デジタル大辞泉 「八幡平」の意味・読み・例文・類語
はちまんたい【八幡平】
岩手・秋田両県にまたがる火山。高原状をなし、標高1614メートル。十和田八幡平国立公園の主要地。温泉・スキー場が多い。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
岩手県北西部の市。2005年9月安代(あしろ)町,西根(にしね)町と松尾(まつお)村が合体して成立した。人口2万8680(2010)。
八幡平市北部の旧町。旧岩手郡所属。人口6390(2000)。県北西端に位置し,西は秋田県,北は青森県に接する。全域が奥羽山脈に属する山地で,中央部の山地を分水嶺として,東を太平洋に注ぐ馬淵(まべち)川上流の安比(あっぴ)川が,西を日本海に注ぐ米代川が流れる。町名は両川の名にちなむ。農林業が基幹産業で,米のほか,レタスを主とした高冷地野菜,リンドウなどの花卉の栽培,広大な山野を利用した畜産などが盛ん。木材,山菜,キノコも産する。JR花輪線が安比川と米代川の谷を結び,南端に八幡平がある。東北自動車道と八戸自動車道の分岐点にあたり,大型のスキーリゾート安比高原が開発されるなど,観光の町として発展している。
八幡平市南東部の旧町。旧岩手郡所属。人口1万9031(2000)。南西に岩手山,北部に七時雨(ななしぐれ)山(1063m)がそびえ,北上川支流の松川,赤川沿いに西根盆地が開ける。鎌倉時代末から南部氏の所領となり,平館(たいらだて)には天正年間(1573-92)に築かれた一戸(いちのへ)南部氏の居城跡が残る。農業が基幹産業で,平地では米作,山麓部では酪農,畜産が行われ,町営の牧野,畜産団地もつくられている。1719年(享保4)の岩手山噴火によって流れ出した焼走り溶岩流(特天)は長さ3kmに及び,荒涼とした景観を呈する。東北自動車道,JR花輪線が通じ,大更(おおぶけ)は八幡平登山の基地になっている。
八幡平市南西部の旧村。旧岩手郡所属。人口7064(2000)。北西に八幡平,南に岩手山がそびえ,これらの山群を源流とする赤川と松川が東流する。八幡平火山群中の茶臼岳南東麓には日本最大の硫黄鉱山の松尾鉱山があり,精製硫黄や硫化鉄鉱を鉱山集落の屋敷台から搬出していたが,1969年閉山した。鉱山が稼働していた時期にはその排水が松川に流入し,本流の北上川の河床をも褐色に染めていた。広大な鉱山跡地は学校や住宅地となっている。八幡平,岩手山は十和田八幡平国立公園南部の観光の中心で,八幡平温泉郷や多くのスキー場があり,また松川上流には松川温泉や日本で初めて地熱発電を開始した松川地熱発電所もある。酪農,高冷地野菜,果樹の栽培も盛んである。JR花輪線,国道282号線が通じ,東北自動車道八幡平松尾インターチェンジが設けられている。
執筆者:松橋 公治
秋田・岩手両県の北部県境に広がる火山性高原。十和田八幡平国立公園に属する。狭義には高原中央にある最高峰の楯状火山(1613m)をいい,広義には東の茶臼岳(1578m),西の栂森(つがもり)(1350m),焼山(1366m),南の畚(もつこ)岳(1578m),大深岳(1541m)を結ぶ連峰およびその周辺地域を含む。おもに輝石安山岩の厚い溶岩流と火山灰層からなり,主峰の山頂部は約1.5km2にわたって平たんな台地状をなし,付近には八幡沼や蟇(がま)沼などの湖沼が点在し,これらをとりまいて広大な高層湿原が展開している。植生としては,標高600m付近からはブナ,1000m付近からはオオシラビソ(アオモリトドマツ),さらに上部にはハイマツが生育している。栂森と東の国見台との間の鞍部にあるもうせん峠は,付近に咲くガンコウランやコケモモなどの群落が毛氈(もうせん)を広げたように見えることからその名がある。また,南東の岩手山と結ぶ尾根上には湿性植物が分布する。
山麓には秋田県側に志張(しばり)(単純泉,41~48℃),トロコ(弱食塩泉,97℃),蒸(ふけ)ノ湯,後生掛(ごしよがけ),玉川,岩手県側に藤七(とうしち),松川など八幡平温泉郷と総称される素朴な温泉群がある。1970年,八幡平山頂を東西に横断する全長26.8kmの八幡平有料道路(アスピーテライン)が開通し(92年無料開放),車で訪れる観光客が増加した。西のブナ森や東の大黒森斜面にはスキー場があり,樹氷を縫う壮快な山岳スキーが楽しめる。
執筆者:水野 裕
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
岩手県北西部に位置する市。2005年(平成17)岩手郡安代町(あしろちょう)、西根町(にしねちょう)、松尾村(まつおむら)が合併して市制施行、八幡平市となった。市名は、市域西部から西方の秋田県にかけて展開する高原状の山地、八幡平による。市の南境に岩手山がそびえ、中央部の西森(にしもり)山と前森山の北側山麓には安比高原(あっぴこうげん)が広がる。平地は北上(きたかみ)川の支流松(まつ)川沿いなどに開ける。JR花輪(はなわ)線、国道282号(津軽街道)、東北自動車道が通じ、同自動車道は安代ジャンクションで八戸自動車道を分岐する。市内には西根インターチェンジ、松尾八幡平インターチェンジ、安代インターチェンジがあり、十和田(とわだ)八幡平国立公園域に含まれる八幡平、岩手山への入口。
市名となった八幡平は、坂上田村麻呂が岩手山方面に潜んでいた賊を退治した際、武運長久を祈願し「応神八幡大神」と称えた故事によるといった地名誕生説話や、安比の名を、俘囚(ふしゅう)の豪族安倍氏の先祖安日王と結び付ける伝承がある。1914年(大正3)松尾鉱業による硫黄の採掘と精錬が始まった。最盛期の1960年代には国内の硫黄産出量の三分一を生産、「雲上の楽園」とよばれる一大鉱山町が形成された。しかし回収硫黄に押され、1972年廃鉱となった。第二次世界大戦後、全国からの入植者によって開拓されたところが多く、農林業が主体で肉牛、乳牛飼育、稲作、特産のホウレンソウやトマト、アスパラガスなどの野菜栽培、山菜加工などが盛ん。リンドウの生産量は日本一(2005)。県都盛岡に近く、交通も利便であることを生かし、近年諸工場を誘致して盛岡北部工業団地が造成された。大自然に恵まれた地の利を生かし観光業も盛ん。松川温泉、藤七(とうしち)温泉、八幡平温泉郷などに宿泊設備が整い、冬のスキー、夏のリゾート地として人気を集めている。岩手山北東麓には1719年(亨保4)の噴火で流れ出た熔岩が冷え固まってできた「岩手山焼走り熔岩流(やけはしりようがんりゅう)」(特別天然記念物)がある。面積862.30平方キロメートル、人口2万4023(2020)。
[編集部]
秋田・岩手県境に広がる楯状火山(たてじょうかざん)。狭義の八幡平は標高1613メートルの八幡平頂上、八幡平山頂とよばれる地であるが、広義には八幡平頂上の東方にある茶臼(ちゃうす)岳(1578メートル)、西方の焼(やけ)山(1366メートル)などの火山群を含む高原状の山地をさす。標高600メートルではブナ林が多いが、1000メートルを超えるとアオモリトドマツ(オオシラビソ)の樹海となる。地形が平坦(へいたん)で季節風を遮るものがないので、アオモリトドマツの生育は悪く扁形(へんけい)している。八幡平頂上の東方には火口湖の八幡沼、ガマ沼など小沼が多く、周辺は湿原となっている。ミズバショウ、シラネアオイなどがみられる。焼山とその東方の栂森(つがもり)の間の毛氈峠(もうせんとうげ)付近にはガンコウラン、コケモモなどの植物群落がみられる。
八幡平頂上からの展望は雄大で、岩手山、駒ヶ岳(こまがたけ)などを望むことができる。道路八幡平アスピーテライン(冬期は通行止)が東西方向に通じ、高原の探勝は比較的容易。藤七(とうしち)、後生掛(ごしょがけ)、トロコなど八幡平温泉郷があり、これらの温泉を基地とする春スキーのツアーを楽しむことができる。なお、冬期には積雪5メートルを超え、樹氷が生じる。十和田(とわだ)八幡平国立公園の一中心である。
[宮崎禮次郎]
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