(読み)スソ

デジタル大辞泉 「裾」の意味・読み・例文・類語

すそ【裾】

衣服の下方のふち。また、その部分。「着物のをからげる」
物の端。下端や末端の部分。「垂れ幕
頭髪の、襟首えりくびに近い、末端の部分。「を刈り上げる」
山などの麓。「富士の
川下かわしも。下流。「流れの
足。また、足もと。
「真青な顔で、―がなくって腰から上ばかりで」〈円朝怪談牡丹灯籠
馬の足。また、それを洗うこと。
「梅の木の下に立ちて馬の―するを見ている」〈綺堂佐々木高綱
[類語]山麓山裾裾野山辺

きょ【裾】[漢字項目]

常用漢字] [音]キョ(漢) [訓]すそ
〈キョ〉
着物のすそ。「軽裾」
山のふもと。「裾礁きょしょう
〈すそ〉「裾野川裾裳裾もすそ山裾

きょ【裾】

束帯下襲したがさねの後ろに長く引く部分。初め下襲と続いていたが、鎌倉時代以後、天皇以外は下襲から切り離してひもで腰につけた。官位により、地紋・長さが異なる。きぬのしり。

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精選版 日本国語大辞典 「裾」の意味・読み・例文・類語

すそ【裾】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 衣服の下の縁(ふち)。衣服の脚にあたるところ。
      1. [初出の実例]「汝(な)が着(け)せる 襲(おすひ)の須蘇(スソ)に 月立ちにけり」(出典:古事記(712)中・歌謡)
      2. 「まっさきにすすんだる安芸太郎が郎等をすそをあはせて、海へどうどけいれ給ふ」(出典:平家物語(13C前)一一)
    2. (ほう)などの下端についている横幅の布。襴(らん)
      1. [初出の実例]「閇蘇(へそ)紡麻を針に貫きて、其の衣の襴(すそ)に刺せ」(出典:古事記(712)中)
    3. 山のふもと。山脚。裾野。あるいは、山のようになっているものの下端の部分。
      1. [初出の実例]「たちともしるしつまこふる鹿〈続家〉 しら露もさ山がすその月深て〈宗祇〉」(出典:表佐千句(1476)二)
      2. 「乗放牛を尋る夕間暮〈風流〉 出城の裾に見ゆるかがり火〈木端〉」(出典:俳諧・曾良随行日記(1689)俳諧書留)
    4. 川しも。下流。
      1. [初出の実例]「鴎は其流水のすそにあれば」(出典:中華若木詩抄(1520頃)上)
    5. もののはし。下端や末の部分。
      1. [初出の実例]「みすの下より箏の御琴のすそ少しさしいでて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
    6. 髪の毛の末端。髪の毛の先。
      1. [初出の実例]「たけ四尺許にて、髪はおちたるにやあらん、すそさきたる心ちして、たけに四寸許ぞたらぬ」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
    7. からだの足。膝から下。足もと。
      1. [初出の実例]「長具足にてさしあはせ、太刀うしろへ立廻て、をきれ」(出典:明徳記(1392‐93頃か)中)
      2. 「誰か来て裾にかけたる夏衣〈其角〉 歯ぎしりにさへあかつきのかね〈越人〉」(出典:俳諧・曠野(1689)員外)
      3. 「真青な顔で、裾がなくって腰から上ばかりで」(出典:怪談牡丹燈籠(1884)〈三遊亭円朝〉八)
    8. 馬の四足。また、それを洗うこと。洗い湯のことにもいう。→裾をする
      1. [初出の実例]「御空行月毛の駒をひきとめてひのくま川にすそやあらはん」(出典:鶴岡放生会職人歌合(15C後か)九番)
      2. 「身共が馬になったらば、馬とりは則そちであらうが〈略〉すそなどをも、さいさいしてくれさしめ」(出典:虎明本狂言・人馬(室町末‐近世初))
    9. 囲碁で、一定の地域を構成している下方の(盤端に近い)部分。
  2. [ 2 ]すそつぎ(裾継)[ 二 ]」の略。
    1. [初出の実例]「すぐに中町はとうだらう。善はすそくらいなれど、光がまへが有ゆへ、中といふ」(出典:洒落本・登美賀遠佳(1782))

きょ【裾】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 装束の後身(うしろみ)の下端。
  3. 下襲(したがさね)の尻(しり)の長く垂れた部分。鎌倉時代以降、天皇の料以外は切り離して別物とし、それを別裾(べっきょ)という。地紋も下襲と同じで、長さは時代により官位によって一様でない。近世は、関白は腰より先一丈五尺(約四・五メートル)、殿上人七尺(約二・一メートル)とする。きぬのしり。
    1. 裾<b>②</b>〈信貴山縁起〉
      信貴山縁起
    2. [初出の実例]「将軍殿〈略〉於門外乗車給、予褰御車簾、五品行雅取裾、前駈人御随身如恒」(出典:山槐記‐仁安二年(1167)二月一一日)
    3. 「きょを踏まれてはつんのめる相馬公家」(出典:雑俳・柳多留‐四七(1809))

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普及版 字通 「裾」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 13画

[字音] キョ
[字訓] すそ・えり・ふところ

[説文解字]

[字形] 形声
声符は居(きよ)。〔説文八上に「衣の(ふところ)なり」とし、に「(ふところ)なり」という。えり、すそ、そで、おくみなどをいうことがある。字は倨と通用する。

[訓義]
1. ふところ、すそ、えり、そで。
2. 衣裳のすそに出たところ、外にはねたようなところ。衣の大きく、さかんなさま。
3. 倨と通じ、おごる。
4. 拠と通じ、よる。

[古辞書の訓]
和名抄〕裾 古呂毛乃須曾(ころものすそ)、一に云ふ、岐沼乃之利(きぬのしり) 〔名義抄〕裾 コロモノスソ・キヌノシリ・コロモ・キヌノスソ・コロモノヲ・スソ

[熟語]
裾裾裾驕裾拘・裾香・裾勢
[下接語]
衣裾・引裾・雲裾・曳裾・下裾・華裾霞裾・曲裾・巾裾・軽裾・裾・結裾・牽裾・後裾・紅裾・香裾・修裾・裾・旋裾・長裾・奮裾・遊裾・羅裾・裂裾・連裾・斂裾

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「裾」の意味・わかりやすい解説


きょ

尻ともいう。束帯のときに着る下襲 (したがさね) の長く引くうしろ身頃のこと。官職の差によって長短の差が生れた。 12世紀末期頃から上衣と裾が続いているのは着装に不便なのでこれを切離し,裾あるいは別裾と名づけ,白平絹の紐をつけて胴を締めて着用することとなった。 15世紀なかばでは関白は 4m,大臣は 3m,納言以下は 2.5mの長さであった。 (→トレーン )  

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【下襲】より

束帯半臂(はんぴ)の下,または直接に(ほう)の下に着る垂領(たりくび)で身頃二幅仕立ての腋(わき)あけの内衣。平安時代後期以降,衣服の大型化,広袖化とともに下襲の後身の裾(きよ)(尻(しり)ともいう)が非常に長くなった。947年(天暦1)に下襲の長さが,親王は袍の襴より出ること1尺5寸,大臣1尺,納言8寸,参議6寸としたが,1212年(建暦2)には大臣1丈,大納言9尺,中納言8尺,参議7尺となった。…

※「裾」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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