三省(読み)さんしょう(英語表記)sān shěng

精選版 日本国語大辞典 「三省」の意味・読み・例文・類語

さん‐しょう ‥シャウ【三省】

[1] 〘名〙
令制で、太政官に置かれた八省のうち、式部省民部省兵部省をいう。また、中務省・式部省・兵部省をさす場合もある。
西宮記(969頃)七「三省申政〈略〉上卿着庁、中・式・兵・輔・丞・録 六位在後 就版」
② 中国、唐の官制で、中書省門下省・尚書省をいう。
[2] (中山省・山南省・山北省の三つに分かれていたところから) 琉球国(沖縄県)をいう。
読本椿説弓張月(1807‐11)続「しうねき女の毒蛇となりたるを、只一刀に滅して、その名三省(サンセウ)に聞えたり」

さん‐せい【三省】

〘名〙 (「論語‐学而」の「吾日三省吾身」による) 一日三たびよく反省すること。幾度もわが身をかえりみ戒めること。さんしょう。
※竹居清事(1455頃)三省説「曾参聖人門下的嗣。尚以三省日用工夫」 〔荀子勧学

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デジタル大辞泉 「三省」の意味・読み・例文・類語

さん‐しょう〔‐シヤウ〕【三省】

律令制で、太政官に置かれた八省のうち、式部省民部省兵部省の称。
中国、の官制で、中書省門下省尚書省の称。
さんせい(三省)

さん‐せい【三省】

《「論語」学而の「吾日に吾が身を三省す。人の為に謀りて忠ならざるか、朋友と交わりて信ならざるか、習わざるを伝えしかと」から》毎日三度反省すること。1日に何度も自分の言行をふりかえってみて、過失のないようにすること。さんしょう。

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改訂新版 世界大百科事典 「三省」の意味・わかりやすい解説

三省 (さんしょう)
sān shěng

中国,唐代に中央政府の中核を占めた中書省,門下省,尚書省の総称。中書省は天子の書記局として政策の立案と詔勅の起草を担当し,門下省は中書省から送られてきた案文を審議し,協賛したり,封駁と称する拒否権を発動したりした。尚書省は門下省から回付されてきた政令を天下に施行する機関で,尚書都省のほか吏・戸・礼・兵・刑・工の六部に分かれ,それぞれ人事,財政などの事務を分担した。
執筆者:

高麗の行政中枢機関の慣用的総称。建国初期には,泰封(後高句麗)や新羅の官制を折衷的に継承した,内議・内奉・広評の3省が存在したが,10世紀末以後,中国風の三省六部を基調とする中央官制の整備が進められ,三省の内容は中書省,門下省,尚書省となった。しかし,前2者は合して単一の中書門下省とされ,実際には,2省であった。また,中書門下省が宰相の府として,議政・諫諍をつかさどる最高政務機関であるのに対し,尚書省は宰相の府でもなく,六部とも実質的に切り離された存在で,前者の下位に置かれた。むしろ,当時中書門下省と比肩しえたのは,軍政・五命の出納等をつかさどり,同じく宰相府だった中枢院である。これらの点からみて,高麗の三省は,唐制よりも,宋制に倣ったものといえる。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「三省」の意味・わかりやすい解説

三省【さんしょう】

中国,唐朝で確立した中央政府最高の機関。中国では古来,三公が政治の最高責任者として宰相であった。後漢の光武帝が天子直属の秘書官,尚書を重用して以来,天子側近としての門下侍中,中書監,中書令などと政務を行うことが多くなり,唐に至って中書省・門下省・尚書省の三省が最高機関となった。中書省は詔勅の起草,門下省は詔勅の審議にあたり,尚書省は決定された政策を内容によって吏・戸・礼・兵・刑・工部の六部(りくぶ)に分担執行させた。三省のそれぞれの長官は中書では中書令(2名),門下では門下侍中(2名),尚書省は普通は長官を空位として,左僕射(さぼくや)・右僕射(うぼくや)という次官が3部ずつ受け持って業務を推進させた。この6名が宰相である。宋朝に至って中書と門下が併合されて中書門下同平章事(同平章事)が任命されて宰相の任にあたったので,三省制度は崩壊した。→六部

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故事成語を知る辞典 「三省」の解説

三省

何度も反省すること。

[使用例] これは殊に少年少女の教育の為に是非とも当局の三省を促したいものである[辰野隆パリ散策|1936]

[由来] 「論語がく」に出て来る、孔子弟子そうのことば、「われ、日にが身を三省す(私は、一日に何度も自分の言動を反省する)」から。その具体的な内容としては、他人からの相談に誠意を持って対応しているかどうか、友人の信頼にきちんと応えているかどうか、うろ覚えの知識を教えていないかどうかが、挙げられています。

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普及版 字通 「三省」の読み・字形・画数・意味

【三省】さんせい

一日に再三わが身を反省する。〔論語、学而〕曾子曰く、吾(われ)日に吾が身を三省す。人の爲に謀りて忠ならざるか。友とはりて信ならざるか。はざるを傳ふるかと。

字通「三」の項目を見る

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「三省」の解説

三省(さんしょう)

唐の中央政府最高の機関,中書(ちゅうしょ)省門下(もんか)省尚書(しょうしょ)省をいう。古来三公(丞相(じょうしょう)太尉(たいい)御史大夫(ぎょしたいふ),あるいは太尉,司徒,司空)が最高機関であったが,後漢以後天子側近の上記の官に代わり,唐で定制化された。

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世界大百科事典(旧版)内の三省の言及

【唐】より


【制度と社会】
 隋から引き継いだ律令体制とは律・令・格・式のかたちで公布された法制(律令格式)を柱とし,均田法とよばれる土地制度,租庸調制とよばれる租税体系,府兵制とよばれる軍事制度,郷―里―保と村(坊)―隣の2系統に組み直された村落組織,の四つを巧みに組み合わせて,人民を把握し支配しようとする体制であった。この体制こそ,政治権力を中央に集中するための基盤であり,その上に三省六部を中核とする中央政府が存在して,国家が形づくられていたのである。 均田制とは,北魏に始まり,国家が一定の均等規模の土地を人民に支給するのをたてまえとする制度で,給田は原則として個人対象で計算されたうえ,戸ごとに支給された。…

※「三省」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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