カキ

食の医学館 「カキ」の解説

カキ

《栄養と働き》


 魚介類を生で食べることが少ない欧米でも、カキは別で、古くから生食されています。
 日本で食用とするカキは、マガキスミノエガキイタボガキイワガキなどですが、広く出回っているのは養殖したマガキです。養殖の産地は広島、宮城、岡山、岩手など。
○栄養成分としての働き
 カキは「海のミルク」として知られ、スタミナ不足の解消、病後・産後の回復、母乳の分泌(ぶんぴつ)などに効果があるといわれてきました。実際、カキはミネラルやうまみ成分をたっぷり含んでいます。
 うまみの素は、タウリングリコーゲンをはじめとしてアラニングリシンなどのアミノ酸によるもの。なかでもタウリンは、血中コレステロール値を減少させたり、血圧を正常に下げる作用をするので、高血圧によって引き起こされる脳卒中(のうそっちゅう)、心臓病などの予防に役立ちます。
 ミネラルのなかで格段に多いのは、亜鉛(あえん)と銅。亜鉛は、発育を促進し、傷の回復を早め、味覚を正常に保つ働きがあります。
 銅は、鉄を利用してヘモグロビン合成を助け、貧血を予防したり、ビタミンCの利用を助けるといった作用があります。
〈ビタミンB12葉酸が貧血予防に有効〉
 ビタミンでは、ビタミンB2とB12の含有量が目につきます。B2は細胞の再生やエネルギーの代謝をうながしたり、健康な皮膚や髪などをつくり、成長を促進します。また過酸化脂質の分解を助けます。B12は、葉酸(ようさん)と協力しあって赤血球の産生に働いたり、神経細胞のたんぱく質脂質、核酸の合成を助け、神経系を正常に働かせます。
 カキは葉酸も多く含んでいます。葉酸は貧血を予防し、健全な発育をうながすほか、遺伝子情報を保存し、そのとおりに指令をだすところなので、妊娠中や授乳中はとくに摂取しましょう。カキは、鉄、銅、亜鉛、ビタミンB12、葉酸と、貧血防止に必要な栄養素をあわせもった優秀な食材なのです。
○漢方的な働き
 漢方薬膳(やくぜん)では殻(から)を牡蠣(ぼれい)といい、不眠症、動悸(どうき)、精神不安の治療に頻繁に用います。カルシウムをふんだんに含んだ身にも、同様の効果があります。
 そのほか、美肌、貧血予防にもよく用いられます。

《調理のポイント》


 欧米では、Rがつかない月(5月~8月)はカキを食べない習慣があります。日本でも「桜が散ったら食べるな」といいます。その時期になると産卵して味が落ちるうえ、中毒を起こしやすくなるからです。うまみが増すのは11月~3月。しかし例外もあり、丸みをおびたイワガキは夏が旬(しゅん)。能登、三陸、厚岸、有明海などでとれるイワガキが有名です。
 カキを堪能するなら殻つきの生で購入したいものですが、「生食用」と書いてあるむき身の場合は、つやがあり、身が膨らんで丸く盛り上がり、縁の黒みが鮮やかなものを選びましょう。
 カキは調理する前に、ダイコンおろしか濃い食塩水で、汚れやぬめりを落とします。レモン汁を振りかけ、生で食べるほか、酢ガキ、鍋もの、カキどうふ、カキめし、フライ、焼きもの、バター焼きにしてもおいしくいただけます。ただし、熱をとおしすぎると身がかたくなり、風味も飛ぶので、注意してください。

出典 小学館食の医学館について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カキ」の意味・わかりやすい解説

カキ
oyster

軟体動物門二枚貝綱イタボガキ科に属する貝の種類の総称であるが,特に食用ガキをさす。固着生活のため殻は形が一定しないが,左殻で地物に固着して移動することはできない。右殻はふた状で,左殻よりも小さくふくらみも弱い。両殻は殻頂部の黒い靭帯で結ばれている。殻表には成長脈が多少板状 (棘状になることもある) に発達し,また放射肋ができることもある。軟体は,大きな後閉殻筋 (貝柱) が中央付近にあり,前閉殻筋を欠く。足は小さい。雌雄同体であるが,マガキ,アメリカガキ,ポルトガルガキ,スミノエガキなどの卵生種は,個体によって雌雄が明らかで雌雄異体のようにみえるが,1個体で性転換して雌が雄になり,また逆に雄が雌になるという交代性雌雄同体である。イタボガキ,ヨーロッパガキ,オリンピアガキなどの卵胎生種では,体内で卵が受精,孵化して幼生で産出される。生殖腺には雌雄両性があるが,雌性または雄性の強い個体などいろいろの段階のものがあり,産卵後や,環境が悪かったりすると雄性が強くなる。なお,生殖腺は雌雄とも白いので,すべて雄 (牡) と思い,漢字で「牡蠣」と書くようになった。温・熱帯海域の潮間帯や浅海の岩礫底にすむが,種によって低塩分 (マガキなど) から高塩分 (イタボガキ,ケガキなど) のところまでさまざまである。食物はプランクトンが主である。世界的に養殖も盛んで,ベリジャーが付着生活に入る時期 (体長 0.4mmぐらい) にカキやホタテガイの殻を重ねたコレクター (付着器) を海中に入れ,そこに付着した稚貝を保護,飼育する。4~5日間でゴマ粒ほどの大きさになるが,これを種苗 (種ガキ) といい,環境のよい海の筏 (いかだ) につるして養殖をする。日本での主産地は宮城県,広島県および有明海。

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