寄る(読み)ヨル

デジタル大辞泉 「寄る」の意味・読み・例文・類語

よ・る【寄る】

[動ラ五(四)]
ある人・物やある所に向かって近づく。近寄る。「彼女のそばに―・る」「たき火の近くに―・る」
1か所に集まる。一緒になる。「親類が―・って相談する」「三人―・れば文殊の知恵」
ある所へ向かう途中で、他の所を訪れる。立ち寄る。「出社前に得意先に―・る」「帰りに飲みに―・る」
片方の端へ近づく。また、一方の側にかたよる。「部屋の隅に―・る」「西に少し―・った地域」
(「倚る」「凭る」とも書く)もたれかかる。「縁側の柱に―・って庭を見る」
数が加わる。多くなる。重なる。「しわが―・る」「年が―・る」
考えがそこに至りつく。思い及ぶ。「思いも―・らない大事件」
相撲で、組んだ体勢で相手を押し進む。「腰を落として―・る」
相場で、立ち会いの最初の取引が成立する。「五円高で―・る」
10 気持ちが傾く。
「今更に何をか思はむうちなびき心は君に―・りにしものを」〈・五〇五〉
11 なびき従う。服する。
「人の言に―・りて、いかなる名をくたさまし」〈・夕霧〉
12 味方になる。
「あなたに―・りて、ことさらに負けさせむとしけるを」〈・一四三〉
13 寄進される。寄付される。
「かかる所に庄など―・りぬれば」〈宇治拾遺・八〉
14 神霊や物の怪などが乗り移る。
「寄り人は今ぞ―・り来る」〈謡・葵上
[可能]よれる
[下接句]秋の鹿しかは笛に寄る思いも寄らない女の足駄にて作れる笛には秋の鹿寄る目の寄る所へは玉も寄る
[類語](1近付く近寄る来る迫る差し迫る押し迫る押し詰まる切迫するやってくるきた訪れる来訪する到着する着く/(3立ち寄る訪ねる

よそ・る【寄る】

[動ラ四]
自然に引き寄せられる。
「荒山も人し寄すれば―・るとぞいふ」〈・三三〇五〉
波が打ち寄せられる。寄せる。
「白波の―・る浜辺に別れなばいともすべなみ八度袖振る」〈・四三七九〉
ある異性に心を寄せているとうわさされる。
新田山にひたやまには付かななに―・りはしなる児らしあやにかなしも」〈・三四〇八〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「寄る」の意味・読み・例文・類語

よ・る【寄・倚・凭・拠・縁・依・因・由】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
  2. [ 一 ] ( 寄 ) ある物やある所、また、ある側に近づいて行く。
    1. ある所、ある物、ある人に向かって近づく。近寄る。
      1. [初出の実例]「沖つ藻は 辺(へ)には誉戻(ヨレ)ども さ寝床も 与(あた)はぬかもよ 浜つ千鳥よ」(出典:日本書紀(720)神代下・歌謡)
      2. 「あやしがりてよりて見るに、筒の中光りたり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. ひと所に集まる。
      1. [初出の実例]「波立てば奈呉の浦廻(うらみ)余流(ヨル)貝の間無き恋にそ年は経にける」(出典:万葉集(8C後)一八・四〇三三)
      2. 「女のはける足駄にて作れる笛には、秋の鹿、必ずよるとぞ言ひ伝へ侍る」(出典:徒然草(1331頃)九)
    3. 途中でおとずれる。立ち寄る。
      1. [初出の実例]「わが御家へもより給はずしておはしましたり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    4. 一方へ近づき集まる。また、ある基準から一方へかたよる。
      1. [初出の実例]「山風のまづこそふけばこの春の柳のいとはしりへにぞよる」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
      2. 「淑景舎は、北にすこしよりて、南向きにおはす」(出典:枕草子(10C終)一〇四)
    5. ( 倚・凭 ) もたれかかる。
      1. [初出の実例]「脇息によりおはす」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)
    6. 相撲で、組んで押し進む。
      1. [初出の実例]「成村嗔(いかり)て起ままに、只寄(より)に寄(より)て取合ぬ」(出典:今昔物語集(1120頃か)二三)
    7. (年、皺などが)積もり重なる。
      1. [初出の実例]「入道も年こそよて候へども、子共ひきぐして参り候べし」(出典:平家物語(13C前)四)
    8. 寄進される。寄付される。
      1. [初出の実例]「かかる所に庄などよりぬれば、別当なにくれなどいできて」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)八)
    9. (神霊や物の怪などが)乗り移る。
      1. [初出の実例]「弁幾(いくばく)も无くて病付て、日来を経て遂に失にけり。其の女寄(より)たるにやとぞ」(出典:今昔物語集(1120頃か)三一)
    10. その日の相場が始まる。立会が始まる。
      1. [初出の実例]「早や明過て表には、寄(ヨリ)ます寄(ヨリ)ます、拍子木の音賑わしく、聞へける、アレアレ相場を始める知らせ」(出典:浄瑠璃・忠義墳盟約大石(1797)八)
  3. [ 二 ] ( 拠・縁 ) 気持が、そちらに引きつけられる。
    1. 気持が、そちらに傾く。
      1. [初出の実例]「吾(あ)が身こそ関山越えてここにあらめ心は妹に与里(ヨリ)にしものを」(出典:万葉集(8C後)一五・三七五七)
    2. 任せてそれに従う。
      1. [初出の実例]「武蔵野の草は諸(もろ)向きかもかくも君がまにまに吾は余利(ヨリ)にしを」(出典:万葉集(8C後)一四・三三七七)
    3. あてにしてそれにたよる。たよってそこに落ち着く。根拠としてとりすがる。
      1. [初出の実例]「御諸に 築(つ)くや玉垣 斎(つ)き余し 誰(た)にかも余良(ヨラ)む 神の宮人」(出典:古事記(712)下・歌謡)
      2. 「仏のをしへによりてなるなり」(出典:徒然草(1331頃)二四三)
    4. 味方になる。ひいきする気持になる。
      1. [初出の実例]「あなたによりてことさらに負けさせんとしけるを」(出典:枕草子(10C終)一四四)
  4. [ 三 ] ( 依・因・由 ) よりどころとなる事柄に基づく。
    1. 原因する。基づく。
      1. [初出の実例]「人言の繁きに余里(ヨリ)てまを薦の同(おや)じ枕は吾(わ)は枕(ま)かじやも」(出典:万葉集(8C後)一四・三四六四)
      2. 「されば賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとに由て出来るものなり」(出典:学問のすゝめ(1872‐76)〈福沢諭吉〉初)
    2. それと限る。定める。
      1. [初出の実例]「御せいさつには、何にはよるまじひ、さうさう罷出て、一のたなについだ者を、末代つけさせられうずるとのお事じゃ」(出典:虎明本狂言・鍋八撥(室町末‐近世初))
    3. ( [ 三 ]から転じた用法 ) 「によりて」「によって」の形で接続助詞的に用いて、…のために、…からの意を表わす。
      1. [初出の実例]「五戒十善の御果報つきさせ給ふによて、今かかる御目を御覧ずるにこそさぶらへ」(出典:平家物語(13C前)灌頂)
      2. 「門限は十時じゃによって、少々早う戻ればえいは」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉二)

よそ・る【寄】

  1. 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙
  2. 自然に寄せられる。引きつけられる。
    1. [初出の実例]「汝(なれ)をそも 吾れに寄すといふ われをもそ 汝に寄すといふ 荒山も 人し寄すれば 余所留(ヨソル)とぞいふ 汝(な)が心ゆめ」(出典:万葉集(8C後)一三・三三〇五)
  3. 波が打ち寄せられる。寄せる。
    1. [初出の実例]「白波の与曾流(ヨソル)浜辺に別れなばいとも為方(すべ)なみ八遍(やたび)袖振る」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三七九)
  4. ある異性と関係があるといわれる。ある異性に心を寄せていると噂される。
    1. [初出の実例]「山鳥の尾ろの初麻(はつを)に鏡かけ唱ふべみこそ汝(な)に与曾利(ヨソリ)けめ」(出典:万葉集(8C後)一四・三四六八)

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