扱う(読み)アツカウ

デジタル大辞泉 「扱う」の意味・読み・例文・類語

あつか・う〔あつかふ〕【扱う】

[動ワ五(ハ四)]
道具機械などを、使ったり操作したりする。取り扱う。「壊れやすいので丁寧に―・う」「旋盤を―・う」
物事をとりさばく。仕事として処理する。「事務を―・う」「輸入品を―・う店」
人をもてなす。世話をする。「大ぜいの客を―・う」
ある身分・役割・状態にあるものとして遇する。「大人として―・う」「欠席として―・う」
特に取り上げて問題にする。「環境問題を―・った番組」「新聞で大きく―・われる」
調停する。仲裁する。「けんかを―・う」
看護する。
病者のことを思う給へ―・ひ侍るほどに」〈夕顔
持て余す。処置に困る。
「皆この事を―・ひて議するに」〈今昔・一〇・五〉
うわさをする。
「人々も、思ひの外なることかなと―・ふめるを」〈紅葉賀
[可能]あつかえる
[類語](1使う操る取り扱う計らう使用する操作する運転する操縦する/(2受け持つ手がける取り仕切るさば処理するこなす切り回す取りさばく処する律する担当する管掌する/(4遇する処遇する待遇するあしらう

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「扱う」の意味・読み・例文・類語

あつか・うあつかふ【扱・&JIS8856;・刷】

  1. 〘 他動詞 ワ行五(ハ四) 〙
  2. あれこれと気をつかう。人や動物などの世話をする。また、病人などを看護する。
    1. [初出の実例]「ことなること人の、小さき子どもなどあまたもちてあつかひたる」(出典:能因本枕(10C終)一五九)
    2. 「わが御匣殿(みくしげどの)にの給ひて装束などもせさせ、まことに親めきてあつかひ給ふ」(出典源氏物語(1001‐14頃)帚木)
  3. 人の相手になって話をしたり、もてなしたりする。応対、待遇する。また、人を意のままにする。冷たくあしらう。冷遇する。
    1. [初出の実例]「いかで人めかしくあつかひなしたてまつらむ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)総角)
    2. 「ここれへ来て、あつかわれたといっちゃアどふも、げへぶんが悪ふごぜんす」(出典:洒落本・甲駅新話(1775))
  4. あれこれとうわさをする。評判する。
    1. [初出の実例]「人々も思ひのほかなる事かなとあつかふめるを、頭中将聞きつけて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)紅葉賀)
  5. あれこれと操作して動かす。手などで物を運んだり、使ったりする。また、物や体の一部などをその機能に応じて有効に使う。「機械を扱う」
    1. [初出の実例]「笙(しゃう)の笛は月のあかきに、車などにて聞きえたる、いとをかし。所せくもてあつかひにくくぞ見ゆる」(出典:枕草子(10C終)二一八)
  6. 処置に苦しむ。もてあます。
    1. [初出の実例]「多く取らむとさわぐものは、なかなかうちこぼしあつかふほどに」(出典:枕草子(10C終)一四二)
    2. 「いと苦しげに、暑さをあつかはせ給さま」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)二)
  7. 両者の間に立って争いをやめさせる。仲裁する。
    1. [初出の実例]「抑当山御寺納、就割符之儀、木上与学侶中、御間依各別、我等申噯、一途相済候様にと」(出典:高野山文書‐(文祿元年)(1592)七月七日・帥法印歓仲書状)
    2. 「今はたがひに無やくの戦ひ也。あつかはん」(出典:読本・春雨物語(1808)樊噲)
  8. あておこなう。また、支配する。領知する。
    1. [初出の実例]「十たんの所ならば、両方へ五たんつつつけ候歟、それをもともかくならば、てもとにさしをき、別人に可(あつかふ)候」(出典:結城氏新法度(1556)五八条)
  9. 物事を処理する。また、担当する。「事務を扱う」
    1. [初出の実例]「どふぞうら口へ廻してよいやうにしてくれろと漸(やうやう)金子三両だしてあつかい此場はすませど」(出典:洒落本・客者評判記(1780)素人狂言に実の入た独息子のちょんちょん幕)
  10. さわる。いじる。もてあそぶ。〔物類称呼(1775)〕

扱うの語誌

もとは自動詞「あつかふ(熱・暑)」で、熱・病・心痛など「事態に対して身をもって苦しみ煩う」意であったものが、「身を煩わせて事態に対処する」意に転じ、他動詞に変化するのにともない、「身を煩わせる」ことよりも「事態に対処する」ことの方に重点が移り、やがて前者の意味特徴は忘れられ、単に「物事を処理する」意となったものか。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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