ジネンジョ,ツクネイモなどのヤマノイモ類をおろし,みそ汁やすまし汁ですりのばした料理。〈言伝(ことづて)汁〉という異称があるが,これはとろろ汁で食べると飯が進むため,〈飯(いい)やる〉を〈言いやる〉にかけた呼名だと《醒睡笑(せいすいしよう)》は書いている。吸物味に仕立てると〈吸いとろ〉,濃いめの味にして麦飯にかけて食べるのを〈麦とろ〉と呼び,薬味にはアオノリを使うことが多い。芭蕉の句にある東海道丸子(まりこ)宿(現,静岡市駿河区)のとろろ汁,壬生(みぶ)狂言の演目の一つにもなっている京都山端(やまばな)(現,左京区)のとろろは,古くからの名物であった。とろろ汁の調理法を記載した文献では江戸初期の《料理物語》(1643)が古く,それによると,アオノリをヤマノイモとすりまぜてみそ汁でのばし,薬味にはコショウがよいとしている。室町後期には行われていたものと思われ,《多聞院日記》天正10年(1582)11月27日条その他に〈とろろ〉の語が散見される。
料理用語としての〈とろろ〉はそれよりやや古く,室町中期の《新撰類聚往来》に〈鯛(たい)とろろ〉というのが見える。《庖丁聞書》(室町末期)によると,これはタイをあぶって身を細かくむしり,冷たいみそ汁に入れたもので,鳥肉を用いて同じつくり方をする〈鳥とろろ〉という料理もあった。1800年(寛政12)刊の《万宝料理秘密箱》第2編には〈とろろあわび〉というのがある。アワビをすり身にしてみそ汁ですりのばすもので,ジネンジョを加えてもよく,アオノリを入れるとなっている。
→ヤマノイモ
執筆者:鈴木 晋一
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