デジタル大辞泉 「物の哀れ」の意味・読み・例文・類語 もの‐の‐あわれ〔‐あはれ〕【物の哀れ】 1 本居宣長が唱えた、平安時代の文芸理念・美的理念。対象客観を示す「もの」と、感動主観を示す「あわれ」との一致するところに生じる、調和のとれた優美繊細な情趣の世界を理念化したもの。その最高の達成が源氏物語であるとした。2 外界の事物に触れて起こるしみじみとした情感。「わがアントニオは又例の―というものに襲われ居れば」〈鴎外訳・即興詩人〉[類語]趣おもむき・風情・気韻・風韻・幽玄・気分・興味・内容・興趣・情趣・情調・情緒・風趣・風格・余情・余韻・詩情・詩的・味わい・滋味・醍醐味だいごみ・妙味・雅味・ポエジー・ポエティック・ポエトリー・ロマンチック・メルヘンチック・リリカル・センチメンタル・ファンタジック・ファンタスティック・幻想的・夢幻的・神秘的・ドリーミー・感傷的 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例 Sponserd by
精選版 日本国語大辞典 「物の哀れ」の意味・読み・例文・類語 もの【物】 の 哀(あわ)れ [ 一 ] 物事にふれてひき起こされる感動。多くは「おかし」「おもしろし」などの知的興味やはなやかさの感覚とは違った、しめやかな感情・情緒についていう。① 人の心を、同情をもって十分に理解できること。人情の機微のわかること。また、その人情、愛情など。[初出の実例]「楫取、もののあはれもしらで〈略〉はやく往なんとて」(出典:土左日記(935頃)承平四年一二月二七日)② 物事にふれて起こる、しみじみとした回顧の感慨。[初出の実例]「よろづ物のあはれなむ思ひいでられ、昔の人の声などおもほえ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)内侍督)③ 物事や季節などによってよび起こされる、しみじみとした情趣。折からの感興。[初出の実例]「春はただ花のひとへに咲くばかり物のあはれは秋ぞまされる〈よみ人しらず〉」(出典:拾遺和歌集(1005‐07頃か)雑下・五一一)④ 何かに深く感動することのできる感じやすい心。情趣や風流を理解し感じとることのできる情緒的教養。[初出の実例]「清範、講師にて、説くことはたいと悲しければ、ことにもののあはれ深かるまじき若き人々、みな泣くめり」(出典:枕草子(10C終)一三五)⑤ 悲哀や同情を感じさせるような気の毒なさま。[初出の実例]「物(モノ)のあはれをとどめしは、去大名の、北の御方に召つかはれて、日のめもついに、見給はぬ女郎達や、おはした也」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)四)[ 二 ] 本居宣長が提唱した、平安時代の文芸の美的理念。外界である「もの」と、感情を形成する「あわれ」との一致する所に生ずる調和した情趣の世界を理念化したもの。自然・人生の諸相にふれてひき出される優美・繊細・哀愁の理念。その最高の達成が「源氏物語」であると考えた。[初出の実例]「これすなはち物語は、物の哀をかきしるしてよむ人に物の哀をしらするといふ物也」(出典:紫文要領(1763)上)物の哀れの補助注記「あはれ」は、古くは感動詞として、喜・怒・哀・楽のすべてにわたって発せられる言葉だったが、「もの」がつくと、「ものあはれ」も「もののあはれ」も、「哀」に限定されるようになる。 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例 Sponserd by