《ヨブ記》《伝道の書》とともに,旧約聖書の知恵文学に属する書物。《箴言》と《伝道の書》は,ソロモンの手になるものとされている。〈モーセ五書〉がモーセにより,《詩篇》がダビデによって書かれたとされるのと同様,知者として有名であったソロモン王に,これらの教訓が帰せられたのである。《箴言》には七つの表題があり,少なくとも七つの部分に分けられる(1:1以下,10:1以下,22:17以下,24:23以下,25:1以下,30:1以下,31:1以下)。そのうち,第1部(1~9章)はもっとも新しく,ヘレニズム時代の著作であろう。第2部(10:1~22:16)はより古く,おそくともイスラエルの王国時代に書かれた。実際,王についての言及が見られる(16:12以下,21:1,22:11)。第3部(22:17~23:12)について興味深いことは,エジプトの《アメンエムオペトの教訓》(前2千年紀後半)と内容がよく似ていることである。《箴言》に収められた格言的な教訓はもともと,王国の支配階級の子弟に学校で教えるためのもので,メソポタミア,エジプトなど古代近東地域の主要部において,類似した内容の教訓が教えられていた。ただ1章7節のようにイスラエルの特色を示す部分もある。第5部(25~29章)は前8世紀後半のユダの王ヒゼキヤが書き記したものとされ,第6部(30章)と第7部(31章)はアラビアのマッサの王レムエルの言葉であるとされている。
執筆者:木田 献一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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『旧約聖書』中の一書。表題(1章1節)には「イスラエルの王ソロモンの箴言」とある。しかし実際には、古代イスラエル人の間に(一部はすでに彼らの周辺世界に)伝えられていた教訓や格言がさまざまに収集・編集されて成立した箴言集である。全31章。人生や社会生活のさまざまな局面において、善と悪、公正と不正、真理と虚偽、賢明と愚昧(ぐまい)、勤勉と怠惰、等々を分別し、慎みをもって前者につくことを具体的に教え勧める本書は、全体として、人々に「知恵」(ホクマー)を得させることを目的とする。そこには、「知恵」の獲得こそが生命と救いとをもたらし、逆に「知恵」の欠如は死と滅びを招く、との人生観がうかがわれ、ときにはその「知恵」が人格化され、讃美(さんび)される(8章)。また、「主(しゅ)を畏(おそ)れること」、すなわち神との生きたかかわり(信仰)こそが、実は、このような人生知の根本をなす、ともいわれ(1章7節ほか)、このような宗教思想に、単なる人生教訓集を超えた本書の特色がうかがわれる。
[月本昭男]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…文学形式の一つで,思考や観察の結果を簡潔な形で,皮肉に,しんらつに,諧謔的に述べたもの。警句あるいは箴言,金言,格言などと訳される。〈分離する〉を意味するギリシア語aphorizeinを語源とし,ヒッポクラテスが医学上の処方を記した《アフォリスモイ》に始まる。…
…旧約聖書の《箴言》《ヨブ記》《伝道の書》,外典に属する《ベン・シラの知恵》《ソロモンの知恵》等を,歴史書,預言文学と区別して〈知恵文学〉と総称する。これらの知恵文学には,特にイスラエル的な信仰を特徴づける主題である排他的な唯一神の信仰,歴史の中に神の行為を実現する救済史観,イスラエルの選び,啓示,契約などが見られない。…
※「箴言」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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