構成主義[国際関係](読み)こうせいしゅぎ[こくさいかんけい](英語表記)constructivism

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「構成主義[国際関係]」の意味・わかりやすい解説

構成主義[国際関係]
こうせいしゅぎ[こくさいかんけい]
constructivism

国際関係論において,歴史的,社会的に形成された複数の主観からなる共通の認識(→間主観性)に着目して分析する理論。コンストラクティビズムともいう。構成主義のアプローチに従えば,人間の行動はその人のアイデンティティによって決まり,そのアイデンティティ自体は社会の価値観や歴史,慣習,制度によって形成される。国家を含むあらゆる制度は,政治的慣行,社会的行動,価値観についての共通の信条という「間主観的合意」を反映するという意味において,社会的に構築されると考える。それとほぼ同様に,国家その他の単位の個々の成員は,戦争と平和対立協調に関する意思決定も含め,どのような政策決定がなされるかについての現実を絶え間なく構築する。構成主義の基礎となっているのは,ポスト・モダニズム(→ポスト・モダン)や批判理論であり,これらの考え方は近年の国際関係論において注目されている(→現実主義国際関係)。
構成主義は,フェミニズムのようなこれまで国際関係論において排除されてきた観点からのアプローチも含む。一部の構成主義者は,ジェンダーは社会的に構築されると主張し,ジェンダーに基づく役割分化はどの程度まで生物学的にではなく社会的に決定されるのかという基本的な問題に取り組むことで,男性攻撃性や好戦性について答えようとしてきた。ジェンダーの役割が社会的に構築されるとすれば,男性であるとはどういうことかに関する信条や価値観を変えることで,男性の攻撃性を低減させることが可能ということになる。他方,攻撃性が男性の生物学的特性の所産ならば,そのような変化は不可能であるか,少なくともかなり困難である。

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