南砺(市)(読み)なんと

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

南砺(市)
なんと

富山県南西端にある市。2004年(平成16)東礪波(ひがしとなみ)郡の城端(じょうはな)町、井波(いなみ)町、福野(ふくの)町、平(たいら)村、上平(かみたいら)村、利賀(とが)村、井口(いのくち)村、西礪波郡の福光(ふくみつ)町が合併し、市制を施行して成立。
 西は石川県、南は岐阜県に接する。石川県境に医王山(いおうぜん)(939メートル)、大門山(だいもんざん)(1572メートル)、笈ヶ岳(おいずるがたけ)(1841メートル)、岐阜県境に人形山(1726メートル)、三ヶ辻山(1764メートル)、東の富山市との境に金剛堂山(1650メートル)、水無(みずなし)山(1506メートル)などが聳える。西側から順に小矢部(おやべ)川、同支流の山田川、庄(しょう)川、同支流の利賀川、神通(じんづう)川支流の百瀬(ももせ)川などがほぼ北流し、北部は小矢部川、庄川の扇状地が広がり礪波平野の一角を占める。平野部には散居村で家屋を守る「カイニョ」(屋敷林)が見られる。中央部から南部にかけては山間地帯で、庄川の上流は五箇山(ごかやま)とよばれる。城端、平、上平、利賀、福光の各地域は特別豪雪地帯に指定される。北西部は医王山県立自然公園、南西部は白山国立公園、南部は五箇山県立自然公園、南東部は白木(しらき)水無県立自然公園に含まれる。五箇山は岐阜県の白川郷とともに「白川郷・五箇山の合掌造り集落」としてユネスコの世界文化遺産。北方の高岡から市域北部の城端までJR城端線が通じる。国道156号、304号、471号が通り、ほぼ中央部を南北に走る東海北陸自動車道の福光・五箇山の2インターチェンジがある。
 小矢部川と山田川に挟まれた隆起扇状台地立野ヶ原(たてのがはら)には旧石器時代の遺跡が点在する。市域北西端の人母下山(ひとぼしもやま)遺跡は縄文時代早期の遺跡として著名で、山田川に面した段丘上の井口遺跡は縄文時代後期の大集落跡(井口式土器の標式遺跡)。五箇山でも草期から晩期の土器片や石器類などが出土している。古代には白山開山の泰澄が医王山を開き多数の坊舎が建ち並んだという。福野地区の安居寺(あんごじ)(木造聖観音立像は国指定重要文化財)は聖武天皇の勅願寺と伝える。井波地区の高瀬遺跡(国指定史跡)では平安時代初期の官衙的な性格を持つ建物遺構が確認されている。11世紀には小矢部川流域に山城円宗寺領石黒庄が成立、山田川の東側に築かれた井口城は土豪井口氏の居城として知られ「太平記」にも登場する。14世紀末に本願寺綽如(しゃくにょ)が井波に瑞泉寺を創建。1481年(文明13)、石黒郷を本貫地とする福光城主石黒光義は医王山と組んで瑞泉寺と戦ったが敗れ、16世紀には五箇山に到るまでほぼ一向衆の勢力下に置かれた。江戸時代、市域は加賀藩領として推移し、平野部では新田開発が盛んに行われた。城端町は一向宗善徳寺の寺内町から門前町、絹業、市場町として発達した。絹業や五箇山との交易拠点として発展した井波町のほか、福野は六斎市を中心とした在郷町、福光村は金沢城下に通じる二俣越などに沿った在郷町として賑わった。五箇山では金納制のもと煙硝・和紙・蝋・蓑・糸などの換金作物が生産されている。庄川の谷には籠渡しが設置されていたが、五箇山が流刑配所地であったためという。
 北部の小矢部川支流域では昭和初期から圃場区画整理事業が実施され、第二次世界大戦後は土地改良事業にも取り組んだ。1962年(昭和37)には野尻地区が全国3箇所のモデル圃場整備事業地に指定されている。農業は米作のほかサトイモ、チューリップの球根、電照菊などの栽培、富山干柿の生産が盛ん。産業はアルミニウム、橋梁・建築建材や工作機械などの製造業、城端の絹織物、五箇山の和紙、福光地区の野球バットなど。瑞泉寺山門の彫刻で著名な井波彫刻は、現在は住宅用の欄間彫刻、獅子頭などでも知られ、経済産業省の伝統的工芸品に指定されている。昭和初期から庄川の電源開発が始まり、多数のダムが建設された。五箇山は国道156号、304号のトンネル化により、昭和末期から冬の通行が可能になった。156号で中部地方とも結ばれ、近年は多くの観光客が訪れる。1976年(昭和51)に早稲田小劇場(現在の劇団SCOT)が利賀に活動拠点を移して以降、利賀は演劇の国際的拠点となった。富山県利賀芸術公園には合掌造りを改造した劇場などの施設があり、夏には利賀演劇人コンクールが行われている。面積666.86平方キロメートル、人口5万4724(2010)。[編集部]

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