希有(読み)ケウ

デジタル大辞泉 「希有」の意味・読み・例文・類語

け‐う【希有/×稀有】

[名・形動]
めったにないこと。とても珍しいこと。また、そのさま。まれ。「―な(の)出来事
不思議なこと。また、そのさま。
「ここに―なは『いるまん』の『しめおん』じゃ」〈芥川・奉教人の死〉
とんでもないこと。けしからぬこと。
「―のわざする男かなと、ののしるときに」〈宇治拾遺・二〉
(「希有の命」の形で)危うく死を免れること。
平氏の大将維盛、通盛、―の命生きて加賀国へ引き退く」〈平家・七〉
[類語]又と無い又無い無二無比無双無類比類ない類がない並びないたぐいまれ又と二度と二度と再びめった千載一遇盲亀もうき浮木ふぼく一期一会いちごいちえ見せ場決め所思いがけない思いがけず待てば甘露の日和ひよりあり折よく僥倖ぎょうこうここぞ一世いっせ一代最初で最後図らずも決定的瞬間契機珍しい貴重珍重得難い貴い高貴大切重要異色異彩珍貴珍稀大事だいじ肝要肝心緊要枢要かなめきも肝心要有意義意義深い千金耳寄り掛け替えのない奇跡的奇しくも期せずしてまぐれたま未曽有空前絶後前代未聞不可思議

き‐ゆう〔‐イウ〕【希有/×稀有】

[名・形動]けう(希有)

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「希有」の意味・読み・例文・類語

け‐う【希有・稀有】

  1. 〘 名詞 〙 ( 形動 )( 「け」「う」は「希」「有」の呉音 )
  2. めったにないこと。珍しいこと。
    1. [初出の実例]「但聞是希故云希有」(出典:勝鬘経義疏(611)歎仏真実功徳章)
    2. 「『琉球風炉に、チンカラ、なぞといふがありヤス』『ハテけうな名じゃな』」(出典:洒落本・文選臥坐(1790)東北の雲談)
    3. [その他の文献]〔孔叢子・雑訓〕
  3. 不思議なこと。
    1. [初出の実例]「是に希有の想を発して禅師に白して言はく」(出典:日本霊異記(810‐824)上)
    2. 「いとあやしうけうのことをなんみ給へし」(出典:源氏物語(1001‐14頃)手習)
    3. [その他の文献]〔法華経‐序品〕
  4. ( 多く悪い事について ) 意外であること。とんでもないこと。
    1. [初出の実例]「御房は希有(けうの)事云ふ者かな」(出典:今昔物語集(1120頃か)二四)
    2. 「こは希有の狼籍かな」(出典:徒然草(1331頃)一〇六)

希有の語誌

( 1 )仏典を通じて受け入れられた語か。
( 2 )中世には「希有の命を生きる」のような慣用句が生じて、九死に一生を得るの意味で、軍記物語に多く用いられている。


き‐ゆう‥イウ【希有・稀有】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「きゆう」は「希有」の漢音 ) 存在がまれであること。めったに出現しないこと。普通は呉音で「けう」という。〔広益熟字典(1874)〕
    1. [初出の実例]「『浅草寺縁起』の序文に〈略〉爾来当山は一千三百余年の久しきにわたり、皇国希有(キイウ)霊刹(れいさつ)」(出典:浅草紅団(1929‐30)〈川端康成二一)

け‐ぶ【希有・稀有】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙 ( 「けう(希有)」の変化した語 ) ふしぎなさま。奇妙なさま。
    1. [初出の実例]「ヤア米屋へ米を売るとは、ムム払ひ米か、どれどれ、ハアしたがこいつ、けぶな米じゃわい」(出典:咄本・軽口大黒柱(1773)一)

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普及版 字通 「希有」の読み・字形・画数・意味

【希有】けう

めったにない。きわめて珍しい。〔老子、七十四〕夫(そ)れ大匠に代りて(き)るは、其の手を傷つけざることること希(まれ)なり。

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