(読み)アツモノ

デジタル大辞泉 「羹」の意味・読み・例文・類語

あつ‐もの【×羹】

《「熱物あつもの」の意》魚・鳥の肉や野菜を入れた熱い吸い物
[類語]汁物吸い物澄まし汁お澄ましつゆお付け味噌汁おみお付け粕汁納豆汁薩摩汁けんちん汁豚汁とろろ汁三平汁のっぺい汁鯉濃こいこく水団すいとん

かん【×羹】

唐音
肉や野菜を汁を多くして煮たもの。あつもの。〈文明本節用集〉
雑煮。
「正月の祝に、晴れなる座敷へ―を据ゆるに」〈咄・醒睡笑・六〉
餅菓子もちがし
「『常に食べぬ物でござあった』『それならば―の類であらう』」〈虎明狂・文蔵

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「羹」の意味・読み・例文・類語

あつ‐もの【羹】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 野菜や魚肉を熱く煮た吸い物。あついもの。あつかもの。
    1. [初出の実例]「醤酢(ひしほす)に蒜(ひる)(つ)き合(か)てて鯛(たひ)願ふわれにな見えそ水葱(なぎ)の煑物(あつもの)」(出典:万葉集(8C後)一六・三八二九)
    2. 「大いなる銀(しろがね)提子(ひさげ)に、若菜のあつもの一鍋」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開中)
  3. うどんをいう女房詞
    1. [初出の実例]「しよこんあつもの。二こんそろそろ」(出典:御湯殿上日記‐慶長四年(1599)一二月一六日)

かん【羹】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 肉や野菜を煮た熱い料理。あつもの。〔文明本節用集(室町中)〕〔礼記礼器
  3. 雑煮。地方によっては米・麦粉の団子汁をいう。
    1. [初出の実例]「惣御門徒衆は二種肴にて、芋・豆腐のかんあり」(出典:本福寺跡書(1560頃))
  4. もち菓子。
    1. [初出の実例]「三宝膳、ろちょうかん、べっかん、うんせんかん、竹やうかん」(出典:宗五大草紙(1528)かんの名の事)

こうカウ【羹】

  1. 〘 名詞 〙 肉、菜などを、汁を多くして煮たもの。すいもの。あつもの。
    1. [初出の実例]「一椀、羹一杯を毎僧に行ず」(出典:正法眼蔵(1231‐53)看経)
    2. [その他の文献]〔礼記‐曲礼上〕

ケン【羹】

  1. 〘 名詞 〙 中華料理で、汁物。〔現代文化百科事典(1937)〕

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普及版 字通 「羹」の読み・字形・画数・意味


19画

(異体字)
26画

[字音] コウ(カウ
[字訓] あつもの

[説文解字]

[字形] 会意
羔(こう)+美。初文はに作り、(れき)+羊。鬲を以て羊を烹(に)る象。羹はその篆文で、その形も羹の左右(きよう)を加えて、煮て湯気のあがる意を示している。〔説文〕三下に正字をに作り「五味(和)する(羹)なり」という。また省文二、小篆の一字を加えており、羹は小篆の字である。

[訓義]
1. あつもの。
2. 肉汁。

[古辞書の訓]
和名抄〕羹 楚辭に云ふ、るを羹と曰ふ、阿豆毛乃(あつもの)〔名義抄〕羹 アツモノ〔字鏡集〕羹 アツモノ・コナカキ・コナカヘ

[熟語]
羹魁羹鱠・羹・羹・羹献・羹元・羹・羹粥・羹・羹・羹湯羹飯羹沸・羹本・羹羹椀
[下接語]
蛙羹・羹・羹・梟羹・羹・羹・菜羹・羹・羹・餉羹・大羹・斗羹・豆羹・肉羹・飯羹・沸羹・脯羹・羊羹・酪羹・羹・和羹

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

百科事典マイペディア 「羹」の意味・わかりやすい解説

羹【あつもの】

汁物など火を通した熱い料理の古称。これに対し膾(なます)などの冷たい料理を〈うすもの〉という。
→関連項目羊羹

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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「羹」の解説

あつもの【羹】

肉・野菜などを入れた熱い汁物。◇「熱い物」の意。

出典 講談社和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【羊羹】より

…和菓子の一種。現在は甘みの菓子であるが,もともとは中国で古くからつくられていた羊肉の羹(あつもの),つまり汁であった。日本で初めて〈羊羹〉の語が見られるのは南北朝~室町初期に成立した《庭訓往来》などの往来物においてであり,このときすでに汁でなくなっていた。…

【中国料理】より

…この語からもわかるように後世の中国料理がもっとも得意とする〈炒〉の技法はまだない。この当時は〈羹〉が最重要な料理であったが,これは一種の肉のスープか肉のあつもので,味の調和が特徴である。主な料理法は煮,蒸,烤,燉(とん),醃(塩漬け)と晒乾(日干し)に要約できよう。…

※「羹」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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