熟す(読み)コナス

デジタル大辞泉 「熟す」の意味・読み・例文・類語

こ‐な・す【熟す】

[動サ五(四)]に成す、の意》
食べた物を消化する。「胃腸食物を―・す」
かたまっているものを細かく砕く。「畑の土を―・す」
技術などを習って、それを思うままに使う。また、身につけた技術でうまく扱う。自在に扱う。「数か国語を―・す」「新型機器を―・す」
与えられた仕事などをうまく処理する。「ノルマを―・す」
売りさばく。「在庫品を―・す」
見下げる。けなす。
「這入れませんと恐れ入ったら、それ見ろと直ぐ―・されるに極っている」〈漱石坑夫
動詞の連用形に付いて、自分の思いのままにする意を表す。うまく…する。完全に…する。「使い―・す」「乗り―・す」「読み―・す」
[可能]こなせる
[類語]扱う取り扱う取り組む計らうさばく切り回す取りさばく処する律する片付ける済ます終える上げる仕上げるやっつける処理する料理する解決する始末するかたを付けるけりを付ける畳む手掛ける切り回す事に当たる本腰を入れる

じゅく・す【熟す】

[動サ五]じゅく(熟)する」(サ変)の五段化。「さくらんぼの―・すころ」「まだ機が―・さない」
[動サ変]じゅく(熟)する」の文語形

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「熟す」の意味・読み・例文・類語

こな・す【熟】

  1. 〘 他動詞 サ行五(四) 〙
  2. [ 一 ] 形あるものを細分する。粒状、また粉状にする。
    1. 細かくする。砕いて細かくする。粉砕する。
      1. [初出の実例]「島の東の禹武邑(うむのさと)の人、椎子を採拾(とり)て熟(コナシ)(は)まむと為欲(す)るに」(出典日本書紀(720)欽明五年一二月(北野本南北朝期訓))
      2. 「件(くだん)の上人如法経かかんとて、かうぞをこなして料紙すきけるとき」(出典:古今著聞集(1254)二〇)
    2. 土などを耕しならす。土を掘り起こして砕き細かくする。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
      1. [初出の実例]「かげろふや土もこなさぬあらおこし〈百歳〉」(出典:俳諧・猿蓑(1691)四)
    3. 稲、麦、豆などの穀類を穂から落として粒にする。脱穀する。
      1. [初出の実例]「麦こなしたるわらを重(かさね)置ける所」(出典:浮世草子・好色二代男(1684)四)
    4. 食物を消化する。
      1. [初出の実例]「夫五味は口にいり胃にをさまるといへども、是をとろかしこなして脾にわたせば」(出典:全九集(1566頃)一)
      2. 「それ以上の堅いものを消化(コナ)す力が何時の間にかなくなって仕舞ふのださうです」(出典:こゝろ(1914)〈夏目漱石〉下)
  3. [ 二 ] 上位に立って他を思いのままに扱う。
    1. 思いのままに自由に扱う。与えられた仕事、問題をうまく処理する。
      1. [初出の実例]「きをば一ぽんきりたるが、こなすほうをしらずして、もとをもっておひきあれば」(出典:説経節・さんせう太夫(与七郎正本)(1640頃)上)
      2. 「色の世界のならひとて、〈略〉男をこなす取まはし」(出典:人情本・春色辰巳園(1833‐35)初)
    2. 思うままに処分する。片づける。征服する。
      1. [初出の実例]「艸枯時分に夷をこないてくれうと思ぞ」(出典:両足院本山谷抄(1500頃)一)
    3. 見くだす。軽蔑する。軽く扱う。
      1. [初出の実例]「上なる物は負くるもやすいぞ。下なる者は一度あやまりしたれば、取てかへされぬぞ。こなさるる程にぞ」(出典:土井本周易抄(1477)一)
      2. 「元主人の娘のおめへを、あんまりこなした仕打だから」(出典:人情本・春色梅児誉美(1832‐33)三)
    4. いじめる。ひどい目にあわせる。苦しめる。〔観智院本名義抄(1241)〕
      1. [初出の実例]「おのれはなぜにさんざんに身共をこなすぞ」(出典:虎明本狂言・右近左近(室町末‐近世初))
  4. [ 三 ] 補助動詞として用いる。他の動詞に付いて、その動作要領よく、巧みにする意を添える。うまく…する。
    1. [初出の実例]「馬をよくのりこなす者を云た」(出典:寛永刊本蒙求抄(1529頃)一〇)
    2. 「之を読みこなさなければ気が済まん」(出典:趣味の遺伝(1906)〈夏目漱石〉三)

じゅく‐・す【熟】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 他サ行変格活用 〙じゅくする(熟)
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 サ行五(四) 〙じゅくする(熟)[ 一 ]
    1. [初出の実例]「夏は麦が熟す時分から」(出典:仙人(1915)〈芥川龍之介〉上)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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