作る(読み)ツクル

デジタル大辞泉 「作る」の意味・読み・例文・類語

つく・る【作る/造る/創る】

[動ラ五(四)]ある力を働かせて、新しい物事・状態を生みだす。まとまった形のあるものにする。
材料・原料・素材などを用いたり、それに手を加えたりして、まとまりのあるものや意味のあるものに仕上げる。建物・器具物質・芸術作品などを製造製作する。「船を―・る」「米から酒を―・る」「草稿を―・る」

農作物などを、世話したり力を注いだりして、育てあげる。「野菜を―・る」「健全な人物を―・る」
㋑土地を耕す。「田を―・る」
「細道一つ残して皆畑に―・り給へ」〈徒然・二二四〉
いままで存在しなかったものを新しく生じさせる。「子供を―・る」「地方に支店を―・る」
意図的に工夫して、形・状態を現出する。わざとそのようなようすをする。「口実を―・る」
「庭を秋の野に―・りて」〈古今・秋上・詞書
(「時をつくる」の形で)雄鶏おんどりが、ある時刻に声高に勇ましく鳴く。「早朝に鶏が時を―・る」
囲碁で、双方を数えやすくするために盤面を整理する。「終局して碁を―・る」
罪や功徳のもととなることをする。
「いかなる罪を―・り侍りて」〈かげろふ・下〉
[補説]一般的には「作る」が用いられ、「造る」は家や船など大きなものをつくること、また、酒を仕込むことに用いられる。「創る」は創刊・創業・創作・創造・創立などのように、新しい物事をつくりだす意で使うが、製造・製作・育成・栽培などに関しては使わない。
[可能]つくれる
[用法]つくる・こしらえる――「料理を作る(こしらえる)」「一財産作る(こしらえる)」など、新しい物にまとめあげる意では相通じて用いられる。◇「詩を作る」「米を作る」を「こしらえる」とは言わない。創造性とか自然の力が加わって初めて完成するような物については、「こしらえる」はふさわしくない。◇「今や、日本で造られた自動車が世界中を走っている」のように、総体的な生産を示す場合も「造る」が普通。「これが、この工場でこしらえた自動車です」のような具体的な製造物については、「こしらえる」と言うこともできる。◇化粧をする意の「顔をつくる」「顔をこしらえる」では、「こしらえる」のほうが入念さがまさっている。
[下接句]色を作る貝を作るかきを作る香箱を作る極楽願うより地獄作るな詩を作るより田を作れしなを作るすっぽんが時をつくる天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず時をつくるときをつくる述べて作らずはとを憎み豆を作らぬ・雌鳥めんどり勧めて雄鳥おんどり時をつくるようを作る
[類語]拵える築く仕立てる形作る作り出す作り上げる仕立て上げる誂える

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精選版 日本国語大辞典 「作る」の意味・読み・例文・類語

つく・る【作・造】

  1. 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙
  2. [ 一 ] 新しく創造する。また、材料・素材に手を加えて、もとと違った新しいものにする。
    1. 新しくものをこしらえる。製造する。製作する。組み立てる。
      1. [初出の実例]「八雲立つ出雲八重垣妻籠みに八重垣都久流(ツクル)その八重垣を」(出典:古事記(712)上・歌謡)
    2. 手を加えて、目的に従った形、状態にする。
      1. (イ) 開墾する。耕作する。たがやす。
        1. [初出の実例]「あしひきの 山田を豆久理(ツクリ) 山高み 下樋を走(わし)せ」(出典:古事記(712)下・歌謡)
      2. (ロ) 品物を加工する。また、品物として生産する。
        1. [初出の実例]「この籠(こ)は、金(かね)をつくりて、色どりたる籠なりけり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)浮舟)
      3. (ハ) 食べるために調理する。料理する。「刺身(さしみ)につくる」 〔享和本新撰字鏡(898‐901頃)〕
        1. [初出の実例]「大なる魚捕得たりと喜て、即ち俎に魚を置て作らむとす」(出典:今昔物語集(1120頃か)二)
      4. (ニ) 酒類を醸造する。かもす。〔十巻本和名抄(934頃)〕
        1. [初出の実例]「扨当年もまた酒を作らせられて御ざるか」(出典:虎寛本狂言・伯母が酒(室町末‐近世初))
      5. (ホ) 栽培する。
        1. [初出の実例]「天の下の公民の作り作る物は、五(いつくさ)の穀(たなつもの)を始めて、草の片葉に至るまで」(出典:延喜式(927)祝詞)
    3. 文字や図に書いて表わす。著述する。
      1. (イ) 文章、書類、論文などを書く。
        1. [初出の実例]「勝鬘法花等の経の疏を製(ツクリ)、法を弘め物を利し〈興福寺本訓釈 制 作也〉」(出典:日本霊異記(810‐824)上)
        2. 「よもすがらまどろまず文(ふみ)つくりあかし給ふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)須磨)
      2. (ロ) 詩歌を詠ずる。よむ。
        1. [初出の実例]「かの国人、むまのはなむけし、別れ惜しみて、かしこのからうた、つくりなどしける」(出典:土左日記(935頃)承平五年一月二〇日)
      3. (ハ) 図面などにかいて表わす。「設計図を作る」「表をつくる」
      4. (ニ) ( 「…に作る」の形で ) ある文字の異体をある形で表わす。「『事』は古くは『』につくる」
    4. 人の身に備わる抽象的な事柄を形成する。
      1. (イ) 人格、性格などをかたちづくる。育てる。
        1. [初出の実例]「法を聞くいは是れ人を造(ツクリ)、天身を造り、菩薩を造り、仏を造るぞ」(出典:東大寺諷誦文平安初期点(830頃))
      2. (ロ) 罪、徳などを自分のものにする。身にする。行なう。
        1. [初出の実例]「かぐや姫は、罪を作り給へりければ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    5. 組織、制度、規則などを設ける。創設する。編成する。「前例をつくる」
      1. [初出の実例]「一百二十三人、蓮社を為(ツクル)」(出典:私聚百因縁集(1257)五)
    6. 大きな声を出す。
      1. (イ) 軍勢がときの声をあげる。
        1. [初出の実例]「呉のつは者三十万騎、かち時をつくりて」(出典:曾我物語(南北朝頃)五)
      2. (ロ) 鶏が早朝鳴いて時をしらせる。
    7. 金銭を工面してととのえる。また、まとまった財産・借財などを持つようになる。こしらえる。
      1. [初出の実例]「私が有らん限りの才覚をして金を造(ツクッ)た」(出典:福翁自伝(1899)〈福沢諭吉〉一身一家経済の由来)
    8. ものをある形に排列する。「指で円をつくる」
      1. [初出の実例]「側面縦隊より同方向に中隊縦隊を作らしむる」(出典:歩兵操典(1928)第一五四)
    9. ある目的のための時間や機会を生み出す。「ひまをつくる」「チャンスをつくる」
    10. ( 「子をつくる」の形で ) 産む。子どもをもうける。
      1. [初出の実例]「どうだ、子供を作るか」(出典:鳩を撃つ(1970)〈五木寛之〉)
    11. 友人、愛人などを新しく得る。
      1. [初出の実例]「踊り子は自分で男をつくる」(出典:安吾巷談(1950)〈坂口安吾〉ストリップ罵倒)
    12. 囲碁で、終局の際計算しやすいように形をつくりなおす。まずダメを詰めながら手入を行ない、死石を取り上げて従来のハマといっしょに相手の地に埋め、形をなおす。
      1. [初出の実例]「殆ど喧嘩となり、固より作るに及ばず、石をさらりと突崩して立」(出典:土佐国風俗記(1836か)下)
  3. [ 二 ] 表面的な事柄をつくろう。故意につくろう。
    1. わざと、または、いつわってそのような風をする。表情などをいつわる。ふりをする。
      1. [初出の実例]「はじめこそ心にくもつくりけれ、今はうちとけて」(出典:伊勢物語(10C前)二三)
    2. そのように似せてこしらえる。「花形につくる」
      1. [初出の実例]「遍昭が母の家にやどりたまへりける時に、庭を秋の野につくりて」(出典:古今和歌集(905‐914)秋上・二四八・詞書)
    3. ないことをあるように述べる。いつわって言う。仮作して言う。
      1. [初出の実例]「此を見るに、面の色形、口に云ふ言、猶明かに己が作りて云ふ言を、大神の御命と借りて云ふと知しめしぬ」(出典:続日本紀‐神護景雲三年(769)九月二五日・宣命)
    4. 形を整える。飾る。飾りたてる。
      1. [初出の実例]「御車は二なくつくりたれど、所せしとて、御馬にて出で給ふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)明石)
    5. 化粧する。めかす。
      1. [初出の実例]「ききらきんと、かかアにもつくらせて見せへだしてをいて」(出典:洒落本・通人の寐言(1782)上)
      2. 「こってりと、人品を落すほどに粧(ツク)って」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三)

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