支える(読み)ツカエル

デジタル大辞泉 「支える」の意味・読み・例文・類語

つか・える〔つかへる〕【支える/×閊える】

[動ア下一][文]つか・ふ[ハ下二]
じゃまなものがあったり行きづまったりして、先へ進めない状態になる。とどこおる。「車が―・える」「言葉に―・える」「仕事が―・えている」
既に先の人が使っていて、ほかの人が使えない状態である。ふさがる。「電話が―・えている」
(「痞える」とも書く)病気・悲しみ・心配などで胸がふさがった感じになる。「胸が―・えて物が食べられない」
(「手をつかえる」の形で)礼として手を床につく。「手を―・え頭を下げて頼む」
(「肩がつかえる」の形で)こる。しこる。
「いかう肩が―・へて来た」〈浄・歌祭文
[補説]「閊」は国字
[類語]塞がる詰まるとどこおるぐずつく淀むもたつく手間取る渋滞停滞凝滞結滞沈滞延滞遅滞停頓

ささ・える〔ささへる〕【支える】

[動ア下一][文]ささ・ふ[ハ下二]
倒れたり落ちたりしないように、何かをあてがっておさえる。「太い柱ではりを―・える」「―・えられてよろよろ歩く」
ある状態が崩れないように、もちこたえる。維持する。「一家の暮らしを―・える」
精神的・経済的に支援する。「地元人達声援に―・えられて選挙戦を勝ち抜く」
防ぎとめる。くいとめる。「敵の攻撃をかろうじて―・える」
[補説]室町時代以降はヤ行にも活用した。→支ゆ
[類語]保つ持ちこたえる防ぐ防止食い止める受け止める

つっか・える〔つつかへる〕【支える/×閊える】

[動ア下一]つかえる」の音変化。「餅がのどに―・える」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「支える」の意味・読み・例文・類語

つか・えるつかへる【支・閊】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 ア行下一(ハ下一) 〙
    [ 文語形 ]つか・ふ 〘 自動詞 ハ行下二段活用 〙
    1. 行き詰まったり邪魔なものがあったりして先へ進めなくなる。ふさがってとおらなくなる。とどこおる。こみあう。
      1. [初出の実例]「藪につかへて鉄炮筋相違候之由」(出典:室町殿日記(1602頃)四)
      2. 「きつい人ごみだ。お開帳のうちは通りがつかへてどふもならぬ」(出典:咄本・鯛の味噌津(1779)三十ふり袖)
      3. 「返答に窮(ツカ)へてゐる間に」(出典:多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前)
    2. 胸がふさがる。
      1. [初出の実例]「胸につかへた物が皆下たぞ」(出典:京大二十冊本毛詩抄(1535頃)一)
      2. 「胸が閉塞(ツカへ)て食事が進まなかった」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一)
    3. ささえる。
      1. [初出の実例]「是にて腹胸などをつかへて居物也」(出典:古事談(1212‐15頃)一)
    4. ( 「肩がつかえる」の形で ) こる。しこる。
      1. [初出の実例]「此程つかえたる肩迄ひねらせた」(出典:浮世草子・好色一代女(1686)一)
      2. 「取り上したか頭痛もする。いかふ肩がつかへて来た」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)野崎村)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 ア行下一(ハ下一) 〙
    [ 文語形 ]つか・ふ 〘 他動詞 ハ行下二段活用 〙 ( 「手をつかえる」の形で ) 挨拶(あいさつ)のときなどに床に手をつく。
    1. [初出の実例]「御前に引舟の女郎、禿(かぶろ)手つかえて座する」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)八)

支えるの補助注記

室町時代頃からヤ行にも活用した。→つかゆ(支)


ささ・えるささへる【支】

  1. 〘 他動詞 ア行下一(ハ下一) 〙
    [ 文語形 ]ささ・ふ 〘 他動詞 ハ行下二段活用 〙 ( 室町時代ころから、ヤ行にも活用した。→ささゆ )
  2. 通行や物事の進行を妨げる。妨害する。
    1. [初出の実例]「あしひきの山道は行かむ風吹けば浪の塞(ささふる)海道は行かじ」(出典:万葉集(8C後)一三・三三三八)
    2. 「ああ、此の樫の木は昨日まで高く雲の上にそびえ、広く日の光をささへて」(出典:日本読本(1887)〈新保磐次〉四)
  3. 物をつっぱって倒れたり落ちたりしないようにする。ある状態を保ち続ける。もちこたえる。
    1. [初出の実例]「右の大を以て左の小を差(ササヘヨ)」(出典:帝釈天略供養次第永承三年点(1048))
    2. 「山上には堞壁もて繞らされたる古城ありて雲を(ササ)ふる柱をなし」(出典:即興詩人(1901)〈森鴎外訳〉夜襲)
  4. 精神的に、または経済的に援助する。支援する。支持する。
    1. [初出の実例]「自害は得遂げず…恩愛の手に障(ササ)えられ」(出典:二人比丘尼色懺悔(1889)〈尾崎紅葉〉戦場)
  5. 相手の勢いをくいとめる。防ぎとめる。
    1. [初出の実例]「禰のゐの小野太が二百騎ばかりでささへたる川原坂の勢の中へ、をめいて懸いり」(出典:平家物語(13C前)八)
  6. 事実をまげて悪く言う。中傷する。
    1. [初出の実例]「信康之御前様寄、信康をささへさせ給ひて、十二ケぢゃうかき立被成て、坂井左衛門督にもたせ給ひて、信長へつかわし給ふ」(出典:三河物語(1626頃)三)

つっか・えるつっかへる【支】

  1. 〘 自動詞 ア行下一(ハ下一) 〙 「つかえる(支)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「その四つの壁に頭がつっかへるのは分り切ったことではないか」(出典:一九二八・三・一五(1928)〈小林多喜二〉五)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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