破天荒(読み)はてんこう

故事成語を知る辞典「破天荒」の解説

破天荒

作物の実らない土地を切り開くこと。それまでだれもできなかったことを成し遂げることのたとえ。

[使用例] 近代ロマンチックの自由なる熱情を味い、更に破天荒なるストラウスの音楽の不調和、無形式を讃賞した[永井荷風*あめりか物語|1908]

[使用例] ぼくはなんとなく破天荒な高根圭一がだんだん好きになっていたのだが、正面をむいて話しかけられるとすこしどぎまぎした[椎名誠*新橋烏森口青春篇|1987]

[由来] 「唐摭言―二」や「北夢瑣言―四」に見える話から。唐王朝の時代には、全国の各地で官吏を採用するための予備試験が行われ、その合格者が、都で行われる本試験へと送り込まれていました。ところが、けいしゅう(現在の湖北省・湖南省)から送り込まれる受験者たちは、なかなか本試験に合格しません。そのため、「天荒(作物の実らない土地)」からの受験者だと呼ばれていました。しかし、八五〇年、りゅうぜいという人が初めて合格。荊州長官は大いに喜び、「天荒を破る」という偉業を果たした劉蛻に、七〇万銭もの大金を与えたということです。

[解説] ❶「きょ」と呼ばれる官吏採用試験が始まったのは、六世紀の終わりごろ、唐の一つ前の王朝、ずいでのこと。世界史上、最難関の試験だったと言われています。その合格者が皆無だった荊州の人々は、さぞかし肩身の狭い思いをしていたのでしょう。長官の喜びようがよく伝わってくるエピソードです。❷本来の「破天荒」は、「だれもできなかったことを成し遂げた」人に対して使うことば。しかし、現在ではやや変化して、「だれもやらないような、豪快で大胆なことをする」場合に用いられるようになってきています。

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精選版 日本国語大辞典「破天荒」の解説

は‐てんこう ‥テンクヮウ【破天荒】

〘名〙 (形動) (「天荒」はまだ開かれていない荒蕪の地。また、そのような状態。唐代に荊州から官吏の採用試験の合格者が一人も出ず、天荒と呼ばれたが、大中年間(八四七‐八六〇)に劉蛻(りゅうぜい)が初めて及第したので、それを天荒を破ったと称したという「唐摭言‐巻二」「北夢瑣言‐巻四」の記事による) 天地未開の混沌とした状態をきりひらくこと。転じて、今までだれも行なえなかった事を成しとげること。前例のないこと。また、そのさま。前代未聞(ぜんだいみもん)。未曾有(みぞう)
※真善美日本人(1891)〈三宅雪嶺〉日本人の任務「破天荒の新理論を組成し」
※或る「小倉日記」伝(1952)〈松本清張〉七「若い美人が遊びにくることは殆ど破天荒(ハテンコウ)なことだった」

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デジタル大辞泉「破天荒」の解説

は‐てんこう〔‐テンクワウ〕【破天荒】

[名・形動]前人のなしえなかったことを初めてすること。また、そのさま。前代未聞。未曽有みぞう。「破天荒の試み」「破天荒な大事業」
[補説]「天荒」は未開の荒れ地の意。の時代、官吏登用試験の合格者が1名も出なかった荊州は人々から「天荒」といわれていたが、劉蛻りゅうぜいが初めて合格して「天荒を破った」といわれたという、「唐摭言とうせきげん」「北夢瑣言ほくむさげん」の故事から。
文化庁が発表した「国語に関する世論調査」で、「だれも成し得なかったことをすること」と「豪快で大胆な様子」の、どちらの意味だと思うかを尋ねたところ、次のような結果が出た。
 平成20年度調査令和2年度調査
だれも成し得なかったことをすること
(本来の意味とされる)
16.9パーセント23.3パーセント
豪快で大胆な様子
(本来の意味ではない)
64.2パーセント65.4パーセント

[類語]まれたま珍しい貴重珍重得難い貴い稀有高貴大切重要異色異彩珍貴珍稀千金耳寄り掛け替えのない希少希代未曽有空前空前絶後前代未聞

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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