翻訳|berry
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
果実の一種で植物学的には液果と呼ばれる。果皮のうち中果皮,内果皮が水分の多い肉質の柔らかい組織となり,熟しても裂けず,やや堅い種子をもつものをいい,ブドウ,カキ,トマトなどがその例とされる。園芸学ではさらに広い意味でミカン類やナシ,リンゴを含めていう場合もあるが,一般には果物のうち欧米で小果類small fruitsと呼ばれる一群をさすことが多い。ブドウ,イチゴ,キイチゴ類,スグリ類,コケモモ類その他がこれに当たるが,日本では果樹としてこのうちブドウ,イチゴを除いたものを低木性果樹,または小果樹類といっている。ベリーと呼ばれる果実のなかには,キイチゴ類やイチゴのように植物学的には液果でないものも含まれる。前者は集合果であるし,後者は花托が肥大した部分を食用にしている偽果である。ベリーを生じる小果樹類にはいろいろな科の植物が含まれるが,多くは温帯北部に原生し,栽培の歴史は比較的新しい。野生の果実を利用しているのもあるし,改良の著しく進んだものもある。
一般に低木で比較的手がかからず,早く結果し,果実は小型で愛らしく,色調や風味に変化があり,生食のほか,料理,菓子の材料とされ,ジャム,ゼリー,果実酒などに用いられる。また花や紅葉がきれいで観賞用になるなど,営利栽培,家庭栽培,つみとり園用,盆栽用にも注目されてきている。ただ果実の収穫に労力がかかることや,日もちの悪いことなどに問題がある。以下におもなものをあげる。
(1)キイチゴ類 バラ科キイチゴ属Rubusの植物で,ラズベリーとブラックベリーに大別される。ラズベリーは冷涼地に適し,風味のよい赤実種が好まれ,北ヨーロッパ,北アメリカで多く栽培され,黒・紫実種は北アメリカのやや暖地寄りに栽培される。ブラックベリーは暖地に適し,主としてアメリカ西海岸で栽培され,実は黒色。暖地産の果実はまろやかで甘みがある。近年つる性大果種,赤褐色で風味あるものが発見・育成され,ラズベリーとの雑種,その他の交雑種,とげなし種も発表されている。イチゴとは違った独特な風味はその果実の構造の相違からもきている。日本には本来ラズベリーの野生種は多く存在するが,ブラックベリーの群はない。
(2)スグリ類 ユキノシタ科スグリ属Ribesの低木で,スグリ(グーズベリー)とフサスグリ(カラント)とに大別される。耐寒性が強く北ヨーロッパが主産地。さわやかな酸味をいかしたゼリーやジュースがつくられる。レッドカラントは果実が美しいので盆栽用にもなる。ブラックカラントはビタミンCの多いジュースがとれるので将来性のある小果樹類とされるが,日本では多湿気候のために栽培が難しい。日本原生のスグリは果実が小粒で栽培価値は低い。
(3)コケモモ類 ツツジ科スノキ属Vacciniumの低木類で,ブルーベリー,クランベリー,コケモモに大別される。ブルーベリーとクランベリーは北アメリカで開発され,とくにブルーベリーは今世紀最も発展の目だつ果樹である。美しいブルーの果色とほのかな芳香を漂わせて生食にも加工にも適し,世界に進出しつつある。クランベリーも新大陸最初の感謝祭に使われて以来,ソースその他の加工用として利用され,水田のような湿地に栽培されて今日大きく発展している。澄明な赤と爽快な酸味が特徴である。コケモモはドイツを中心に開発されている。日本でも野生種の利用と栽培化の気運がでてきている。
(4)その他 スイカズラ科のエルダーベリー(ワイン用)など。日本では従来グミ,ユスラウメなどが小果樹類とされている。
液果を結実させ,鳥によって種子を分散させる方向に分化した植物の種は多い。それらは有毒あるいは不快な味やにおいがないかぎり,ベリーの予備種である。これからも多様なベリーが野生種から栽培化される可能性が残されている。
執筆者:松井 仁
フランス中部の地方名,旧州名。東はロアール川,西はクルーズ川,南はマシフ・サントラル(中央山地)の北麓,北はパリ盆地南部に至る地域の呼称で,おおむね現在の中部地方の南部を占めるシェール県とアンドル県の県域に対応し,これにロアレ,アンドル・エ・ロアールとクルーズ県の一部が含まれる。狭義ではシャンパーニュ・ベリションヌChampagne berrichonne地方を指すが,ときには,南と南東のボアショーBoishaut地方,南西のブレンヌ地方,北東のサンセロア地方などが,加えられることもある。シャンパーニュ・ベリションヌ地方は,ジュラ紀の石灰岩から成る平坦な地域で,小麦を中心に,大麦,トウモロコシ,ナタネ,ヒマワリなどの栽培が活発であるほか,羊の飼育などで知られる。しかし近年過疎化の現象が強まり,羊の飼育にも衰退の傾向がみられるようになった。東部ベリー地方のロアール川流域は泥土と砂の多い沖積土質で,林業や牧畜,農耕に利用され,南西部のブレンヌ地方は粘土と砂の地質で湖沼の多い荒地である。南東のボアショー地方は粘土質と石灰岩質の地質で牧畜に向いており,北東のサンセロア地方は石灰岩質の丘陵地帯でブドウの栽培が盛んである。
ベリー地方の主都はブールジュで,ガリア時代から中央山地一帯の主都として重きを成し,ベリー地方は12世紀までブールジュ大司教の支配下に置かれた。1137年,ルイ7世が大司教によってブールジュにおいてアキテーヌ公に任じられ,70年にはプランタジネット家のアンリ2世の攻撃の手からブールジュを守り,ベリー地方をカペー王朝の支配下にとどめた。1360年,善良王ジャン2世が公国を樹立し,第3子のジャンをベリー公に任命した。シャンティイ城にあるミニアチュールの傑作《ベリー公の時禱書》を作らせたことで名高い人物である。1418年,ベリー公国はのちのフランス王シャルル7世の手に移り,百年戦争の間,バロア家の拠点となった。その後フランス王家の王子の多くがベリー公を名のった。ルイ11世の兄弟や,シャルル10世の第2子などがその代表例である。
主要都市は,ブールジュのほか,アンドル河畔のシャトールー,シェール河畔のサンタマン・モンロンとビエルゾン,テオル河畔のイスーダンなどである。観光の名所には上記の諸都市のほか,バランセーやメイヤンの城館,ジョルジュ・サンドゆかりのノアンやラ・シャートル,アラン・フルニエの故郷ラ・シャペル・ダンジヨン,ノアルラックとフォンゴンボーの修道院がある。おもな名産にはサンセールの辛口の白ワインやシャビニョルのヤギのチーズなどがある。
執筆者:稲生 永
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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(篠崎恭久)
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…古くケルト人の一部族ビトゥリゲスがこの地を本拠としていたが,前52年のカエサルによる攻囲にはよく抵抗した。12世紀初頭ブールジュ子爵領の売却により王領地に編入されたが,その後,同市を中心とする旧ベリー州は公領とされ,親族封として何人かの親王に与えられた。なかでも,ジャン2世の子,ベリー公ジャンJean de France,duc de Berry(1340‐1416)は美術の守護者としても知られ,ランブール兄弟の手になる《ベリー公のいとも豪華なる時禱書》は同公の注文による。…
…アケビのように裂開するものもあるが,ふつうは裂開しない。内果皮が堅くならないものと堅くなるものがあり,前者を漿果(しようか)berry,後者を核果(石果)drupeとして分ける。漿果にはブドウ,レモン,メロン,バナナが,核果にはクワ,モモ,オリーブ,ココヤシがある。…
※「ベリー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
発見という行為の習得を目指す学習。または,発見という行為を通じて学習内容を習得することを目指す学習。発見学習への着想は多くの教育理論に認められるが,一般には,ジェローム・S.ブルーナーが『教育の過程』...
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