デジタル大辞泉
「獣」の意味・読み・例文・類語
しし【▽獣/×猪/▽鹿】
《「肉」と同語源で、それをとる獣をいう》
1 けもの。けだもの。特に、肉の美味な、猪・鹿。《季 秋》
2 「猪狩り」の略。
「ことに―の上手にて、力のつよきこと」〈曽我・四〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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しし【獣・猪・鹿】
- 〘 名詞 〙 ( 「しし(肉)」と同語源 )
- ① けもの。特に、猪(いのしし)や鹿(しか)をいう。けだもの。《 季語・秋 》
- [初出の実例]「やすみしし 我が大君の 遊ばしし 志斯(シシ)の 病(やみ)斯志(シシ)の 吼(うた)き恐み」(出典:古事記(712)下・歌謡)
- 「昔し、ずいの世に、れうしの侍けるが鹿(シシ)をいころして侍ける」(出典:法華修法一百座聞書抄(1110)三月四日)
- ② 猪のように、むこうみずに前へ進む武士のこと。猪武者。また、猪突猛進する人。
- ③ 江戸時代、薩摩藩の武士のあだ名。猪肉を好んで食べたところからいう。
- [初出の実例]「品川へししと狼毎夜出る」(出典:雑俳・柳多留‐一一(1776))
- ④ 「ししがり(猪狩)」の略。
- [初出の実例]「馬の上、かちだち、ならぶ人なし。ことにししの上手にて」(出典:曾我物語(南北朝頃)四)
- ⑤ 温泉地などで、湯女(ゆな)の称。
- [初出の実例]「薬師山から湯茶屋を見れば、ししが髪結ふて身をやつす」(出典:俚謡・山中節(明治‐大正か)石川(日本民謡集所収))
獣の語誌
( ①について ) 古代、「しし」は肉を意味する語であったが、また肉を食べることのできる動物一般を「しし」と呼んだと思われる。特に、狩りの対象の中心であった鹿や猪が「しし」と呼ばれ、「万葉集」では「鹿」を「しし」と訓むことも多い。「鹿」は単独で「か」と呼び、「か」という動物の「しし」ということで「かのしし」が成立し、鹿の肉を指したが、後に鹿自体を指すようになった。「猪」も単独で「ゐ」と呼び、「ゐのしし」という語が成立し、肉から猪自体を指すようになっている。「かもしか」も上代では「かましし」と呼ばれ、「しし」の一種と考えられていた。
け‐だ‐もの【獣】
- 〘 名詞 〙
- ① 全身に毛が生えた、四足をもつ哺乳動物。けもの。獣(じゅう)類。
- [初出の実例]「慈(うつくしび)無きが甚だしきこと、豈(あに)禽獣(ケタモノ)に別(ことならむ)や」(出典:日本書紀(720)皇極元年五月(岩崎本訓))
- ② 特に、家畜をいう。〔十巻本和名抄(934頃)〕
- ③ ( 人間のもっている信義、情け、理性などが無い生き物の意 ) 人間的な情味のない人をののしり、あざけっていう。また、遊女や高利貸しなどを卑しめたり、一般的に他人をあざけり卑しめていう場合にも用いられる。人でなし。
- [初出の実例]「いろいろなけだものの来る親の留守」(出典:雑俳・柳多留‐一三(1778))
獣の語誌
( 1 )同様の意味を表わすケモノの形と平安時代初期以来今日に至るまで共存している。共存の理由も含めて両者の意味の相違はよく解明されていない。
( 2 )語源は「毛ダ物」であろうが、連体格表示に用いられる助詞ダについてはクダモノのほかは例を見ない。
け‐もの【獣】
- 〘 名詞 〙 ( 毛物の意 )
- ① =けだもの(獣)①〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
- ② =けだもの(獣)②
- [初出の実例]「顕見(うつしき)蒼生(あをひとくさ)、及ひ畜産(ケモノ)の為(ため)は、則ち、其の病(やまひ)を療(をさ)むる方(さま)を定む」(出典:日本書紀(720)神代上(水戸本訓))
じゅうジウ【獣】
- 〘 名詞 〙 全身が毛におおわれている四足の哺乳動物。けだもの。けもの。〔書経‐武成〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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普及版 字通
「獣」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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獣 (けもの)
毛物の意味で《和名抄》は毛皮ある動物の総称とし,そのうち家畜を〈けだもの〉としており,《伊呂波字類抄》《和漢三才図会》もこれにならっている。これに対して《和訓栞》は,獣類の総称を〈けだもの〉,家畜を〈けもの〉という俗言のほうが,《日本書紀》の訓のとおりであるから,このほうがむしろ当たっていると論じ,結局両者同じものを指すとした。《古事記伝》も同じ結論をとっている。この点で《大祓詞》に家畜を殺すことを〈けものたおしの罪〉と述べていることは,これが家畜をとくに指すことばであった証例のように思われ,〈けだもの〉のほうを野獣までを含めた四つ足の毛皮獣の総称とする《和訓栞》の説が適当なものと判断される。古代には野獣を捕殺することは罪ではなかったからである。また,人非人をののしる場合に〈けだもの奴〉などといって,〈けものめ〉といわないのも,語調もあろうが人の霊魂が生まれ変わる場合もあるという家畜よりも,野獣を一段低くみていたあらわれではなかろうか。
執筆者:千葉 徳爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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