当り(読み)アタリ

デジタル大辞泉 「当り」の意味・読み・例文・類語

あたり【当(た)り/中り】

[名]
あたること。
㋐ぶつかること。「立ち合いの―が強い」
㋑命中すること。的中。「福引で―を出す」⇔はずれ
㋒催しや企画などが思ったとおりになること。成功。「―の商品」⇔はずれ
㋓野球などの打撃の調子。「四番打者に―が戻る」
接触すること。触れること。
㋐舌や手にさわった感じ。舌ざわり。手ざわり。「―がなめらかだ」
㋑手掛かり。見当。「犯人の―がついた」
㋒人に接する態度。交際のぐあい。「―が柔らかい人」
㋓釣りで、魚がえさに食いつくこと。また、その瞬間に釣り人の受ける感触。魚信。「―はあるが、かからない」
㋔からだに害となること。中毒。多く他の語と複合して用いられる。「食―」「暑気―」
果物の傷やいたんだ部分。「―のあるリンゴ
囲碁で、あと一手で相手方の石が取れる状態。
仕返し。返報
「謀られたる―とぞ云ひける」〈宇治拾遺・五〉
むごい扱い。仕向け。
「茂兵衛殿への―は皆悋気りんきから起こった事」〈浄・大経師
[接尾]「一」または単位を表す語に付いて、それに対しての割り当て・割合の意を表す。「一こく―の米価」「一人―千円」
[下接語]大当たり風当たり口当たり小当たり心当たり作当たり差し当たり暑中あた暑気中り食当たり総当たり体当たり突き当たり手当たり戸当たり毒当たり場当たり馬鹿当たりばち当たり日当たり冷え中り一当たり人当たり不当たりふな中り・まぐれ当たり水中り八つ当たり湯中り行き当たり嫁当たり
[類語]ぴんぽんビンゴヒット的中命中百発百中大当たり正解正答花丸名答御名答

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精選版 日本国語大辞典 「当り」の意味・読み・例文・類語

あたり【当・中】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「あたる(当)」の連用形の名詞化 )
  2. 物や人にぶつかること。また、ぶつかり具合。
    1. [初出の実例]「大じんわざと酔狂して、あたりあらく踏立(ふみたて)」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)六)
  3. 物や人に触れた感じ。感触。
    1. [初出の実例]「近くよりて髪をさぐれば、氷をのしかけたらんやうに、ひややかにて、あたりめでたきこと、限りなし」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)三)
  4. 人に接する態度。しむけ。扱い。
    1. [初出の実例]「扨々ゑんま王あたりのあらい罪人じゃ」(出典:虎寛本狂言・朝比奈(室町末‐近世初))
  5. 自分を痛い目にあわせた相手に仕返しをすること。返報。復讐(ふくしゅう)
    1. [初出の実例]「さきに行綱に謀られたるあたりとぞいひける」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)五)
  6. はっきり言わないで、何かにかこつけて悪く言ったり、ひどく扱ったりすること。あてつけ。
    1. [初出の実例]「あたりのことばはさしあたるといふ事で、うらみことなどあてていふ事」(出典:評判記・難波鉦(1680)四)
  7. 隠れた事情や理由。いわく。
    1. [初出の実例]「まづでへ一チこの枕の紋所も気にくわねへ。此きものの裾もようのあたりもはくじょう仕てしまへ」(出典:洒落本・通言総籬(1787)二)
  8. 物事を行なうときの目当てや手がかり。心あたり。→当たりが付く当たりを付ける
    1. [初出の実例]「『源様はどうなさったへ』『源様とはへ』『夫さ源五兵衛が事よ』ト少し当りをいってみる」(出典:洒落本・五大力(1802)三)
  9. 矢や弾丸や玉などが、ねらった所に命中すること。
    1. [初出の実例]「私近年弓のけいこを仕り、当(アタ)りこまかに罷成、狐猫などを討留(ゐとめ)申候事たびたびにて御座候」(出典:浮世草子・本朝桜陰比事(1689)二)
  10. 物事がうまくいくこと。
    1. (イ) 事が思いどおりにうまくいくこと。商売、興行などが成功すること。
      1. [初出の実例]「殊に二月よりの替狂言、傾城浅間嶽と云ふは〈略〉百廿日のあたりは近年めづらしいと、都人も脳(なづき)をさげぬ」(出典:浮世草子・新色五巻書(1698)五)
    2. (ロ) 作物などの出来がよいこと。
      1. [初出の実例]「蕎麦の花もそろそろ咲出し候田の出来は申分なく秋蚕も珍しき当りに候」(出典:仰臥漫録(1901‐02)〈正岡子規〉一)
  11. みごとな答。真実をついた言葉。
    1. [初出の実例]「しゃうじ一大事、味噌で御座候。味噌がわるければ、生じのしたてはならぬと申た。さてさて是ほどなるあたりは、達磨(だるま)もいかが」(出典:咄本・昨日は今日の物語(1614‐24頃)上)
  12. くじ懸賞などで、選ばれること。また、あたりくじ。
    1. [初出の実例]「さし出す順のこふしの手をひろけ さてこそつきのあたりじやみたか」(出典:俳諧・宗因七百韵(1677))
  13. 飲食物や暑気などが、からだに障ること。多く「食当たり」「暑気当たり」などと、熟して用いられる。
    1. [初出の実例]「五つ月過れば何をたべてもあたりは致さぬけれど、鱝(あかゑい)などは決しておあげなさいますな」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二)
  14. 果物などのいたんだ部分。
    1. [初出の実例]「あたりのある桃なら五つか、ズットはづめば、西瓜の安売三十八文でも遣らんならん」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四)
  15. 能楽で、文句と拍子との取り方。また、謡の修飾的な節(ふし)で、呼気を短く中断させ、突きあたるようにうたうもの。謡本では、ゴマ節に「ア」を添えて示す。
  16. 囲碁で、次の一手で相手の石が取れる状態。また、その状態にする一着。「両当たり」「当たりをかける」
    1. [初出の実例]「盤上に石を下す音バチバチ。『サア当りだ』『一寸お待ち下さい』『生死の界(さかひ)になって、俟(ま)って堪るものか』」(出典:雪中梅(1886)〈末広鉄腸〉下)
  17. 釣りで、魚がえさにさわること。また、えさを引く時、手や竿などに伝わる感じ。
    1. [初出の実例]「鰺(あぢ)はあたりが軟(やはらか)で」(出典:自然と人生(1900)〈徳富蘆花〉湘南雑筆)
  18. 猟師が山で自分の行き先を仲間に知らせるため、立ち木の皮をむいて印をつけておくもの。長野県の一部でいう。
  19. 野球で、打撃の調子。また、打った球の飛び具合。「当たりが出る」「鋭い当たり」
    1. [初出の実例]「打者は、その新しい球の、第一球を打った。よい当りであった」(出典:胡桃割り(1948)〈永井龍男〉)
  20. ( 単位を示す語の下に付けて接尾語のように用いる ) 割当ての意を示す。…についての割合や平均。
    1. [初出の実例]「唐朝からの年費絹二十五匹にしたところで月当り二匹やそこらでは、成程物価も一般には安かったらうが」(出典:遣唐船(1936)〈高木卓〉四)

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