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火山の噴気孔,あるいは溶岩湖から放出されるガスの総称。地熱地帯,温泉,海底火山から放出されるガスも含めることがある。同一火山でも個々の噴気孔の温度やガスの化学組成は異なっている。噴気孔の温度は最低50℃からまれに1000℃に達する。火山ガスの主成分は,水蒸気(80%以上,多くの場合99%をこえる)である。次いで二酸化炭素が多い。硫化水素,二酸化硫黄,塩化水素,フッ化水素,窒素,水素,一酸化炭素,メタン,アンモニア,希ガスなどは火山ガスの中に常に含まれている。時として空気に由来する酸素が検出されることがある。これらのガス以外にも火山ガスの中には,ホウ素,ナトリウム,カリウム,マグネシウム,カルシウム,アルミニウム,ケイ素,鉄,鉛,ビスマスなどの存在が知られているが,どのような化合物として存在しているかはわかっていない。
地下のマグマから分離したガスが上昇する過程で,ガス相内での化学反応と,ガスと周囲の岩石との化学反応の両方がおこる。したがって地表に達した火山ガスはマグマの中にあったガスとは化学的に異なったものになっている。火山ガスは,マグマの内で生産されたガス(一次成分)とガスの上昇過程で加わったり除かれたりしたガス(二次成分)の混合物である。
桜島の南岳は1953年以来約30年間継続的に噴火活動をしている。南岳から放出されるHCl/SO2比は,噴火活動の激化に先立って高くなることから,火山ガスの化学組成の連続的観測によって噴火予知ができる可能性が生じた。現在は主として火山性地震の連続的観測によって噴火予知が行われているが,近い将来火山ガスによる噴火予知が加わることになろう。
世界中の火山(海底火山は除く)から放出される火山ガスの量は,噴火が不規則に起こることもあって正確には見積もれないが,年間平均109~1010t(主として水)という見積りがある。この見積りを使うと,1年間に全地球に降る雨4×1014t中の塩素109tのうち,火山ガスによる寄与は1/1000から1/100程度である。したがって雨の中の塩素は主として海塩に由来するといえよう。
地球ができたときは,非常に高温で外側はほとんど溶けており,地球そのものがマグマのようなものだったとすると,初期の地球の内部から放出されるガスはまさに火山ガスといってよい。地球が徐々に冷却して海ができると,ガスのうちで水に溶けやすい成分は海水に吸収され,大気の主成分は窒素になる。地球に生命が発生し,光合成で酸素が加わって現在の空気になった。金星の大気がCO2主成分であるのは,海ができないのでCO2を吸収することができなかったためであろう。
→大気
執筆者:松尾 禎士
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地下のマグマに溶け込んでいた揮発性成分が、気体となって地表に噴出するもの。火山の噴火はその圧力を原動力として引き起こされ、それに伴って溶岩などが噴出する。固形物を伴わずにガスだけを放出するのを噴気という。火山ガスは、平常も火口、噴気孔、温泉などから徐々に噴出されることが多い。火山ガスの主成分は水蒸気であり、水の沸点以下の温泉ガスを除くと、95~99.5%をも占める。そのほか、二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化硫黄(いおう)、硫化水素、塩素、フッ素、窒素、水素などのいくつかを含む。噴気の温度・量や組成の変化は、噴火予知の手掛りになりうる。噴気孔には、火山ガスから凝固・析出した種々の昇華物ができていることが多い。
[諏訪 彰]
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(井田喜明 東京大学名誉教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
…火山活動を機器を用いて観測すること。地震観測,地殻変動観測,電磁気的観測,熱的観測,重力測定等の地球物理学的諸観測のほか,火山ガス,地下水,温泉水等の化学的測定がある。マグマが地下深部から上昇し,マグマ溜りの圧力が増大し,さらに火道を上昇してくるに伴い,諸種の現象が生じる。…
…噴火の様式・規模はきわめて変化に富み,火山周縁の環境も多様なので,発生する災害の種類や規模もさまざまである。一般に噴火に直接起因する災害(一次災害)は最も頻度が高く,降下火砕物の落下堆積,火砕流(熱雲を含む),ベースサージ,ラハールなどの流下堆積,溶岩の流下,および毒性の強い火山ガスなどにより発生している。また,噴火に伴う空振,爆風,地震,津波,山体崩壊と岩屑流,地殻変動,地形変化や,二次的に発生する土石流,泥流,洪水などによっても深刻な災害が発生する。…
※「火山ガス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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