断り(読み)コトワリ

デジタル大辞泉 「断り」の意味・読み・例文・類語

こと‐わり【断り〔断わり〕】

了承を得るために事前連絡をすること。また、その連絡。「なんの断りもなく借用する」
承知しないこと。相手の申し出に対し拒絶すること。辞退すること。「押し売りお断り
わびを言うこと。また、その言葉。「遅れて来て一言断りもない」
[類語]辞退固辞謝絶願い下げ御免断る拒むいな辞する謝する拒絶拒否遠慮一蹴不承知難色拝辞する退けるね付ける突っねる峻拒しゅんきょする

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精選版 日本国語大辞典 「断り」の意味・読み・例文・類語

こと‐わり【断・理】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「ことわる(断)」の連用形の名詞化 )
  2. [ 一 ] ( 断 )
    1. 事の理非を判別すること。判断。判定。決断。
      1. [初出の実例]「中将は此のことはり聞きはてむと、心入れてあへしらひ居給へり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)
    2. 理由・事情・予定などを説明すること。
      1. (イ) わけを説明すること。
        1. [初出の実例]「仏師、心清く一塵不犯用ざりければ、裁(ことわ)り申に、仏二に別れ給へり」(出典:今昔物語集(1120頃か)四)
      2. (ロ) 前もって知らせること。予告。通告
        1. [初出の実例]「㝡前(さいぜん)引合したる太皷もちは、盗人の請に立けるとて、町へきびしき断(コトハリ)」(出典:浮世草子・世間胸算用(1692)三)
      3. (ハ) 届け出ること。届け出。
        1. [初出の実例]「日数をふるは不調法と存、引返しただ今帰りがけすぐにことはり相済み、ちょっと立ながら両親にあはんため此仕合」(出典:浄瑠璃・鑓の権三重帷子(1717)下)
    3. 申しわけを言うこと。
      1. (イ) 申しわけ。言いわけ。
        1. [初出の実例]「いみじうことはりして聞ゆとも、いと著(しる)かるべきわざぞ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)宿木)
      2. (ロ) あやまること。謝罪。わびごと。〔和訓栞(1777‐1862)〕
    4. 辞退したり、拒絶したりすること。また、そのことば。辞退。
      1. [初出の実例]「年頃の風病、ことはり申して、まかりさりぬべかめりと申し給ふ」(出典:栄花物語(1028‐92頃)駒競の行幸)
  3. [ 二 ] ( 理 ) 理非の判断の意から、道理真理などの意に用いる。
    1. 人の力では、支配し動かすことのできない条理。道理。物ごとのすじ道。
      1. [初出の実例]「大神対へて曰はく、言理(コトハリ)灼然(いやちこ)なり」(出典:日本書紀(720)崇神一〇年九月(北野本南北朝期訓))
      2. 「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり。娑羅(しゃら)双樹の花の色、盛者(じゃうしゃ)必衰のことはりをあらはす」(出典:平家物語(13C前)一)
    2. 理づめのことば。道理にかなったことば。
      1. [初出の実例]「敢(かしこ)まりて大造(コトハリ)(〈別訓〉おほせごと)を承はぬ」(出典:大唐西域記長寛元年点(1163)四)
      2. 「『聖断その意を得がたく候』と、理(コトワリ)を竭(つく)して諫(いさ)めしかば」(出典:読本・椿説弓張月(1807‐11)続)
    3. 理由。わけ。よってきたるゆえん。また、理由などをあげてする弁明
      1. [初出の実例]「申の時にぞ、いみじうことはり言はせなどしてゆるして」(出典:能因本枕(10C終)三一九)
      2. 「わが悪口をいふにあらず。そのことはりをこそ述べ候へ」(出典:仮名草子・伊曾保物語(1639頃)中)
    4. 格式や、礼儀にかなっていること。礼儀。
      1. [初出の実例]「有司(つかさ)、礼(コトハリ)を以て収め葬る」(出典:日本書紀(720)敏達元年六月(前田本訓))
    5. ( 形動 ) それなりの理由のあること。当然であること。また、そのさま。もっともであるさま。そのはず。あたりまえ。
      1. [初出の実例]「翁、理に思ふ、此国に見えぬ玉の枝なり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
      2. 「心細くあはれなる御有様を、この御蔭にかくれてものし給へば、おぼし歎きたるさまもいとことはりなり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)須磨)
    6. ことわるまでもないこと。言うまでもないこと。もちろん。
      1. [初出の実例]「わが得たらんはことわり、人のもとなるさへにくくこそあれ」(出典:枕草子(10C終)二六二)

断りの語誌

( 1 )成立については、動詞コトワル(断)の連用形の名詞化とするのが一般であるが、「万葉集」や「竹取物語」などの中古前期の和文資料には、動詞コトワルの例が見られず、中古中期の「源氏物語」などでも名詞、形容動詞の例に比べ、動詞の例はごくわずかであるところから、名詞コトワリが先に成立したとする説もある。
( 2 )[ 二 ]の形容動詞的用法は、平安時代の物語類に多く見られ、話者が是非を言うときの決まり文句として「げにいとことわりなり」「ことわりなりや」などの形で使われることが多い。

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