ビクトリア(オーストラリア)(読み)びくとりあ(英語表記)Victoria

翻訳|Victoria

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ビクトリア(オーストラリア)
びくとりあ
Victoria

オーストラリア南東部の州。面積22万7600平方キロメートル、人口464万4950(2001)。州都メルボルングレート・ディバイディング山脈東西に延び、その北側はマリー川流域の低地、南側は低い丘陵地帯と海岸低地である。同国としては降水量に恵まれ、州面積の約3分の2が年降水量500ミリメートル以上で、土地利用も比較的集約的である。北部のマリー川流域では小麦栽培、牧羊(肉・毛用)が中心で、さらに肉牛飼育、灌漑(かんがい)による果樹栽培もみられる。山地では林業が行われるほか、起伏の緩やかな西部では牧羊(毛用)が発達している。南部では酪農および園芸農業が中心である。人口は西部、東部に比べて中部に多く、メルボルン都市圏に7割余りが集中する。

 同州は人口・経済規模の点でニュー・サウス・ウェールズ州と並び同国の中核となる州で、相対的に工業に特化(専門化)しているが、農牧業および鉱業においても全国的に重要である。工業生産額の約9割がメルボルンおよびジーロングに集中し、全国生産額の約2分の1を占める輸送機械(おもに自動車)、繊維、衣料品をはじめ各種工業が発達しており、州の工業生産額は全国の3分の1余りに達する。農牧業の代表は酪農で、乳牛頭数は全国の約2分の1、バター生産量は全国の約8割を占める。鉱業の中心はバス海峡(ギプスランド沖合い)の原油天然ガスで州鉱産額の4分の3を占め、原油は全国生産量の9割以上、天然ガスは同約2分の1を占める。また、東部のラトローブ地方にオーストラリア唯一の巨大な褐炭資源があり、おもに発電に利用されている。主要輸出品は羊毛、肉、穀物、酪製品、石油製品などで、日本は最大の輸出先であるとともにアメリカと並ぶ主要輸入先である。

 1836年に当時のニュー・サウス・ウェールズ植民地の一地区として公式に発足し、1851年に分離して自治植民地となった。1850年代の金鉱ラッシュとその後の農牧開拓により発展した。1901年他州とともに連邦結成に加わった。

[谷内 達]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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