噛む二鼠にそふじを噛む歯を噛むほぞ
[類語]噛み砕く噛み付く食い付く食らい付く噛み締める噛み切る食い切る食いちぎる噛みこなす咀嚼反芻

しが・む【×噛む】

[動マ五(四)]くりかえし強くかむ。かみしめる。「酒の肴にスルメを―・む」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「噛む」の意味・読み・例文・類語

か・む【噛・咬・嚼】

  1. 〘 他動詞 マ行五(四) 〙
  2. 上下の歯をあてて、ものをはさみ砕く。咀嚼(そしゃく)する。
    1. [初出の実例]「十拳劔(とつかつるぎ)を乞ひ度(わた)して、三段(みきだ)に打ち折りて、〈略〉さがみに迦美(カミ)て」(出典古事記(712)上)
    2. 「焼米(やいごめ)は、おうなの歯はたへで、かみ残したる」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲中)
  3. 上下の歯を強く合わせる。歯をくいしばる。また、歯で傷をつける。
    1. [初出の実例]「若し虫噛(カミ)穿(うが)ちたらば、泥を以て泥(ぬ)れ」(出典:小川本願経四分律平安初期点(810頃))
    2. 「シシ ヒトヲ camu(カム)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    3. 「まっ蒼になった女は下脣を噛んだなり、神父の顔を見つめてゐる」(出典:おしの(1923)〈芥川龍之介〉)
  4. 物の間ではさむ。
    1. [初出の実例]「之を除かんと悶ゆるほどに、益々鉄鎖に噛まるるに似たり」(出典:帰省(1890)〈宮崎湖処子〉五)
  5. 正しくない言動をする者を、道理をもって説き伏せる。また、叱りつける。〔評判記・色道大鏡(1678)〕
    1. [初出の実例]「そんな事したら奥州様にかまれうもの」(出典:歌舞伎・傾城暁の鐘(1708)上)
  6. 歯車などの歯と歯がうまく合う。→噛み合う
    1. [初出の実例]「大輪、次の二輪と噛(カ)み、二輪の軸、次の項輪と噛み」(出典:造化妙々奇談(1879‐80)〈宮崎柳条〉八)
  7. 水、球、車などが、岩、砂、土などを激しくえぐる。
    1. [初出の実例]「泥を噛(カ)む轍(わだち)の音重々しく聞えつ、車来りぬ」(出典:おとづれ(1897)〈国木田独歩〉上)
  8. 仕事や事件などで、それを動かすようなある部分に関係をもつ。
    1. [初出の実例]「老中も一応かんでいるこの陰謀を」(出典:解体の日暮れ(1966)〈杉浦明平〉一〇)

噛むの語誌

上代では、カムに対して、クフは口にくわえる意、ハムが食う意で使用された。また、古く酒を造ることをカムと言うが、これは米を口でかんでから発酵させたことによるもの。→かむ(醸)


しが・む【噛】

  1. 〘 他動詞 マ行五(四) 〙 むしゃむしゃとかむ。強くかむ。かみしめる。
    1. [初出の実例]「真実にせぬ徒(いたづら)でも、ほんの勘当受ふかと、是が悲しうござんすと、袖をしがみ咽(むせ)返る」(出典:浄瑠璃・七小町(1727)二)
    2. 「チウイング・ガムを噛(シガ)むだ折のやうに」(出典:茶話(1915‐30)〈薄田泣菫無学なお月様)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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