受ける(読み)ウケル

デジタル大辞泉 「受ける」の意味・読み・例文・類語

う・ける【受ける/請ける/享ける/承ける】

[動カ下一][文]う・く[カ下二]
自分の方に向かってくるものを、支え止めたり、取って収めたりする。受け止める。受け取る。「ミットでボールを―・ける」「雨水おけに―・ける」
差し出されたものを自分の方に取り入れる。手に収め入れる。もらう。「杯を―・ける」「賞を―・ける」「援助を―・ける」
(享ける)他から与えられる。身に授かる。また、系統血筋などを引く。「この世に生を―・けてこの方」「母方の血を―・けて文才がある」「寵愛を―・ける」
(承ける)あとを継ぐ。受け継ぐ。「先代の跡を―・ける」「前任者の意を―・けて企画を発展させる」
自分に向けられた行為・働きかけに対処して応じる。引き受ける。受け入れる。「挑戦を―・けて立つ」「注文を―・ける」「に―・けてはいけない」「調査結果を―・けて是正する」「多発する事故を―・けて対策を講じる」
他からの働き・作用が身に加えられる。
㋐こうむる。「被害を―・ける」「嫌疑を―・ける」「ショックを―・ける」
㋑それに身をさらす。「頰に風を―・ける」「西日をまともに―・ける」
ある方角に面している。「南を―・けた明るい部屋」
代金を払って取り戻す。「質ぐさの時計を―・ける」
文法で、文中において、ある語句が他の語句から文法的な働きをこうむる。修飾される。「係助詞『ぞ』を―・けて文末が連体形になる」
10 人気・好評を得る。「大衆に―・けた音楽」
11 俗に、おもしろく感じられる。笑える。「この漫画で、自分が特に―・た場面はこれだ」
[下接句]意を受ける・血を受ける・に受ける神は非礼を受けず天の与うるを取らざればかえって其のとがめを受く人身にんじんを受く
[類語](2貰う押し頂く受け取る収める収受する受納する受領する受給する受贈する譲り受ける貰い受ける授かる頂くたまわ頂戴ちょうだいする拝領する拝受する申し受ける/(4継ぐ受け継ぐ引き継ぐ襲う

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「受ける」の意味・読み・例文・類語

う・ける【受・請】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 カ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]う・く 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙
    1. [ 一 ] 他から加えられる作用を身に引き取る。また、他の言うことやすることに応じて行なう。
      1. 落ちてくるものや向かってくるものなどを支え止める。受け止める。
        1. [初出の実例]「風に散る花橘を袖に受(うけ)て君がみ跡と偲ひつるかも」(出典:万葉集(8C後)一〇・一九六六)
      2. 渡される物を引き取る。もらう。
        1. [初出の実例]「別(こと)に新(にひ)しき鈎(ち)を作て兄(このかみ)に与ふ。兄受(ウケ)(ゑ)ずして其(そ)の故(もと)の鈎(ち)を責(はた)る」(出典:日本書紀(720)神代下(寛文版訓))
        2. 「酒を一かはらけうけて、持ちながら」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)三)
      3. よいと認めて受け入れる。承知する。賛成する。
        1. [初出の実例]「よき事なりとうけつ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
        2. 「恋せじとみたらし河にせしみそぎ神はうけずぞなりにけらしも〈よみ人しらず〉」(出典:古今和歌集(905‐914)恋一・五〇一)
      4. 問いかけ、命令、試験、電話などに応じる。
        1. [初出の実例]「兄磯城、命(おほむこと)を承(ウケ)ず」(出典:日本書紀(720)神武即位前戊午年一一月(寛文版訓))
        2. 「史記のかたきまきまき、寮試うけんに」(出典:源氏物語(1001‐14頃)乙女)
      5. 信用する。信頼して大事にする。
        1. [初出の実例]「あやしきまですずろなる人にもうけられ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)御法)
      6. 神仏を、つつしんで迎える。
        1. [初出の実例]「熊野の権現〈略〉うけ奉りて、験者一座せさせ奉りて見ばや」(出典:義経記(室町中か)七)
      7. あとを継ぐ。継承する。
        1. [初出の実例]「その風をうけて、道のため、家のため」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)五)
      8. 芝居で、下座の唄、または鳴り物のほどよい切れ目をきっかけとし、狂言方が幕あけの合図拍子木を打つ。
      9. 文法で、前の語句に応じる。⇔係る
      10. (性質、力、環境などを)天から授かる。
        1. [初出の実例]「玄奘、質〈身〉を稟(ウケ)たること愚魯にして」(出典:大唐三蔵玄奘法師表啓平安初期点(850頃))
    2. [ 二 ] 他から身に作用を加えられる。
      1. 評判、尊敬、恩恵などを身に加えられる。また、病気、恥、疑いなどを被る。
        1. [初出の実例]「忍び難きを受(うケ)、命終しては定めて无間地獄に生れむ」(出典:地蔵十輪経元慶七年点(883)四)
        2. 「身に重き病を受けて」(出典:今昔物語集(1120頃か)三一)
      2. 光、風などに身をさらす。
        1. [初出の実例]「阿彌陀の画像を安置し奉りて落日を請て眉間の光とす」(出典:嵯峨本方丈記(1212))
      3. ある方角に面する。
        1. [初出の実例]「此庭は東南をうけて居るから」(出典:人情本・英対暖語(1838)二)
      4. がまんして相手の話を聞く。特に、のろけ話などの聞き手になる。
        1. [初出の実例]「わるい声色をうけてゐるも立切ねへやつよ」(出典:滑稽本・客者評判記(1811)下)
    3. [ 三 ] 代金を払って引き取る。
      1. 質に入れた物をうけ出す。
        1. [初出の実例]「置けるか、そののち請(ウク)る事成がたく」(出典:浮世草子・世間胸算用(1692)一)
      2. 遊女などを身請けする。
        1. [初出の実例]「ミヲ vquru(ウクル)〈訳〉身請けされる」(出典:日葡辞書(1603‐04))
      3. 問屋などから品物を仕入れる。仕込む。
        1. [初出の実例]「浮世山枡を受(ウケ)て小袋に入行」(出典:浮世草子・日本永代蔵(1688)六)
    4. [ 四 ] 賭け事に勝ち、金を得る。
      1. [初出の実例]「このやうないめへましいよとうばくちはねへ。一番もうけねへ」(出典:黄表紙・莫切自根金生木(1785)中)
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 カ行下一段活用 〙
    1. 芝居などで見物人に喜ばれて喝采(かっさい)される。また、よい評判を得る。人気を得る。
      1. [初出の実例]「ヤンヤとうけるきでゐるんだアな」(出典:滑稽本・七偏人(1857‐63)三)
    2. 芝居などを見て、観客が喜ぶ。喝采する。
      1. [初出の実例]「見功者ばかりが受てぢゃったが」(出典:滑稽本・客者評判記(1810)上)

受けるの語誌

古来助詞ヲを受ける他動詞であるが、[ 二 ]のように芝居などで客から好評を得る、評判がよいの意の場合、自動詞に転ずる用法が江戸後期に生まれた。もっとも、江戸前期の「大坂檀林桜千句‐第五」の「今日も請たる所作をくり返し〈本秋〉」を、この例に解釈する説もある。

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