居酒屋(酒場)(読み)いざかや

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

居酒屋(酒場)
いざかや

店先で手軽に酒を飲ませる酒屋、または酒肴(しゅこう)を供する簡易酒場。酒類販売店が店頭で枡酒(ますざけ)を飲ませる立ち飲みの風習は古くからみられ、鎌倉時代には街道や宿場で飯屋が酒と簡単な肴(さかな)を用意して旅人や駕籠(かご)屋などの求めに応じたが、一膳飯屋(いちぜんめしや)の発達に伴い酒肴のみを専業とする店が現れて居酒屋とよばれた。江戸時代には灘(なだ)の酒が船で江戸に運ばれるようになり、元文(げんぶん)年間(1736~1741)には鎌倉河岸(がし)の酒店豊島(としま)屋が店を広げて田楽(でんがく)を肴に樽酒(たるざけ)を安く飲ませたので、行商人、中間(ちゅうげん)、船頭、日雇い労働者などが好んで利用し、同じような形態の店が江戸の町々にでき、関東一円の村々にも普及した。これらの居酒屋では、店内に粗末な食卓を置き、しょうゆの空き樽などを椅子(いす)の代用にして、蠅(はえ)の侵入を防ぐために入口に縄のれんを下げたので縄のれんは居酒屋の代名詞のようになり、いまも各地にみられる。現在は焼きとり屋、おでん屋、炉端(ろばた)焼き屋、田舎(いなか)料理屋ほかさまざまな形態のものがあり、また和風、洋風など趣向を凝らしたものも多い。

 西洋では古代ギリシア・ローマ時代に居酒屋があって一般大衆が利用していたことが文献にみえる。中世のイギリスにはエール(ビールの一種)・ハウスとよばれる居酒屋があって旅行者を泊めたりしたが、近世になって、ジンやぶどう酒などを飲ませるタバーンtavernと、ビールを飲ませるパブリック・ハウスとに分かれた。ターバンはのちにサルーンsaloonとよばれる高級酒場になり、パブリック・ハウスはパブpubと略称される大衆的な酒場になった。アメリカでもだいたいイギリス風に発展したが、西部では宿屋と酒場を兼ねたサルーンの形式が発達し、都会ではバーが多くみられる。フランスでも中世にぶどう酒を飲ませるカバレーcabaretまたはタベルヌtaverneなどがあって旅行者を泊めたが、18世紀末にパリに高級酒場ができたのに伴って、19世紀にはビストロbistroと俗称される大衆的な居酒屋が多くできた。

[佐藤農人]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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