(読み)しぶ(英語表記)persimmon tannin

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説


しぶ
persimmon tannin

柿渋のことで,生渋ともいう。未熟のカキをつぶして水とともに密閉した容器中で数日放置したのち,ろ別した上澄み一番渋である。同じことを繰返せば二番渋がとれる。使用するには半年ぐらい密閉保存したものがよい。赤褐色ないし黒褐色を呈し,タンニンに富む (2~3%) 。渋紙製造,木材塗料,漁網染料,漆塗りの下地などに用いる。

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デジタル大辞泉の解説

しぶ【渋】

渋い味。「を抜く」
柿渋」の略。「をひく」
栗の実などの外皮の内側にある渋みをもった薄い皮。渋皮。
物からしみ出る赤黒い液体。
水などのあか。さび。水渋(みしぶ)。「鮎(あゆ)(=錆(さび)鮎)」
割に合わないこと。また、それを不満とする気持ち。
「まさかに―の出るやうな乱暴もして歩かぬが」〈伎・上野初花

じゅう【渋〔澁〕】[漢字項目]

常用漢字] [音]ジュウ(ジフ)(慣) [訓]しぶ しぶい しぶる
〈ジュウ〉
なめらかに進まない。しぶる。「渋滞晦渋(かいじゅう)難渋
しぶい。にがにがしい。「渋面苦渋
〈しぶ〉「渋柿(しぶがき)渋紙渋渋茶渋

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百科事典マイペディアの解説

渋【しぶ】

植物,特に未熟な果実や種子に多く含まれるタンニン質のこと。カキ渋が代表的。一般に,果実を臼(うす)で砕いて搾汁した一番渋および,このかすを再び砕いて搾汁した二番渋までを採る。収斂(しゅうれん)性,防腐・防水性を利用し,家具の漆下地,渋紙,番傘(ばんがさ),漁網などに塗布したり,皮のなめしなどに使用する。

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大辞林 第三版の解説

しぶ【渋】

渋い味。渋み。
渋みの成分。植物界に広く分布し、未熟な果実や種子に特に多い。 → タンニン
柿渋。 「 -を引く」
液体に溶けていた物質が、沈殿したり、ほかのものについたりしたもの。 「茶-」
物からしみ出た赤黒い液。
割に合わないという不平や不満。 「 -の出るやうな乱暴もして歩かぬが/歌舞伎・天衣紛」
[句項目] 渋が抜ける 渋を食う

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説


しぶ

いわゆる渋味を呈する物質の総称。主成分はタンニン質で、タンパク質を凝固させる性質があり、舌の粘膜タンパク質を凝固させて収斂(しゅうれん)性の渋味を感じさせる。柿渋(かきしぶ)が代表的なもので、ほかに茶渋などがある。未熟のカキをつぶして水とともに密閉した容器中で数日放置したのち、濾過(ろか)した上澄みが渋で、1年くらい密閉保存してから用いる。柿渋は赤褐色ないし黒褐色の液で、タンニンを2~3%含み、家具の漆(うるし)下地、番傘、渋紙、木材、漁網、綿布などに塗布して用いる。これは、柿渋のタンニンが塗布物の中に吸収されて不溶性物質となり、防腐性と防水性を与えるためである。[吉田精一・南川隆雄]

食品

食品中の渋の代表的なものは柿渋や茶渋である。このほか、野菜などのあく(灰汁)にも含まれ、いずれもタンニン系の物質で渋味がある。柿渋は、水溶性の形では味覚に渋味を与え、食用にならない。そこで、干したり、湯やアルコールで処理するなどして、タンニンを水に不溶性の形にして食用する。これを渋抜きとよんでいる。茶渋は、茶の種類により状態が異なる。緑茶ではタンニンそのままであるが、ウーロン茶のような半発酵茶ではタンニンがいくぶん酸化し、紅茶のような発酵茶では完全に酸化している。野菜では、ゴボウやヤマノイモなどにはポリフェノール化合物とよばれるタンニン系の物質があり、空気酸化によって褐色になる。リンゴ、ビワなどの果物の一部も同様である。酸化防止のためには、酢などの酸や、薄い食塩水などが効果をもつ。野菜類の場合は、タンニン系物質が多いと褐色になるだけでなく、あくとして味がよくないので、通常あく抜きをする。[河野友美・山口米子]
『吉田精一・南川隆雄著『高等植物の二次代謝』(1978・東京大学出版会) ▽石倉成行著『植物代謝生理学』(1987・森北出版) ▽樋口隆昌編著『木質生命科学シリーズ2 木質分子生物学』(1994・文永堂出版) ▽寺田昌道著『柿渋クラフト――柿渋染めの技法』(2000・木魂社)』

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精選版 日本国語大辞典の解説

しぶ【渋】

[1] 〘名〙
① 渋柿などを食べた時の舌を刺激するしぶい味。
※名語記(1275)六「柿のしぶ、如何。答渋也。〈略〉よきかとて、すふほどに、しぶければ、はきすつる也」
② (多く「みしぶ(水渋)」の形で用いられて) 水などのあか。さび。→みしぶ
③ 栗などの実の外皮の内側にある渋みをもった薄い皮。渋皮。
※播磨風土記(715頃)揖保「此の栗の子(み)、本(もと)、刊(けづ)れるに由りて、後も渋なし」
④ (「かきしぶ(柿渋)」の略) 渋柿の実からしぼり取った渋みのある薄茶色の液体。また、その色。防腐剤、補強剤として紙、うちわ、漁具などに塗る。主成分はタンニン。渋汁。
※山科家礼記‐文明一二年(1480)六月二四日「当所のかきとり、しふをしほる也」
⑤ 樹皮から分泌される液。やに。
※歌舞伎・幼稚子敵討(1753)二「それ、しぶと脂(やに)とに固まる松。いけるものじゃない」
⑥ 物からしみ出る赤黒い液。さび。
⑦ 割に合わないこと。また、割に合わないという不平や不満。苦情。→しぶ(渋)が出るしぶ(渋)を食う
※歌舞伎・上総綿小紋単地(1865)三幕「こりゃ成田山の積金だな、おぬしが金でもねえものを、遣った跡で渋じゃあねえかえ」
[2] 〘形動〙 物惜しみするさま。
※洒落本・浪花花街今今八卦(1784)「秋風(シブナ)客の多きゆへなるべし」

しぶ・い【渋】

〘形口〙 しぶ・し 〘形ク〙
① 渋柿をかじったような、舌をしびれさせるような味である。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)八「苦く渋(シフク)して滋き味無けむ」
※虎明本狂言・合柿(室町末‐近世初)「さればこそしぶいが一定じゃ、そうじてしぶがきをくふては、うそがふかれぬと聞及ふだが誠じゃよ」
② 声などがなめらかでない。ぎこちない。
※按納言集(1186‐87頃)「鶯の声またしぶく聞ゆなりすだちのをのの春のあけぼの」
③ 金を出すのをいやがるさまである。けちである。吝(しわ)い。
※俳諧・葎亭句集(1801)四「さし鯖や渋き舅の酒きげん」
④ 華美でなく、地味で落ち着いた趣がある。落ち着いた深い味わいがある。くすんでいて美しい。
※雑俳・柳多留‐一二三(1833)「人間も霜がかかると渋く成り」
※西洋道中膝栗毛(1874‐76)〈総生寛〉一二「二上りの極渋(シブ)い元歌だ一番もうかるぜ」
⑤ 不平そうである。にがりきった表情である。不機嫌そうである。
※咄本・新板一口ばなし(1839)三「食へなんだ柿の銭払うた、しぶい顔して」
※吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉三「主人の顔は渋い」
⑥ 物がなめらかに動かない。
※米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉一「車廂穏かなるも、転輪の猶渋きを覚ふなり」
しぶ‐がる
〘自ラ五(四)〙
しぶ‐げ
〘形動〙
しぶ‐さ
〘名〙
しぶ‐み
〘名〙

しぶ・く【渋】

〘自カ四〙 はかばかしく進まなくなる。とどこおる。しぶくる。しぶる。
※今昔(1120頃か)一九「蔀の本に風被渋(しぶかれ)て」
※新古今(1205)冬・五五六「高瀬舟しぶくばかりに紅葉葉の流れてくだる大井川かな〈藤原家経〉」

しぶ・し【渋】

〘形ク〙 ⇒しぶい(渋)

しぶり【渋】

〘名〙 (動詞「しぶる(渋)」の連用形の名詞化) 渋ること。なめらかに進まなくなること。
葬列(1906)〈石川啄木〉「筆の渋りに汗ばみ乍ら此苦業を続けるのだ」

しぶ・る【渋】

[1] 〘自ラ五(四)〙
① 事物がつかえがちになったり、なめらかに進行しなくなったりする。すらすらと動かなくなる。
※京大図書館本周易抄(1477)六「輪が泥がねばいほどに輪がしぶるなりぞ」
※俳諧・去来抄(1702‐04)修行「猶好句あらんとすれば、却て句しぶり」
② 気がすすまなくなる。ためらう。
※蜻蛉(974頃)中「いかにせん、こたみはよにしぶらすべくもものせじと、おもひさはぐほどに」
※宇津保(970‐999頃)蔵開上「左衛門督なども、いたくしぶりしを、制しの給などして、おとどのし給へるぞかし」
③ 渋り腹になる。
※御伽草子・福富長者物語(室町末)「しょんちょとしぶり、ほがみさしつつこときりきりと病む」
④ 体の機能が不調になり十分働かなくなる。しびれる。
※全九集(1566頃)四「眼しぶりかゆく、胸をどりさわぎ、臂いたみあがらず已上皆たんのしわざなり」
[2] 〘他ラ五(四)〙 あるものごとに対して、したくないという態度を見せる。
※ハッピネス(1973)〈小島信夫〉二「途中で引き揚げることをしぶるし」

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世界大百科事典内のの言及

【タンニン】より

…動物の皮を,通水性,通気性に乏しい革にすることができる植物成分。渋(しぶ)ともいう。原料は樹皮,実,葉,木部などで,多くはこれらの熱水可溶物である。…

※「渋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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