(読み)ホウ

デジタル大辞泉 「抱」の意味・読み・例文・類語

ほう【抱】[漢字項目]

常用漢字] [音]ホウハウ)(漢) [訓]だく いだく かかえる
腕をまわしてかかえこむ。だく。「抱合抱擁抱卵介抱
心の中に思いをいだく。「抱懐抱負
(「」の代用字両手で持ちあげるようにしてかかえる。「抱腹絶倒
[名のり]もち

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「抱」の意味・読み・例文・類語

かかえかかへ【抱】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 動詞「かかえる(抱)」の連用形名詞化 )
    1. 祿や給金などを与えて召しかかえること。また、そのかかえられた人。
      1. [初出の実例]「小室矢沢百姓分、如前々御拘候」(出典:比企文書‐永祿四年(1561)五月二二日・太田資正判物)
      2. 「呉服所より抱(カカヘ)にござったござったお大黒の殞子(をとしご)」(出典:浮世草子・世間娘容気(1717)三)
    2. 芸娼妓などで、雇い主に雇われている者。⇔自前(じまえ)
      1. [初出の実例]「三浦四郎左衛門抅(カカヘ)の太夫若山に」(出典:浮世草子・好色二代男(1684)五)
    3. かかえおび(抱帯)」の略。
      1. [初出の実例]「泣てつきせぬなごりのたもと見すえてかかへをたぐり寄せ」(出典:浄瑠璃・心中天の網島(1720)橋尽し)
    4. 客が遊女水揚げの費用を支出すること。江戸時代、江戸深川の岡場所の語。
      1. [初出の実例]「ふか川じゃァかかえをしてやるといふが客のはでさ」(出典:洒落本・古契三娼(1787))
    5. 菊の花弁の狂い方や変形の仕方の称。追抱、褄折抱、丸抱、乱れ抱、自然抱、管抱、露心抱の七種がある。かかえ咲き。
  2. [ 2 ] 〘 接尾語 〙 両手でかかえるほどの大きさを示す語。
    1. [初出の実例]「ヒト kakae(カカエ)マキ」(出典:改正増補和英語林集成(1886))

だき【抱】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「だく(抱)」の連用形の名詞化 )
  2. 抱くこと。
  3. かかえること。また、両手でかかえるほどの大きさを示すのに用いる語。
    1. [初出の実例]「真黒なる大木、太さふた抱(ダキ)計なるが」(出典:浮世草子・新御伽婢子(1683)五)
  4. 衣の袖の前の部分
    1. [初出の実例]「袖のまへをばだきとなづけ、うしろをばそてといへり」(出典:名語記(1275)四)

いだき【抱】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 動詞「いだく(抱)」の連用形の名詞化 ) だくこと。
  2. [ 2 ] 〘 接尾語 〙 両手でかかえる程の大きさ。かかえ。うだき。
    1. [初出の実例]「沈(ぢむ)水淡路嶋に漂着(よ)れり。其の大さ一囲(イダキ)」(出典:日本書紀(720)推古三年四月(岩崎本訓))

うだき【抱】

  1. 〘 接尾語 〙 ( 動詞「うだく(抱)」の連用形の名詞化 ) 両手で抱えるくらいの大きさ。
    1. [初出の実例]「大きなる樹有りて〈略〉其の太さ十囲(とウダキ)」(出典:日本書紀(720)仁徳六二年五月(前田本訓))

かいかひ【抱】

  1. 〘 接尾語 〙 「かかえ(抱)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「両の手でだきあわすることぞここらに一かい二かいと云ことぞ」(出典:玉塵抄(1563)一)

だっこ【抱】

  1. 〘 名詞 〙 だくこと、また、だかれることをいう幼児語
    1. [初出の実例]「抱っ子いやだとだだを踏む泥」(出典:雑俳・歌羅衣(1834‐44)七)

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普及版 字通 「抱」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 8画

(旧字)
8画

(異体字)
11画

[字音] ホウ(ハウ)
[字訓] いだく・だく・まもる

[説文解字]

[字形] 形声
声符は(包)(ほう)。は腹中に胎児のある形。生まれた子を抱くことをという。〔説文〕八上を正字とし「(いだ)くなり」と訓し、徐鉉の案語に、をその俗体とする。〔釈名、釈姿容〕に「は保なり」とし、保もまた懐抱の形に作るものがあるが、保は生子儀礼として、受霊・魂振りのために、裾(すそ)に「襲衾(おふふすま)」をそえ、頭上にときに玉を加える形がある。心に思うこと、心に固く執ることをも抱という。

[訓義]
1. いだく、だく、ふところにする、かかえる。
2. つつむ、からむ、まもる。
3. こころにもつ、おもう、おもい。

[古辞書の訓]
名義抄 イダク・ウタク・イタル・トル・ハク・モツ・ホドコス 〔立〕 ウチホドコス・フトコロ・ヒク・イダク・クム・カカフ

[語系]
buは保・褓・puと声が近い。は孚・孵phiuのように孚育(ふいく)の意をもつ。保系統の字は生子儀礼としての呪儀を示すもので、保・はいわば聖俗の別をもつ語である。

[熟語]
抱痾・抱一・抱影・抱景・抱怨・抱甕・抱懐・抱愨・抱学・抱関・抱愧・抱義・抱衾・抱・抱屈・抱月・抱歉・抱恨・抱罪・抱撮・抱残・抱槧・抱志・抱持・抱膝・抱樹・抱真・抱拙・抱素・抱担・抱柱・抱痛・抱徳・抱璞・抱氷・抱負・抱腹・抱憤・抱哺・抱樸・抱恙・抱養・抱擁・抱膺・抱弄
[下接語]
影抱・抱・掩抱・遠抱・介抱・懐抱・抱・拱抱・襁抱・襟抱・携抱・曠抱・合抱・子抱・愁抱・辛抱・塵抱・乳抱・負抱・保抱・満抱・幽抱・擁抱・連抱

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「抱」の意味・わかりやすい解説


かかえ

江戸時代の隷属農民の称。地方により名称成因隷属の度合いなどさまざまであるが,親方や地主に対して労働力を提供し,生活を保護してもらうという庇護隷属の関係にあった。一般に,家屋,零細耕地をもっていたが,年貢は親方百姓を通して負担した。

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