行宮(読み)アングウ

デジタル大辞泉 「行宮」の意味・読み・例文・類語

あん‐ぐう【行宮】

《「あん(行)」は唐音》天皇の行幸のときに旅先に設けた仮宮。行在所あんざいしょ
[類語]皇居御所宮城宮中内裏王宮宮殿宮廷離宮禁中禁裏畏き辺り王城大内山雲上雲の上九重ここのえ

こう‐きゅう〔カウ‐〕【行宮】

あんぐう(行宮)」に同じ。

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精選版 日本国語大辞典 「行宮」の意味・読み・例文・類語

こう‐きゅうカウ‥【行宮】

  1. 〘 名詞 〙 天皇が行幸のとき、その地に設ける仮の御殿かりみや。あんぐう。あんきゅう。
    1. [初出の実例]「凡行宮外営門、次営門与宮門同」(出典:律(718)衛禁)
    2. 「行宮(かうきう)に月を見れば心を傷ましむる色 夜の雨に猿を聞けば腸を断つ声〈白居易〉」(出典:和漢朗詠集(1018頃)下)

行宮の補助注記

「あんぐう」とよむのは禅宗渡来以後とされる。


あん‐きゅう【行宮】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「あん」は「行」の唐宋音 ) =あんぐう(行宮)
    1. [初出の実例]「行宮(アンキウ)に月無き夏の夜は、蛍火(けいくゎ)を集めて燭(とぼしび)に易(か)ふ」(出典:太平記(14C後)四)

あん‐ぐう【行宮】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「あん」は「行」の唐宋音 ) 天皇が行幸したとき、仮に設けられた御所。あんでん。仮宮(かりみや)。〔白居易‐長恨歌

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改訂新版 世界大百科事典 「行宮」の意味・わかりやすい解説

行宮 (あんぐう)

頓宮とも書き,〈かりみや〉ともいった。天皇の諸国巡幸のとき,駐輦・宿泊のために設けられる施設・建物。平城宮・平安宮などの宮が,天皇常住のためのものであるのに対し,かりに造った宮の意。奈良時代には,巡幸に先だつ1ヵ月ほど前に,あらかじめ行程をはかって造営されるのがふつうであった。似た語句に〈行在所(あんざいしよ)〉がある。養老令の儀制令に,行幸中の天皇のことを〈車駕(きよが)〉といい,車駕の所に赴くことを,行在所にもうでるといえ,と規定している。また《続日本紀》神亀3年(726)10月10日条に,〈行在所に供奉せる者〉と,〈行宮の側近の百姓〉のごとく,行在所と行宮の両語句を使い分けている。これらのことから考えると,行宮が,付属の諸建物をも含む広い範囲を指す語であるのに対し,行在所は,行宮の中での天皇の御在所のみを指す語ではなかろうか。しかし律令制度の衰退とともに,その区別は厳密でなくなった。これは盛時のごとく,付属建物までは建設されず,既存の建物を利用するに至ったことによるものであろう。また南北朝時代に,南朝方の後醍醐天皇以下4代の天皇の居処である吉野天野賀名生(あのう)なども,一般に行宮といっているが,これは南朝方が,名分上,地方行幸という形式をとったことによる。なお天皇に代わって伊勢神宮に奉仕する斎宮が,京より伊勢国に下向する間の宿泊施設をも〈頓宮〉という。これは斎宮が神宮奉斎の点で,天皇の代理という性格を持っていたからであろう。
行幸
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普及版 字通 「行宮」の読み・字形・画数・意味

【行宮】あんぐう

行在所。仮御所。唐・王建〔故行宮〕詩 寥(れうらく)たり、古行宮 宮として紅なり 白頭の宮女在り 坐して玄宗

字通「行」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「行宮」の意味・わかりやすい解説

行宮
あんぐう

天皇の行幸(ぎょうこう)時の仮宮。「かりみや」とも読む。『延喜式(えんぎしき)』には、10日以上の行幸に際しては、あらかじめ造行宮使を任命すると規定している。『令義解(りょうのぎげ)』などの用法によると、行在所(あんざいしょ)が抽象的に天皇の所在をいうのに対し、行宮は具体的に仮宮そのものをさしたらしいが、のちには同じ意味に用いられた。明治以後の公式の文書では、天皇については行在所、皇后、皇太子などの行啓(ぎょうけい)中の在所は御泊所(ごはくしょ)といった。

[橋本義彦]

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百科事典マイペディア 「行宮」の意味・わかりやすい解説

行宮【あんぐう】

頓宮

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世界大百科事典(旧版)内の行宮の言及

【オルド】より

…転じて,宮廷,本営,後宮の意味にも使われる。原義は〈中央〉を意味するといわれ,中国文献には遼代から現れて,行宮,行帳などと漢訳される。君主権力が強化されるに従い組織・規模が整備されていった。…

【頓宮】より

…後世では行在所(あんざいしよ)という。行宮(あんぐう)ともほぼ同義であるが,滞在が比較的長期にわたる場合とくに行宮と呼ぶことが多い。斎宮(さいぐう)の京都~伊勢間の休泊所をさしてもいうことがあり,奈良~平安時代の記録にみえる。…

※「行宮」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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