上手(読み)ジョウズ

デジタル大辞泉 「上手」の意味・読み・例文・類語

じょう‐ず〔ジヤウ‐〕【上手】

[名・形動]
物事のやり方が巧みで、手際のよいこと。また、そのさまやその人。「字を上手に書く」「テニス上手な人」「時間の使い方上手だ」「聞き上手」「三国一の舞いの上手」⇔下手へた
口先で人のごきげんをとるのがうまいこと。また、そのさまやその口先だけの言葉。おじょうず。「上手を言う」「まあ上手な人だこと」
[派生]じょうずさ[名]
[類語](1)(形動用法で)うまいたく達者器用巧妙巧者堪能たんのう得手えて得意巧妙絶妙老巧素晴らしい賢い素敵すてき見事みごと立派最高卓抜秀逸結構目覚ましい輝かしいたえなるえも言われぬ上出来上上物の見事結構尽くめ何より・申し分が無い・言う事無し天晴れナイスワンダフル目の覚めるよう目に染みる冴える水際立つグーグッド良い好ましい程よい好個絶好最適めぼしい目立つ引き立つ顕著著しい際立つ光る目を引く人目を引く人目につく目に立つひときわおも立つとりわけ値千金掛け替えのない群を抜く卓出卓越卓絶逸出抜群抜きん出る飛び抜けるずば抜ける頭抜ける並外れる人並み外れる度外れ断トツ非凡出色傑出一日いちじつの長素人離れ玄人はだし超人的/(2世辞べんちゃら追従おべっか社交辞令外交辞令愛想仲人口

うわ‐て〔うは‐〕【上手】

[名]
位置・方向が上のほう。うえ。特に、風上・川上などをいう。かみて。「風の上手にまわる」⇔下手しもて
相撲で、四つに組んで相手の差し手の上から相手のまわしを取ること。また、その手。「上手を引く」⇔下手したて
囲碁・将棋で、対局者のうち段位・力量のすぐれたほう。⇔下手したて
犬追物いぬおうもので、自分の馬の前に立つ射手。
石帯せきたいの左の一端についている革帯。
[名・形動]
技能・学問・知識などが他よりすぐれていること。また、その人。「役者が一枚上手だ」「相手の上手を行く」
人を脅かすような態度をとること。また、そのさま。高飛車たかびしゃ。⇔下手したて
「この―な物言いが変に私を圧迫した」〈志賀暗夜行路
[類語]上部上手かみて上方高み上位優位優越高位上席

かみ‐て【上手】

かみの方。上座に近い方。「上手に座る」⇔下手しもて
川の上流の方。「上手の村」⇔下手しもて
舞台の、客席から見て右の方。⇔下手しもて
[類語]うえ上方かみ高み上手うわて上部上位優位優越高位上席

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精選版 日本国語大辞典 「上手」の意味・読み・例文・類語

うわ‐てうは‥【上手】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 上の方。特に風上、川上などをさしていう。⇔下手(したて)
    1. [初出の実例]「つよき馬をばうは手にたてよ」(出典:平家物語(13C前)四)
    2. 「河上(ウワテ)に舟の見えねへのが山でごぜすと」(出典:人情本・春色梅児誉美(1832‐33)三)
  3. ( 特に、江戸(東京)隅田川の上流の意から ) 向島あたりをさしていう語。
    1. [初出の実例]「今日は何所だ。川上(ウハテ)か」(出典:人情本・春色雪の梅(1838‐42頃か)初)
  4. 石帯(せきたい)の左の端についている革帯。本帯に付属し、腰の上方から石帯にはさむ。
    1. [初出の実例]「束帯の人はうはてをはづす」(出典:日中行事(1334‐38頃))
  5. 犬追物(いぬおうもの)で、自分の馬の前に立った射手。⇔下手(したて)。〔犬追物付紙日記(1460‐66頃か)〕
  6. 相撲で、相手の差し手の上から相手のまわしを取ること。また、その手。⇔下手(したて)
    1. [初出の実例]「有王が大たぶさ菊王が大唐輪、みだしかけふりかけ、下手上手に押合て」(出典:浄瑠璃・平家女護島(1719)一)
  7. ( 形動 ) 技芸、才知などが、他の人よりすぐれているさま。また、その人。上手(じょうず)。また転じて、一段と悪いことにもいう。
    1. [初出の実例]「さきざきなに事も、長能(ながたう)はうはてをうちけるに」(出典:古本説話集(1130頃か)二六)
    2. 「惣じての浮気男、我より上手(ウワテ)な人のする事をまなびたがれ共」(出典:浮世草子傾城色三味線(1701)大坂)
  8. ( 形動 ) 人を威圧するような態度をとること。また、そのさま。たかびしゃ。
    1. [初出の実例]「母は何所(どこ)までも上手(ウハテ)『何が余(あんまり)だね。それは此方(こっち)の文句だよ』」(出典:酒中日記(1902)〈国木田独歩〉五月一三日)

じょう‐ずジャウ‥【上手】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 形動 ) 物事にたくみなこと。その道にたくみで、すぐれていること。てぎわのよいこと。また、そのさまや人。巧者。巧手。名人
    1. [初出の実例]「一町以賜歩射之上手」(出典:類聚三代格‐一五・天応元年(781)三月八日)
    2. 「かへし、上ずなればよかりけめど、えきかねば書かず」(出典:大和物語(947‐957頃)一三五)
  3. ( 形動 ) おせじのうまいこと。如才(じょさい)のないこと。また、そのさま。おじょうず。口じょうず。
    1. [初出の実例]「天然人の気に合ふ様に上手な者があるものぢゃぞ」(出典:史記抄(1477)一七)
  4. 江戸時代、囲碁・将棋の七段の別称。桃山時代に召し出された碁将棋衆を上手衆と言ったのがその始まり。江戸時代には免状は七段までで、上手に何子になったから何段を許すという形式を採り、上手になると外家(家元外)でも僧形になれば御城碁出仕を許された。
    1. [初出の実例]「負け度重なりければ、主、其相手に夜毎に上手を付けて、打たせければ」(出典:仮名草子・仁勢物語(1639‐40頃)上)
  5. ( ━する ) たくみにはかりごとをめぐらすこと。
    1. [初出の実例]「人に上手(ジャウズ)せられぬ前に木曾を討たんとて」(出典:源平盛衰記(14C前)二八)

かみ‐て【上手】

  1. 〘 名詞 〙 うえの方。上(かみ)の方。⇔下手(しもて)
  2. 川の上流の方。
    1. [初出の実例]「ああ、いかふふかさうな、かみてへうって見ませう」(出典:狂言記・丼礑(1660))
  3. 上座に近い所。
  4. 舞台の、客席から見て右手の方。
    1. [初出の実例]「猪熊入道引き戻して上手(カミテ)へ突きやる」(出典:歌舞伎・四天王楓江戸粧(1804)三立)
  5. 魚網の引綱の左の方。こうて。
    1. [初出の実例]「よわくひけば、かみてもしもても綱ゆるびてわろければ」(出典:袖中抄(1185‐87頃)二〇)

こう‐てかう‥【上手】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「かみて」の変化した語 ) 網の左の大綱。
    1. [初出の実例]「引く島の網のうけ舟波間よりかうてふさすとゆふしでてかく」(出典:袖中抄(1185‐87頃)二〇)

じょう‐しゅジャウ‥【上手】

  1. 〘 名詞 〙じょうず(上手)〔広益熟字典(1874)〕 〔隋書‐楊素伝〕

じょう‐てジャウ‥【上手】

  1. 〘 名詞 〙じょうず(上手)日葡辞書(1603‐04)〕

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普及版 字通 「上手」の読み・字形・画数・意味

【上手】じよう(じやう)ず

技芸に達している人。〔顔氏家訓雑芸卜筮人の業なり。但だ世復(ま)た佳師無く、多く中(あ)つること能はず。~且つ十に六・七中つれば、以て上手と爲す。粗(ほぼ)大を知るも、委曲ならず。そ奇偶を射(せき)すれば、自然收す。

字通「上」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「上手」の意味・わかりやすい解説

上手
かみて

舞台用語。客席から向かって中央から右側のこと。反対の左側を下手 (しもて) と呼ぶ。客席の方は上手側を東,下手側を西と呼ばれる。歌舞伎から出た呼び名だが,他の演劇でも使われ,映画・テレビでもカメラから見て右側を上手,左側を下手と呼ぶ。

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